カベポスター 快進撃を支えた「3組の先輩芸人」とは
スペシャルインタビュー ローテンションでシュールな笑いを連発する独特な世界観にファン急増中 『ABCお笑いグランプリ』優勝で『M-1 グランプリ2022』の台風の目に

「これまでは準優勝止まりだったので、諦めかけた時期もありました。だから優勝したときは真っ先に『できるんかい!』ってツッコミが出ちゃいました(笑)」
若手芸人の登竜門『ABCお笑いグランプリ』で過去に2度、準優勝に終わったお笑いコンビ『カベポスター』。三度目の正直となった今年、見事に優勝を勝ち取った喜びを、ボケの永見大吾(32)は冒頭のように表現した。
NSC大阪の同期だった浜田順平(35)と、卒業後の’14年5月にコンビを結成。
互いに国公立大卒という高学歴コンビの特徴はその芸風だ。ローテンションな掛け合いと、浜田のワードセンス溢れる鋭いツッコミで独特な世界観を生み出す。注目度急上昇中の新鋭コンビが、快進撃の裏側を語った。
浜田「『ABC』で優勝したときはめちゃくちゃ嬉しかったです。子供のころからずっと見てきた賞レースだったので。いつもいいところまでいっても勝てなくて、給料も上がらなくて。悔しい思いをしてきた分、すっごいスッキリしました」
永見「最初は何の気なしにエントリーしただけでしたが、’19年に初めて準優勝してから、どんどん勝ちたい思いが強くなっていった。優勝が決まったときは4年分の思いが爆発しましたね」
今春には『ytv漫才新人賞』でも優勝した二人。順風満帆なキャリアに思えるが、その裏にはライバルであり尊敬する先輩でもあるコンビがいるという。
浜田「『オズワルド』の二人にはお世話になりっぱなしです。きっかけは’20年8月にツーマンライブをやろうって声を掛けてくださったこと。それ以来、毎年2回はライブを行っています。ネタや漫才への考え方など、いろいろ相談させてもらっていますね」
永見「ネタの方向性も似ていると思うので、比べられているって意識もあります」
浜田「ライバルって意識するのも『オズワルド』さんくらい。2回目の準優勝となった去年の『ABC』も、負けたのは二人だった。いつかは同じ賞レースに出て、勝ってみたいですね」
永見「よく飲みにもいくので、プライベートの相談をすることも多い。浜田は『ABC』で優勝したら、6年前に振られた中国人留学生にLINEするって、伊藤さん(俊介・32)と約束してなかった?」
浜田「忘れてくれ(笑)! 昔過ぎてアカウントが見つからなかったんや」
結成当初から「ハイテンションにボケ倒す漫才をやってもほかに勝てない」という意識があり、自然と現在のスタイルに至ったというが、結果が付いて来ずに悩むことも多かった。支えてくれたのもまた、吉本の先輩だった。
永見「自分たちは間違っていないと思えたのは『霜降り明星』の粗品さん(29)のおかげです。僕らが賞レースに出る前から『面白い!』って背中を押してくださって。あれだけ結果を出している人が、自分たちがやっていることを肯定してくれるから、自信になりますよね」
浜田「あとは『ロングコートダディ』のお二人。昨年の『M-1』で決勝に進出しながら、タイトルに執着せずに自分たちのやりたいことを貫いている。間近で見ていて、いい意味で『優勝しなくてもいいから、できることをやろう』って気持ちを切り替えられました。そしたら変な力が抜けて本番でも緊張しなくなった。今回の『ABC』決勝でも、自然体で舞台に立てたのは二人のおかげです」
最大の目標と口をそろえる『M-1グランプリ』では一昨年から2年連続で準決勝に進出している。最後に『M-1』への想いを聞くと、なんとも”らしい”答えが返ってきた。
浜田「芸人になったからにはいつかはほしいタイトル。優勝して、色んな番組によばれるようになって、東京に進出できたら最高ですよね」
永見「僕も同じです。ただネタを出しきっちゃったから今は何もなくて(笑)。急いで新ネタを考えないとな、って焦り始めたところです」
しゃべくりのテッペンへ向け、二人の旅は始まったばかりだ。


『FRIDAY』2022年8月19・26日号より
PHOTO:加藤 慶