大阪府出身。新聞記者、編集プロダクションを経てフリーに。サッカーやゴルフを中心に、さまざまなジャンルのスポーツを取材する。著書に『イ・ボミ 愛される力』(光文社)。【X】https://twitter.com/mwkim0727

キム・ミョンウ

<figure id="attachment_259272" aria-describedby="caption-attachment-259272" style="width: 5194px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="41e85bef"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/aflo_195307027.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-259272" class="wp-caption-text">渋野が最終日の最終組で一緒に回ったのは南アフリカ出身のブハイ。3年前の初優勝時と同じシチュエーションに逆転優勝の期待も高まったが…（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<p>渋野日向子は“持っている”だけの人なのか、それとも実力なのか――。女子ゴルフのメジャー最終戦、AIG全英女子オープンで、2019年以来となるメジャー2勝目と期待がかかったが、最終日はパープレーの71で、通算9アンダーの3位で大会を終えた。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3>人間味を感じさせる「浮き沈み」</h3>
<p>渋野といえばやはり3年前、初出場ながら初優勝した同大会で、“スマイルシンデレラ”の愛称がつけられ国内外で一気にブレイクしたインパクトが強烈な記憶として刻み込まれている。さらに1977年に全米女子プロ選手権を制した樋口久子選手以来、42年ぶりのメジャー勝利という記録もまた、彼女の経歴に箔をつけた。</p>
<p>今季から米女子ツアーに本格参戦した渋野だが、メジャー第1戦のシェブロン選手権で4位、続くロッテ選手権では2位で米ツアーの新人ながらもいきなり優勝するのではないかという期待を抱かせた。</p>
<p>こんな成績を出すのだから「渋野なら何かやってくれそう」と思って当然。優勝の予感を漂わせてくれるだけに観る者も毎回、ワクワクさせられる。スター選手のオーラをまとったアスリートはそう多くはないが、渋野は間違いなく、その部類に入ると感じる。</p>
<p>ただ、好成績を収めたと思いきや、また悪い結果が続くこともある。実際、3連続予選落ちや棄権が続くなど、初めてプレーするコースの難しさや苦手とするポアナ芝に苦しめられ、自分のプレーの不甲斐なさに涙するシーンもあったほどだ。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>こう言っては失礼にあたるが、そんな浮き沈みがあるからこそ、毎試合の結果が気になってしょうがない。試合後に屈託のない笑顔ではっきりと話すこともあれば、神妙な面持ちを見せることもある。時には泣いたりするので、そうした感情の浮き沈みも人間らしくて好感が持ててしまうと感じるのは筆者だけだろうか。</p>
<p>渋野がメジャー初制覇した全英の会場はウォバーンGC（英国・ミルトンキーンズ）で、海沿いのリンクスコースではなかった。全英の開催コースは主にリンクスが会場になることが多く、「リンクスだったらまた結果は違っていたのではないか」という声も周囲からはちらほら聞こえてきていた。</p>
<p>つまりは「まぐれ」ではないかという見方だ。実際、リンクスの2020年大会のロイヤルトゥルーンGCでは12オーバーで予選落ち。しかし、21年大会のカーヌスティGL（ゴルフリンクス）では予選を通過して34位タイに入っている。</p>
<p>そして今年の全英の会場となったリンクスのミュアフィールドで3位。自分のやってきたことを信じて突き進み、結果を出した。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「私の気持ちを分かってほしいとも思っていない」"></div>
<figure id="attachment_259273" aria-describedby="caption-attachment-259273" style="width: 1559px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c4901646"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/aflo_109116790.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-259273" class="wp-caption-text">3年前の優勝時の一コマ。誰よりも渋野本人がこのシーンの再現を願っているに違いない（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>「私の気持ちを分かってほしいとも思っていない」</h3>
<p>米ツアーで勝つために、現状維持よりも進化することを求めた渋野は、スイング改造に着手した。コロナ禍の空白期間にも色々と試していたようだが、それこそスイングフォームの改良が自分のものとして定着するのは、3～4年はかかるといわれている。しかし、スター選手の宿命か、渋野は常に結果を求められる立場になってしまった。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>期待されることも渋野は分かっていた。スイングフォームを変えることが吉と出るか、凶と出るかはやってみないと分からない部分がある。</p>
<p>実際、2020年の渡英前にはこんなことを話していた。</p>
<p>「今やってきてることは、色んな意見があるかもしれないですけど、私の中では間違ってないと思います」</p>
<p>周囲から何を言われようとも絶対にブレはしないと断言していた。それに2020年の日本ツアー開幕戦となったアース・モンダミンカップで予選落ちしたことについて聞いたときも<span class="strongInContent">「『オフにやってきたことが無駄だったのかな』と言ってしまったんですけれども、いま思えばすぐに結果が出るわけでもない。だから、いつ出るか分からない結果のために、これからも頑張っていかなきゃというのは、もう次の日に思いましたね」</span>と。</p>
<p>じっくりと時間をかけて、焦らず結果を出すことに信念を貫くと心に誓っていたのだろう。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>今でも一挙手一投足が話題になる渋野だが、成績が良ければ称賛され、予選落ちすれば悲観的な記事も書かれるようになった。それについても、渋野なりの見解がある。2020年に聞いた単独インタビューでこんなことを語っていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「いろんな意見があると思いますが、私の気持ちを分かってほしいとも思っていないので、自分を信じてやるだけですね。分かってくれている人に、自分が取り組んでいることや本当の気持ちを分かってもらいたいと思っています」</span></p>
<p>とにかくブレない一本気の持ち主。決めたことはとことんやり抜くところに渋野の米ツアーで本気で戦う姿勢が見て取れる。</p>
<p>まだ米ツアーは新米の1年目。結果を求めすぎるのは良くないのは重々承知だ。それでもメジャー2勝目の予感を漂わせてくれた渋野への期待は、これからも収まりそうにない。</p>


1977年、大阪府出身の在日コリアン。新聞社、編集プロダクション、ゴルフ専門誌記者などを経てフリーに転身。現在はスポーツライターとして、サッカーのJリーグや代表戦、女子ゴルフを中心に取材し、週刊誌やスポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。韓国・北朝鮮スポーツにも精通。過去6回、北朝鮮を訪問して現地取材。近著に『イ・ボミ 愛される力～日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学（メソッド）～』（光文社）

金明昱（キム・ミョンウ）

渋野日向子がAIG全英女子オープンで最終日に逆転優勝の期待がかかったが、3位に終わり、3年前の再現はならなかった。試合後のインタビューで見せた涙の裏に何があったか。金明昱氏が緊急寄稿した。

全英3位にも涙…なぜ私たちは「渋野日向子」から目が離せないのか

あなたへのオススメ

関連記事