紅白歌合戦をアニメが席巻! ライブビジネス5年で約3倍増の凄み

「円盤市場」衰退と「ライブ・エンタテインメント市場」の注目アーティスト…水樹奈々、μ's、そしてAqours、刀剣男士

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師走である。この時期になるとテレビでも様々な特番が組まれるが、その集大成となるのは、あれこれと言われているものの、やはり大晦日に放送される「紅白歌合戦」だ。今年放送の『第69回 紅白歌合戦』では総合司会に内村光良、紅組司会に広瀬すず、白組司会に嵐・櫻井翔が起用され、男女それぞれ21組のアーティストが出場する。

「Aqours」静岡県沼津市にある架空の高校を舞台にした青春アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』から派生した9人の女性声優陣によるユニット

 そして、音楽界からのおなじみの出場者が目立つ一方で、ネットなどで話題を集めていたのがいわゆる「アニメ枠」の出場者たちである。「アニメ枠」というのはアニメファンの中で使われる”俗称”のようなもので、アニメ界発信、アニメ関連の出演者、(後述する「ぴあ」の統計では)アニメ由来ともいわれる、アニメを起源とする楽曲・アーティストのことだ。今回は「世界で人気のジャパンカルチャーを特集」と題し、人気アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の声優陣によるユニット・Aqours(アクア)と、人気のブラウザ・スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE』から派生したミュージカル集団・刀剣男士が大晦日の本番に備えている。

 しかし、一般の視聴者にとっては「この歌手の曲、聴いたことない!」「なぜ、アニメ枠が設けられているのか?」と疑問を抱く人たちもいるはず。そこで、2010年代の「紅白歌合戦」におけるアニメ枠の出演者たちを振り返り、その背景にあるアニメ産業の変化に迫っていきたい。

■青春アニメから飛び出したAqoursと大ヒットゲームアプリを元にした刀剣男士

今回の「紅白歌合戦」に出場する一組、9人の女性声優陣によるAqoursは、静岡県沼津市にある架空の高校を舞台にした青春アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』から派生したユニットだ。

女子高生たちが“スクールアイドル”を目指すべく奮闘する物語を描いた作品は、社会現象となったメディア・ミックス作品『ラブライブ!』シリーズの第2弾として制作され人気に。作中では、主人公・高海千歌をはじめとする9人組のユニットとして描かれているが、人気キャラクター千歌役の声優・伊波杏樹らによるライブなどを幅広く展開している。

もう一組の刀剣男士は、ユーザー数450万人を超えるブラウザ・スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE』を原案としたミュージカル『刀剣乱舞』シリーズの出演者たちによるユニットである。

「刀剣男士」 ブラウザ・スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE』を原案としたミュージカル『刀剣乱舞』シリーズの出演者たちによるユニット

原案となったゲームは、プレイヤーが“審神者(さにわ)”となり、いわゆる擬人化された刀を育て上げて戦うシステムで、ゲーム内に登場するイケメンのキャラクターたちへ惚れ込む女性ファンを中心に人気を獲得。さらに、架空の作品に登場する世界観やキャラクター、現実のミュージカルとライブを融合させた“2.5次元ミュージカル”の人気作品として、国内だけではなくフランス・パリでの海外公演も実現している。

■声優アーティスト界をけん引する水樹奈々と社会現象にもなったμ’s

声優アーティストの水樹奈々。オリコンの週間ランキングでシングル・アルバム共に声優史上初の首位を獲得するなど数々の功績を持つ

アニメ作品に関連したパフォーマンスや、“アニメソング”などを歌い上げる声優アーティストなどのために設けられた「紅白歌合戦」のアニメ枠。2010年代から目立ち始めた印象もあるが、その先駆けとなったのは何といっても水樹奈々だ。

声優として初めての東京ドーム公演を達成するなど、2000年代後半からの声優アーティスト界のけん引役として知られる水樹は、2009年末放送の『第60回 NHK紅白歌合戦』で初出場。以降、6回連続で出場を果たした。2015年末の『第66回 NHK紅白歌合戦』での落選が発表された際には、アニメファンを中心にちょっとした物議を醸したほどの存在だ。

一方で翌2016年末、水樹と入れ替わるかたちで出場を決めたのが、先述したAqoursの先輩グループにあたる『ラブライブ!』から派生した9人組女性ユニット・μ’s(ミューズ)である。

作中の主人公・高坂穂乃果役を務める新田恵海らによるμ’sは、絢瀬絵里役の南條愛乃が直前のケガの影響で出場を断念するアクシデントもあったが、8人で「紅白歌合戦」のステージへと立った。本番では2次元と3次元を融合させたパフォーマンスを見事に披露した。

■衰退する「円盤市場」と盛り上がる「ライブ・エンタテインメント市場」

この数年の「紅白歌合戦」で存在感を増す“アニメ枠”については分かったが、いったいなぜ彼らが選出されているのか? そのワケは音楽市場の統計に記されている。まずは、音楽産業の現況を紹介してみよう。

一般社団法人 日本レコード協会が公表している2017年までの音楽ソフト全体(オーディオ/音楽ビデオ合計)の生産実績をみると、全体が右肩下がりで減少しているのが分かる。集計期間に該当する10年間では、ピークとなっているのが2008年で生産数ベースでは3億349万枚。以後、下がり続け、直近の2017年では2億244万9000枚まで数字を落としている。

CDや映像作品といったいわゆる“円盤市場”が減少傾向にある一方で、盛り上がりをみせているのが「ライブ・エンタテインメント市場」だ。

ライブ・エンタテインメント白書調査委員会が公表した資料によれば、ライブや舞台といった“現場”を求めるファンが増えており、2001年に2562億円であった市場規模が直近の2017年では5151億円と約2倍に拡大。さらに、2008年から2017年までの期間で、ライブ・エンタテインメントの動員数が4815万人から6869万人まで増加したという統計もある。

音源や映像ではなく、ライブという“生の空間”に新たな可能性を見出している音楽業界。なかでも、アニメやゲームといった2次元コンテンツをベースにしたライブや、現実とそれらを融合したエンタテインメント作品における市場の成長も著しい。

ぴあ総研による統計「アニメ関連ライブ及び2.5次元ミュージカル市場動向に関する2016年の調査結果」によれば、直近の2016年でアニメ関連の市場規模は158億円で前年比6.8%増、2.5次元ミュージカルの市場規模も129億円と前年比24%増という結果に。さらに、2012年から2016年の推移をみると、当初は各市場規模の合計が101億円であったのが、5年間で287億円と3倍に迫る勢いで拡大している。
各種の統計を比較してみると、音楽業界の停滞が叫ばれる中にありながら、アニメに由来した産業がいちジャンルとして貢献しているのがうかがえる。

実際、今回取り上げた4組をみても、水樹奈々、μ’s、Aqoursが国内有数の大規模な会場である東京ドームでの単独公演を実現しているほか、刀剣男士が今年10月にフランス・パリでの公演を成功させるなど、各出演者の実績が「紅白歌合戦」に選出されて来た背景にあるのだろう。

動員実績だけでなく、Aqoursは「紅白歌合戦」で披露することが決まったデビューシングル『君のこころは輝いているかい?』などの楽曲でみせる、作中の細かな身振りなども再現したアニメとシンクロしたパフォーマンスには目を奪われる。

また、刀剣男士は、実力ある男性俳優陣による激しいアクションシーンのある舞台とライブを融合したエンタテインメントとしての完成度が評価されており、年末の大舞台では「刀剣乱舞〜出演!紅白歌合戦」という演目を披露することが決まったが、スペクタクルな世界観をテレビサイズでどう表現するのかにも期待したいところだ。

とかく「アニメ枠」と括られることが多かったこれらのアーティストたちだが、エンタメ産業としての盛り上がりや伸び代、音楽性やアーティスト性をみると、「紅白歌合戦」への選出はむしろ必然。
2019年以降もますます市場は活性化し、さらに彼らの存在感は増し、「アニメ枠による抜擢」などという言葉は使われなくなり、当たり前のように出場アーティストが増える時代が来るかもしれない。

その動向に注目しつつ、まずは大晦日の『紅白歌合戦』でAqoursと刀剣男士のパフォーマンスをチェックしてみますか。

  • 文・構成:カネコシュウヘイ

    (編集者/ライター)1983年11月8日生まれ。埼玉県在住。成城大学出身。2008年から出版業界に従事、2010年に独立しフリーランスとなる。以降、Webや雑誌でエンターテインメント系のジャンルを中心に取材や執筆へ注力。月平均4〜5回はライブへ足を運ぶアイドル好き。著書に『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)

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