どうなるテレビ局映画? フジが邦画実写の歴代興収ベスト5独占!

『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が歴代5位に! ライバル局の動向。ジブリアニメ化する「名探偵コナン」など〔映画ジャーナリスト・大高宏雄に聞く「日本映画界総決算&19年展望」04〕

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2018年、あなたは映画を何本ご覧になったでしょうか? その中に心を揺さぶった作品はありましたか?
日本映画界の2018年の総括と2019年の展望を、映画ジャーナリストの大高宏雄氏へのインタビューでお届けする。氏は、「毎日新聞」「日刊ゲンダイ」「キネマ旬報」「ぴあ」などで映画に関する連載を執筆し、1992年から「日本映画プロフェッショナル大賞」を主宰している。氏のモットーは「映画は試写室ではなく劇場で観客と一緒に鑑賞すること」。いわく「試写室では起こらないことが劇場では起き、試写室ではわからないことが劇場ではわかる」からだという。

「七つの会議」原作:池井戸潤 監督:福澤克雄 主演:野村萬斎 (C)「七つの会議」製作委員会

今回(最終回)は、大高氏が「日本映画界の“岩盤”」と表現する『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』、『名探偵コナン ゼロの執行人』、『ドラえもん のび太の宝島』の3作品の大ヒットの理由と2019年の展望、テレビ局映画の特徴を語ってもらった。

――2018年は、『カメラを止めるな!』や『万引き家族』のヒットの状況を“ヒットの方程式が変わった”と大高さんは評しました。同時に、圧倒的な大ヒットを飛ばした日本映画である『ドラえもん のび太の宝島』、『名探偵コナン ゼロの執行人』、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』を「日本映画界の“岩盤”」と表現していますね。

「『カメ止め』の製作費300万円、2館から上映館数300館以上に増えての興収30億円超え(邦画興収7位:31.2億円)は日本映画史上始まって以来のこと。『万引き家族』(邦画興収4位:興収45.3億円)も『うなぎ』以来、21年ぶりのカンヌ国際映画祭でのパルムドール(最高賞)受賞という快挙をなしとげた。

一方、『ドラえもん のび太の宝島』(3月3日公開、邦画興収3位:53.7億円)、『名探偵コナン ゼロの執行人』(4月13日公開、邦画興収2位:91.8億円)、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(7月27日公開、邦画興収1位:92.3億円)は、人気アニメシリーズの新作、人気ドラマの劇場版、という定番中の定番です。だが、そうした定番映画が現在の日本映画界の岩盤となっていることは数字を見れば明らか。

邦画・洋画全体で興収3位に入った『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(7月13日公開)や同じく興収4位の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年12月15日公開)、そして『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(8月3日公開)は、どれも人気シリーズの新作で大ヒットはしているが、いずれも過去作よりも興収を落としている(順位は12月27日時点)。
それらと比べると、『ドラえもん』や『名探偵コナン』は、何十年も続いている人気シリーズの続編にも関わらず、それが2018年に揃ってシリーズの歴代新記録を打ち立てた。これはすごいことだ」

――しかも劇場版『名探偵コナン』は6作品連続で、劇場版『ドラえもん』は3作品連続で、それぞれのシリーズ興収記録を更新しています。

「『名探偵コナン』の劇場版は1997年から、『ドラえもん』の劇場版に至っては1980年から公開されている。どちらも定番アニメだが、この10年から20年の間に培ってきたものの底力が、様々な製作上の変化や宣伝面の創意工夫などにより、それらが大きなうねりとなって2018年に出たのだろう。シリーズ作品が20年、30年以上経って新記録を作ることの意味は大きい」

――「培ってきたもの」とはどんなことでしょう。

「まず、『名探偵コナン』は、10~30代の男女が数多く観に行っている。ファミリー層だけで、ここまで興収が上がるはずがない。そして、なぜ若い世代が劇場に足を運ぶかといえば、キャラクターの魅力がとくに大きいようだ。
『名探偵コナン』では、コナン君のほかに新たなキャラクターを作って女性たちを虜にしている。

小さなときに『名探偵コナン』のテレビアニメを見ていた人たちは、普通であれば、大人になるにつれて離れていく。それが今、若い世代がスタジオジブリの映画を観に行くような感覚で『名探偵コナン』の劇場版を観始めている。『名探偵コナン』は、ジブリ映画に匹敵するくらいの領域に入ってきたといえよう。

キャラクターに加えて、『名探偵コナン』はストーリーもいりくんでおり、奥が深い。2018年に公開された『名探偵コナン ゼロの執行人』では警察機構も取り上げているが、“はたして子どもが観てわかるのか?”とすら思う内容になっている。ただ、背伸びをしたい子どもはいるし、そこまで緻密にストーリーを作り上げていることも、ファミリー層に加えて、若者層が劇場に足を運ぶ背景にある。

『名探偵コナン』がひとつ大きくなったキッカケに、人気・知名度ともに抜群のルパン三世とのコラボ、「ルバン三世VS名探偵コナン THE MOVIE」(2013年)がある。『名探偵コナン』は、この作品以降に数字が一気に上がった。そういったテコ入れをしながら、キャラクターとストーリーの魅力を充実してきたことが、現在の人気に繋がっている。最新作『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』(2019年4月12日公開)が、どんな興行になるのか、見ものだ」

――劇場版『ドラえもん』はどうでしょう?

「『ドラえもん』はファミリー層が主体で、『名探偵コナン』ほど若者が観るわけではない。ただ、『ドラえもん』も中身を工夫して、大人もある程度、楽しめる内容になっている。大人ドラえもんを打ち出した2018年の「~のび太の宝島」はプロデューサーで作家の川村元気がシナリオを書いた。2019年の最新作『〜のび太の月面探査記』(2019年3月1日公開)では「ドラえもんファン」を公言する直木賞・本屋大賞作家の辻村深月がシナリオを書いている。そうやってストーリー性を充実させて、幅広い層にアピールしているのだ」

――次は『コード・ブルー』ですが、人気ドラマの映画化である本作は興収92億円を突破し、『天と地と』(1990年)を抜いて実写邦画歴代興収5位という記録を打ち立てました。本作の魅力とヒットの背景を教えてください。

「『コード・ブルー』には、人間ドラマ、ヘリコプターなども含めたアクション的要素、家族愛、仲間意識、絆などの要素が全部、詰まっている。そのことが感動を求めている若い女性たちを中心に、大きな力を発揮した。

『コード・ブルー』はフジテレビの作品だが、フジテレビが映画に参入したのは1960年代の終わりころ。テレビ局の中では一番早い。フジは、蔵原惟繕、市川崑など映画界の人材を映画に起用した。映画監督やプロデューサーなどの映画界の人脈・ノウハウに対する尊敬の念を持っていた。フジテレビの初期の人たちを見ていると、映画を学び、そこからヒットへの貪欲な姿勢を覚えたように思う。

そういう下地があって、80年代に『南極物語』(1983年)、『ビルマの竪琴』(1985年)。『子猫物語』(1986年)などで爆発的なヒットを生み出した。最近でも、演劇畑の三谷幸喜監督と『ラジヲの時間』(1997年)から『記憶にございません!』(2019年)まで8作品連続で製作しているし、是枝裕和監督とも『そして父になる』(2013年)から『万引き家族』(2018年)まで5作品連続で関わっている」

――フジテレビの映画は、なぜヒットしたのですか?

「フジテレビは、実は1980年代以前は『母と子のフジテレビ』をキャッチフレーズにしていたほどなので、DNAとしてファミリーとそれに付随した若い層への訴求性がものすごく強い。そのこともフジテレビが他のテレビ局と比べて映画の覇権を握った背景にある。フジが製作する映画は、他のテレビ局が作る映画と比べてエンタメ性が強い。観客が何を求めて映画館に足を運ぶのかを心得ているからだ。

観客が求めるものは、私の言葉でいうと“大衆性”となる。“大衆性”には、感動であったり、ハラハラドキドキであったり、人間ドラマであったり、アクションであったりと、色々な要素を絡み合う。

フジは、観客がなぜ映画館に来るのかということを長い時間をかけて学んできた。それが90年代の終わりに『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年)でひとつの到達点にたどり着く。『踊る大捜査線~』の土台は当時全盛のテレビドラマ。視聴率が高く大衆性があるわけだ。

テレビドラマの人気に乗っかってより大きな劇場版映画を作り、宣伝という点でいえば、全国的な電波宣伝を推し進めるという、徹底した全局総がかり方式。映画のノウハウを持っている人たちが、電波の力を借りながらメディア発信を極大化したのがフジテレビだった」

――フジテレビ映画の特徴は?

「『踊る大捜査線~』(全4作)、『海猿』(全4作)という大ヒットシリーズものを持っていた。『テルマエ・ロマエ』(前後編)、『HERO』(2007年版、2015年版)もそう。他のテレビ局は、フジほどシリーズものが多くはない。
フジには、シリーズ化に耐えられるだけの大衆性がある作品が多い。そして、ヒットしたら必ずシリーズ化するという、映画会社が最盛期だったころに『男はつらいよ』や『座頭市』、『仁義なき戦い』などのシリーズを生み出していった映画の作り方に似ている」

――80年代、90年代だけではなく、2018年になって『コード・ブルー』を大ヒットさせたことは注目に値しますね。

「フジテレビは、良くも悪くも80年代のトレンディドラマへの夢を強く持っている。『コード・ブルー』も、トレンディドラマ的な雰囲気もあって、映画の彩りとして、いかにもフジテレビらしい。ドラマには映画化に適したものと適さないものがあり、お茶の間で見るドラマと、映画館で観る映画も別物だ。そして、その壁を越えて行ける作品だけが、テレビ局の映画ではヒットする。『コード・ブルー』には、映画化に耐えられるだけのクオリティと作品の持つ枠の大きさのようなものがあった。

また、かつて映画会社が持っていた“ヒットしたらすぐシリーズ化するのだ”という活力をフジは持っている。興収50億円を突破した作品が10本以上もあるのは、長い時間をかけてノウハウを学び、自社のカルチャーとしたからだろう。おそらく『コード・ブルー』はシリーズ化するだろう。これこそフジの手法の真骨頂なのだから。木村拓哉主演の『マスカレード・ホテル』(2019年1月18日公開)もフジテレビ映画だ。東野圭吾の原作は現在3冊出ているので、こちらもシリーズ化を狙っても不思議はない」

――他のテレビ局の「実写映画」の特徴も気になります。

「TBSの実写映画は“ドラマのTBS”と言われているだけあってストーリー性が強い。興収50億円を突破した大ヒット作だと『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)、『日本沈没』(2006年)、『花より男子ファイナル』(2008年)、『おくりびと』(2009年)、『ROOKIES -卒業-』(2009年)などがあるが、作品が持っている性質からシリーズ化できず、単発で終わっている。

日本テレビの実写は、男性向けコミックの実写化が非常に上手だ。『DEATH NOTE デスノート』(前後編:2006年6月、11月)、『20世紀少年』(3部作:2008年、09年1月、8月)、『GANTZ』(前後編:2011年1月、4月)、『るろうに剣心』(3部作:2012年、14年8月、9月)など。

ただ、フジの作品が持つ全方位的で強力な大衆性と比べるとどうしても客層が限定される。前後編や3部作品が多いのは、製作予算面も含めて最初から前後編、3部作にせざるを得ないからだ。単独作品で興収50億円を超えているのは『るろうに剣心 京都大火編』(2014年52.2億円)と『DEATH NOTE デスノート the Last name』(2006年52億円)だけだ。

テレビ朝日の実写の特徴は、いうなれば『相棒』に尽きる。そして、その『相棒』を超えられないところがある。興行収入が50億円を突破した実写映画は一本もない(メインの製作実務を行う幹事会社に限る)。テレビドラマでは『ドクターX~外科医・大門未知子~』や、それに続く『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』などもあるが、映画化には至っていない。俳優サイドの事情など色々あるのだろう。他にも人気ドラマシリーズを抱えているが、映画化が難しいものも多い」

――2019年には、どんな動きがありそうですか?

「映画界におけるテレビ局のパワーがこの数年、だんだんと落ちてきた。その中でフジテレビが2018年に『コード・ブルー』で大ヒットを飛ばしたことは大きい。それにより、フジが歴代実写日本映画の1位から5位を独占する結果となった。

・1位:『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年/173.5億円)
・2位:『南極物語』(1983年/110億円)
・3位:『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年/101億円)
・4位:『子猫物語』(1986年/98億円)
・5位:『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2018年/92億円)

他のテレビ局には“フジの独壇場を許さない”という気持ちがあるだろうし、『コード・ブルー』の成功例を参考にしつつ、他局も改めて自分たちの映画作りのあり方にテコ入れをし直すだろう。

その意味で、2019年前半でおもしろいと思う作品としてTBSの『七つの会議』(2019年2月1日公開)を改めて挙げたい。池井戸潤原作で、主演は狂言師の野村萬斎。ほかの出演者も歌舞伎俳優、ミュージシャン、落語家、お笑い、演劇にミュージカル出身と、まさにオールスター。かなりのポテンシャルがある。2019年は、人気ドラマの劇場版映画だけでなく、すべての企画を通して、テレビ局映画の復活が期待できる、かもしれない」

――ところで特集の最後になってしまいましたが、スバリ、大高さんが選ぶ2018年のナンバーワン映画は何だったのでしょうか?

「今だにどうしようか迷っているところはあるが、私は東映の『パンク侍、斬られて候』(6月30日公開)をナンバーワンにしようかなと思っている。『パンク侍~』は、ものすごくおもしろい。今の時代への鋭い洞察力が、ハチャメチャな人間観、人間像に行かざるをえないという、そのギリギリの時代とのかかわり方が、果てしない映画の活力に通じていて、とても感動的だった。

「パンク侍、斬られて候」監督:石井岳龍 原作:町田康 脚本:宮藤官九郎 主演:綾野剛 (C)エイベックス通信放送

「パンク侍、斬られて候」dTVで独占配信中

この作品は配信系の会社が製作を手掛けたが、かなり自由に作られている。そういう自由さは今、大手の会社からはなくなっている。“やりたい放題やる”ともいえるスタンスの映画だが、そんな作品が配給会社大手の東映から出たことの意味は大きい。この作品が、そこそこでも当たっていたら、さらに面白い1年になっていただろう。

『パンク侍~』には、結果的に大衆性がなかったといえるが、大衆性がない映画をヒットさせることも大事だ。ただ、そのためには、宣伝戦略をしっかりと立てる必要がある。それを考えるという意味でも、あえて『パンク侍~』をナンバーワンにしたい」

***
映画界の「2018年の総評」と「2019年の展望」をテーマに、映画ジャーナリストの大高宏雄氏にインタビューを行ってきた本企画。今回で終了です。2018年のナンバーワン映画として『パンク侍、斬られて候』をあげた大高氏だったが、決めかねている様子もうかがえた。それだけ2018年の映画界には様々な“事件”が起きていたということかもしれない。

大高氏は、こう総括した――。
「2018年は色々なことが起こったし、結果として色々な試みがなされた。『カメラを止めるな!』の大ヒットは、日本映画史上初の現象なので、ある意味で『カメ止め』を基準にすべてが動き、『カメ止め』を基準にすべてが語られたともいえる。『カメ止め』の上田慎一郎監督自身も、(『カメ止め』の前から準備を進めていた)次回作として共同監督作品、そして単独監督作品が控えている。そこで真価が問われますね」と。

2018年は、邦画では『カメラを止めるな!』、『万引き家族』が特徴的な情報伝達の有り様を示し、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』、『名探偵コナン ゼロの執行人』、『ドラえもん のび太の宝島』が大ヒットし日本映画の“岩盤”を支えた。洋画に目を向けると、音楽映画の『ボヘミアン・ラプソディ』が破竹の勢いで集客数を伸ばし、2018年11月9日公開にも関わらず、「2019年正月映画ナンバー1」を確実にしようとしている。
他にも様々な映画が公開され、映画館に足を運んだ人それぞれの、“その人にとってのナンバーワン映画”があるだろう。
いよいよ2019年が始まった。今年はいくつの“事件”が起きて、どんな驚きや感動に出会えるのか。公開される映画たちに期待しましょう!

  • 解説大高宏雄

    (映画ジャーナリスト、文化通信社特別編集委員)。<br /> 1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、文化通信社に入社。現在に至る。1992年より日本映画プロフェッショナル大賞を主催。現在、キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」、日刊ゲンダイ「「日本映画界」最前線」、ぴあ「映画なぜなぜ産業学」などを連載。著書は『興行価値―商品としての映画論』(鹿砦社)、『仁義なき映画列伝』(同)、『映画賞を一人で作った男 日プロ大賞の18年』(愛育社)、『映画業界最前線物語 君はこれでも映画をめざすのか」(同)など多数。

  • 取材・構成竹内みちまろ

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