「わいせつ」「期待外れ」港区議会が頭を抱える“2人の赤坂区議”
港区議会は今、2人の“赤坂”に悩まされている。
1人目の“赤坂”は、今回が3度目の逮捕となった赤坂大輔港区議会議員である。
7月27日には港区議会のホームページに、
《議員にあるまじき行為を行ったとして、これまで3回にわたり赤坂大輔議員に対する辞職勧告の決議を行いましたが、今日に至るまで勧告に従いませんでした。(中略)区民の皆様の信用を著しく損ねたことを深くお詫び申し上げます》
と異例の謝罪文が掲載された。
公園内で女子中学生2人に卑猥な言葉をかけたとして千葉県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された。
1回目の逮捕は、タクシー運転手への殴打事件。2回目は、女子高生3人に下半身を露出した公然わいせつの疑いで現行犯逮捕されている。
今回が3度目の逮捕だが、過去2度の不祥事に対して、港区議会では区民の“辞めさせろ!”という声に押され、3回も全会一致で辞職勧告が決議されている。しかし、辞職する事なく未だに議員バッチを付けて闊歩しているのである。港区のある区議は
「またやると思っていたので、3度目の逮捕には驚きはありませんでした。しかし、千葉県迷惑防止条例違反での逮捕にしては、拘留期間が長すぎる。別件で何かあるんですかね…」
と話す。
港区議会では辞職勧告を無視し、議会へ出席すらしない赤坂区議に対し、‘20年に議員報酬等の特例に関する条例を施行して対抗手段に出ている。ちなみに港区議会議員に与えられる年間の歳費は1082万6,183円だ。
これによって議会に出席しないと歳費が支給されない事になった赤坂区議は‘22年1月~7月までの出席義務が生ずる会期34日間の内、30日出席をしていた。が、しかし、今回の逮捕となった。
「物事を熱っぽく語るタイプで、その事に魅力を感じる一定の支持者が居るのは事実です。そのため、3度逮捕されても、来年4月の統一地方選挙への出馬を考えているかもしれませんね」(前出・港区議)
今後、港区議会では、どのように対処するのか。そして、有権者はどのように判断するのだろうか…。
もう1人の“赤坂”は‘19年に1144票を獲得して、34人中30位で、港区議会選挙に初当選したスマイル党の党首、マック赤坂港区議会議員である。
マック赤坂氏は、これまで、衆院選、参院選、東京都知事選、大阪府知事選、新潟知事選、大阪市長選などに出馬。‘15年に亡くなった羽柴誠三秀吉氏と同様、選挙大好きな名物候補者である。
過去13回の選挙では、過激なパフォーマンスが話題となり注目を集めてきた。
‘14年の大阪市長選では、橋下徹候補者の演説会場に現れ、会場にいた男性に羽交い絞めにされた挙句、救急車の出動騒ぎを起こしている。更に、橋下氏の最後の演説日に、インドの修行僧の格好にウサギの耳をつけて現れたりもしている。
また、選挙ではないが、‘13年1月22日に行われた映画監督大島渚氏の告別式には、サンタクロースのコスプレで参列。焼香の際に
「メリークリスマス!」
と叫び、出棺の間際には会場外の路上で音楽を流し歌ったり踊ったりしたため、警察を呼ばれる事態となったことも。まさにやりたい放題のパフォーマーであった。
ところが、議員バッチを付けたとたん、その勢いはどこかにいってしまったようだ…。議会の委員会に出席しても、殆ど発言しないのである。別の区議会議員は
「マック赤坂さんのパフォーマンスと発信力に期待していました。いい意味で港区議会に新風が吹くのではないかと思っていましたが、過去3年間で、議会で質問をしたのが2回だけ。その無気力ぶりを見ていると、いったい何のために議員になったんですかね…」
港区議会事務局によると、一人会派『スマイル党』には年間で2時間20分の質問時間が与えられている(内訳:本会議20分・予算特別委員会答弁も含め60分・決算特別委員会答弁も含め60分)。過去3年間で計算すると7時間の質問時間があるにも拘わらず僅か13分しか質問時間を使っていない。
マック赤坂議員は「子供・老人手当月3万円」「スマイル商品券の活性化」「毎月8日をスマイルデー」などを選挙公約に掲げていたが、これらに関連する発言は全くしていない。そう言えば、‘16年東京都知事選出馬を撤回したタレントの石田純一氏に対してマック氏は、
「記者会見を見たけど彼、全然勉強していないねえ。オレは4度目の出馬だけど、彼は都庁や都議会のことを何も知らないだろう。
石田君は2、3日に渡って電波ジャックをした揚げ句に出ないなんて。泡沫の一人として許せない」
などと批判していた。だが、前出の区議会議員は、
「マック赤坂議員は運転手付きのマイバッハで颯爽と登庁しているが、何がやりたくて議員になったんだろうか。自身の政策を何度も何度も信念を持って発言するのが議員。マック赤坂議員には、信念も政策も無いのかもしれない。正直、期待外れでしたね」
と嘆いている。
議員の権利である質問時間を行使していないマック赤坂。最近は病気を理由に欠席が続いており、今年は4日しか出席していない。
マック赤坂議員に票を投じた1144人の有権者は、「面白味の無いマック氏」をどのように見ているのだろうか。舌鋒鋭い、あの威勢のいいマックさんは何処に行ってしまったのか、ぜひともマック氏らしい切り口で、議会でひと暴れしてほしいものだ。
地方議員の劣化が拡大していると言われている。議員は「選良(選挙によって選び出された人物)」である事の自覚を持ち、己に一票を投じた人々の期待と議員の職務を今一度、思い起してほしい。
取材・文:阿部光利(元TVリポーター、政治ジャーナリスト)
‘56年生まれ。『2時のホント』『おはよう!ナイスデイ』『とくダネ!』(ともにフジテレビ系)などの情報番組でリポーターとして活躍。広告代理店経営の後、‘11年から‘19年までは東京都台東区議会議員に。その後、衆議院議員の公設第一秘書として活動。現在は、行政の諸問題、社会問題などを独特の視点で取材、執筆活動をしている