ペットを抱いただけで…サル痘から身を守るための「5つのこと」
WHOが緊急事態宣言 頭痛、発熱、全身に広がる発疹と水膨れ、子供や妊婦には重症化リスクも
ネズミなどの齧歯(げっし)類に嚙まれた人が感染。アフリカの熱帯雨林の村で限定的に発生する――これまでの、サル痘の発生パターンだ。関西福祉大学の勝田吉彰教授(渡航医学)は「このパターンが崩れたことで、世界保健機関(WHO)は緊急事態宣言に踏み切った」と指摘する。
「世界中で感染が確認されたことで、大きな脅威になると判断したのです。欧米で広がった際のデータを見ると、感染者の98%は男性同性愛者でしたが、一部で女性にも感染者が出始めています」
齧歯類から感染したサルが実験室で見つかったことに由来するこのウイルスの、主な感染源は発疹から出る分泌物(汁)。理論的には男女間のセックスでも感染するのだ。勝田教授が続ける。
「ペットに感染経路が広がることを懸念しています。実際、’03年にペットがサル痘に感染した例がある。ペットを抱きしめただけで感染するという事態が起こり得るのです。ペットは体毛があり、発疹などの症状がわかりにくい」
長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授も、これまでサル痘では稀だったはずの「人から人への感染」が急速に広がっていることを警戒している。
「ウイルスが変異している可能性があります。感染が拡大すれば、確率的に重症化する人が増えるし、ウイルスが変異するリスクも高まる。だから、感染を拡大させないことが重要なのです」
主な感染ルートは先述したように、感染者にできる発疹などのブツブツから出る汁。飛沫でも感染するが、新型コロナウイルスとは異なり、セックスなど身体が密着するような濃厚な接触があった場合に限られる。勝田、山本両教授とも「いまのところ後遺症の報告はなく、致死率も低い。過度に恐れることはない」と言う。二人によれば、サル痘から身を守るためにすべきことは、「手洗い・うがい」「マスク着用」「感染疑いのある者との身体的接触を避ける」「感染拡大地域で動物との接触を避ける」「天然痘ワクチン接種」の5つ。山本教授はここに「偏見と差別を持ちこまないこと」を加えた。
「エイズが流行した際、『感染者は悪いセックスをしたのだから自業自得』という偏見が感染者と医療機関とのコミュニケーションを著しく妨げてしまった。結果、患者が診察に行かなくなった。啓発活動をしようにも、感染者たちとコンタクトが取れなくなった。偏見と差別は感染症を制御不能にするのです」
新型コロナとの戦いを経験した人類にとって、サル痘は脅威ではない。正しい知識をもとに正しく恐れればいいのだ。
『FRIDAY』2022年8月19・26日号より
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