「優勝候補の大本命」大阪桐蔭がベスト8で敗退した「3つの理由」 | FRIDAYデジタル

「優勝候補の大本命」大阪桐蔭がベスト8で敗退した「3つの理由」

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敗戦後、右のエース・川原(中央左)は人目をはばからず号泣した
敗戦後、右のエース・川原(中央左)は人目をはばからず号泣した

高校主要大会3冠の目標は、道半ばにして終わりを迎えた。

8月18日に行われた甲子園準々決勝第3試合。下関国際(山口県)と対戦した大阪桐蔭は4―5で敗れた。昨秋の明治神宮大会、今春のセンバツを圧倒的な強さで優勝し、1998年の横浜高校以来、史上2校目となる高校主要大会3冠は間違いないと言われた大阪桐蔭だが、夏の甲子園はベスト8で涙をのんだ。

今年の大阪桐蔭は「投手王国」と呼ばれるほどハイレベルなピッチャーが揃っていた。188cm・85kgの恵まれた体格から最速148kmのストレートを投げ込む右のエース・川原嗣貴と、2年生にしてすでに「桐蔭歴代最高左腕」との呼び声高い左のエース・前田悠伍の二枚看板を中心に、150km右腕・別所孝亮や左サイドスローの南恒誠と実力者がズラリ。甲子園でも準々決勝までの3試合で29得点3失点と圧倒的な強さを見せつけ、勝ち上がってきた。

そんな優勝候補の大本命は、なぜ負けたのか。取材の中で見えてきたのは、“世代最強”と言われた故の落とし穴だった。 

大阪桐蔭が敗れた3つの敗因

左のエース・前田は5回途中から登板。平均球速140km中盤の速球と抜群のコントロールで才能の片鱗を見せつけるも、9回表に2失点。最後の最後に力尽きた
左のエース・前田は5回途中から登板。平均球速140km中盤の速球と抜群のコントロールで才能の片鱗を見せつけるも、9回表に2失点。最後の最後に力尽きた

スポーツジャーナリストの安倍昌彦氏は敗因の一つに「下関国際の投手陣のレベルの高さが、桐蔭の想定よりも上をいっていた」と語る。

「先発の古賀康誠投手は、立ち上がりに本来の球威もコントロールもなかったので、大阪桐蔭は甘いボールを連打して2点を先取しましたが、これが逆によくなかった。『下関国際くみし易し……』と、ちょっとナメてしまったのではないでしょうか。スイングが大振りになって、当たってもヒットにならない足元のスライダーに手を出しては、打ち損じを重ねていきました。しかし本来、古賀投手は大会トップクラスの左腕です。特にスライダーはプロでも通用するレベル。小さく鋭くストライクゾーンにきまるものと、右打者の足元に切れ込む大きな変化の2種を投げ分けます。実際に古賀投手が尻上がりに調子を上げるにつれ、どんどん打てなくなってしまいました。

一方、リリーフした仲井慎投手は右のオーバーハンド。古賀投手とは逆の球道で、しかも140km後半の快速球は、藤川球児(元阪神など)のストレートのように打者視点ではホップして見える打ちにくいボール。ほかに、タイミングを崩されるチェンジアップもあって、やはりとても打ちにくい投手でした。仲井投手の前評判はそんなに高くなかったこともあって、打席に立った時に感じたズレを、調整できないまま終わってしまったんだと思います」

敗退原因は選手の起用法にも隠されていた。高校野球専門誌『ホームラン』元編集長の戸田道男氏が言う。

「どこか決勝・準決勝から逆算した選手起用が目につきました。それが顕著に出たのは投手。1回戦を川原、2回戦を前田、3回戦は再び川原と西谷監督はWエースを交互に登板させてきました。本来の登板ルーティーンを守るのであれば、準々決勝は前田が先発するハズ。しかし先発のマウンドに送られたのは別所だった。決勝を前田に任せるというのが決まっていたとすれば、より万全の状態で投げられるようにとの判断でこの試合では救援に回すことにしたのかもしれません。もちろん別所もとても優れたピッチャーです。全ては結果論ですが、ローテーション通りに前田を先発させていたら、結果は違ったかもしれません」

最後の理由は意外なところに潜んでいた。戸田氏は実際に甲子園でこの一戦を観戦していたが、ファンの応援に違和感を覚えたという。そこには「圧倒的な桐蔭一強」が生んだ歪みがあった。

「最初からどちらかというと、下関国際の攻撃の時の方が、拍手が大きいなとは感じていました。決定的におかしいと感じたのは9回。ランナーが出る前から、下関国際の吹奏楽に合わせて球場中から手拍子が起こりました。さらに大阪桐蔭のベンチがある1塁側の観客席からも下関国際の応援が起こり、桐蔭からしたら完全アウェイ状態。もちろん西谷監督も、桐蔭の選手たちもそういった雰囲気には慣れていると思いますが、プレッシャーはかなりかかったと思います」

実際に星子天真主将は試合後の取材に対して「それだけの練習はやってきていたんですけど、のまれそうになるというか。2年生の前田が投げていたんですけど、その時に声をかけられなかったのが申し訳ないと思います」と答えている。

「よくも悪くも強すぎるチームということで、『桐蔭に勝つチームを見たい』というファンが多かった。エンターテイメントとしては、そちらの方が面白いですからね。球場に足を運んだ数万人の観客が、最後の最後に桐蔭に立ちはだかったんだと思います」(戸田氏)

今大会一番の大番狂わせとなった一戦。大阪桐蔭の敗戦は必然だったのかもしれない。

  • 写真共同通信社

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