韓国ゴルフ界激震!前代未聞の「不正行為」と「勝利至上主義の闇」
期待の若手が起こした「誤打トラブル」。その裏側には韓国ゴルフ界に根付く構造的な問題があったのかもしれない
女子ゴルフ界の新星が起こした不正行為に、韓国中が揺れている。
問題を起こしたのは19歳の若さで「長打クイーン」の異名を取るユン・イナだ。端正なルックスに加え、170cmという抜群のスタイルを誇り、ドライバーショットは全選手中1位となる平均263ヤードを誇る飛ばし屋だ。7月中旬に行われた1部ツアー『エバーコラーゲンクイーンズクラウン』で初優勝を果たし、一躍スターダムにのし上がった。
そんな次期ヒロイン候補の不正が発覚したのは7月25日。ユン・イナはマネジメント事務所を通じて以下の謝罪文を出した。
「6月16日の『韓国女子オープン』初日、15番ホールでティーショットが右へ行き、ボールを探している最中、前側の深いラフにボールがあるという周囲の声を聞き、自分のものと誤解してプレーを進めました。自分のボールではないことが、15番ホールのグリーンで分かったのですが、初めて経験する状況で、どのように対処すればいいか判断ができず、結局はなんの処置もせずそのままプレーを続けました。選手としてあってはならないことで、弁明の余地はありません」

本来は誤球した場合、ホールアウト前に申告すれば2罰打となるが、ユン・イナは何の処置もしなかった。さらにこの事実を1ヵ月にわたり、隠し続けていたのだ。
ただ、当初は若手のミスだと世論も同情的だった。悪質さが露見したのはその後である。韓国各紙の報道によると、「誤球プレー後、2罰打での処置をキャディーが助言したが、それを聞かずにプレーした」という。さらにはこの事実をコーチや親が知っていたことも明らかになり、周囲の大人も関与した隠蔽工作は、大きな物議を醸すことになった。
ユン・イナは残りのツアー出場を取りやめることを発表。現在は韓国女子プロゴルフ協会の処分を待っている状況だ。今後はツアーへの無期限出場停止もあり得るというが、生まれ持った素質と才能をこうした形で失うのはあまりにももったいない。
韓国ゴルフ界に根付く「勝利至上主義」

一般紙『東亜日報』は今回の一件で、「競争がし烈なのもあり、勝利至上主義の雰囲気が蔓延しているのが現実。これを変えなければならない」と伝えている。
実際に韓国女子ゴルフ界は、日本以上に競争が激しい。日本女子ツアーは2部制だが、韓国は3部ツアーで構成されている。実戦を経験できる場所は多いが、それだけライバルがひしめいているということになる。1部の賞金シード選手は60人で、優勝となればほんの一握りの世界だ。
加えて韓国ゴルフ界で目を引くのは家族の存在だ。試合に出ている若手には親が必ず帯同している。そんなゴルフ教育に熱心な親を比喩してか、韓国には冗談にもならないこんな言葉がある。
「1年で家計が破たんしてしまいそうならカジノに行きなさい。10年で破たんしそうなら子どもにゴルフをさせなさい」
つまり、大金を稼ぎたければ子どもにゴルフのエリート教育をさせればいいという話である。もちろんすべての選手が成功するわけではない。そうなった時に親やスポンサー、関係者の勝利至上主義的な空気や重圧が、選手を追い詰めてしまうこともある。「家族全員で1つの目標に向かっている」と言えば聞こえはいいが、ユン・イナのケースは勝利への過剰なプレッシャーが生んだ不正行為だと言っても過言ではない。
今回の一件で、韓国女子ツアーでは重い空気が漂っているが、選手自身の問題だけでなく、ゴルフをさせる親や関係者たちにも責任があることを思い知らせてくれた事件だった。まずはユン・イナの懲戒結果が待たれる。
取材・文:金明昱(キム・ミョンウ)写真:KLPGA