<figure id="attachment_260982" aria-describedby="caption-attachment-260982" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="369ec05e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/2022053109299.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-260982" class="wp-caption-text">佐々木が育った岩手県陸前高田市に事務局がある「佐々木朗希選手を応援する会」に入会すると発行される会員証（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<p>鉄道開業150周年を迎える今年、JR東日本がスペシャルな企画乗車券を発売する。その名も「鉄道開業150周年記念 JR東日本パス」。10月14日から27日の連続する3日間、JR東日本全線と7社の鉄道路線が乗り放題のきっぷだ。しかも特急列車・新幹線の自由席が何回でも利用可能で、うち4回は指定席を予約できる。価格は大人2万2150円、子ども1万150円で利用開始日の1ヵ月前から発売される。つまり10月14日から使うならば9月14日から購入可能だ。</p>
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<p>東京～古川間（自由席・往復22220円）だけで元がとれる計算だが、せっかく乗り放題なのだから最大限使い倒さないともったいない。ならば鉄道開業150周年にふさわしい鉄道乗り尽くしの旅はいかがだろうということで、鉄道業界に10年以上勤務した筆者が考えたプランを紹介したい。</p>
<p>なおJR東日本は「はやぶさ」「つばさ」「こまち」などの新幹線、「あずさ」「ひたち」などの在来線特急を全車指定席で運行しており、これらを利用する場合は指定席枠のいずれかを使わなければならない（つまり乗車できるのは4列車まで）。指定席は利用日の1ヵ月前の午前10時から予約可能なので、売り切れる前に押さえておこう。</p>
<p>なお8月豪雨で東北地方の多数の路線が被災し、運転を見合わせているが、このうち橋梁流出など復旧に長期間を要すると想定される路線はコースから除外し、それ以外は10月までの復旧を前提とした。今後の復旧状況によってはコースが成立しなくなる可能性があることに注意してほしい。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="682f9878"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/c3921ff4b331f5c247b39f0307006fbc.png" alt=""></a></p>
<p><span class="strongInContent">＜東北海岸線ぐるり一周コース＞</span></p>
<p><span class="strongInContent">【1日目】</span><br>
東京から東北に旅行するなら東北新幹線を利用するのが常道だが、東北に向かうルートはひとつだけではない。東北新幹線開業以前は仙台・青森方面の特急列車が多く運行されていた常磐線の存在を忘れることはできない。</p>
<p>常磐線は元々、常磐炭鉱の石炭輸送と人員輸送のために建設された鉄道だが、石炭輸送が下火になるのと入れ替わるように、過密ダイヤの東北本線を補完する形で寝台特急「はくつる」「ゆうづる」などが設定されるバイパス路線になっていった。</p>
<p>現在では品川駅と勝田駅・いわき駅を結ぶビジネス特急「ときわ」「ひたち」が走るのみだが、その中でも異彩を放つのが上下3往復だけ設定されている仙台発着の「ひたち」だ。</p>
<p>常磐線は東日本大震災と原発事故の影響で福島県の一部区間で長らく運転を見合わせていたが、2017年から順次復旧され2020年3月に全線で運転を再開。仙台発着の「ひたち」も9年振りに復活した。</p>
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<p>実は震災前、仙台発着の「ひたち」は上野～いわき駅間といわき～仙台駅間に分割されることが発表されていたが、震災で計画は白紙に戻り、常磐線復興のシンボルとして存続した路線だ。今回はこの仙台直通特急「ひたち」から旅をスタートさせたい。</p>
<p>東京駅を7時53分に出発する「ひたち3号」は9時37分に常陸多賀駅に到着し、ここから仙台までほぼ太平洋沿岸に沿って走行する。復興途上の浪江や相馬の様子を車窓から眺めながら、この11年に思いを馳せたい。4時間半の旅を終え、仙台駅には12時29分に到着だ。</p>
<p>仙台から先も海岸線に沿って北上しよう。まずは仙台駅13時13分発の「仙石東北ライン」に乗車して石巻を目指す。「仙石東北ライン」とは、東北本線から仙石線に乗り入れることで仙台～石巻駅間を結ぶ速達列車で、震災復興事業の一環として2015年から運行を開始したものだ。</p>
<p>石巻駅で石巻線普通列車に乗り換え、前谷地駅に14時55分に到着。ここからは震災の津波被害が最も大きかった宮城県、岩手県の沿岸部を進む。その象徴とも言えるのが、震災で大きな被害を受けた気仙沼線（柳津～気仙沼間）55.3キロ、大船渡線（気仙沼～盛間）43.7キロの線路をバス専用路に置き換えたBRT（バス高速輸送システム）だ。</p>
<p>BRT気仙沼線は前谷地駅を15時13分に出発し、気仙沼駅に17時37分に到着する。鉄道時代の同区間は約2時間だったので所要時間は20分以上伸びたが、区間によっては本数が3倍になった。鉄路が失われたのは残念だが、地域の交通機関として見れば格段に便利になったと言えるだろう。</p>
<p>仙台～気仙沼間の都市間輸送は高速バスが主流で、この区間を乗り通す人はほとんどいない。そのためBRTにはトイレのない路線バス用の車両が用いられており、1時間もたつとお尻が痛くなってくる。ましてや2時間以上の乗車は普段ならお勧めしないが、この機会に被災地の現状を見ておきたい。</p>
<p>さてBRTだが、終点の気仙沼駅ではなく2つ手前の南気仙沼で降りるのがおススメ。海の方へ進めば魚市場や旅館・ホテル、内陸側に進めば飲食店が並ぶ街の中心地だ。気仙沼で1日目は終了なので、この付近の宿が目的地になるだろう。気仙沼と言えば東北を代表する漁港として知られる。海岸沿いを歩きながら海の幸を味わおう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="佐々木朗希の母校の最寄り駅に…"></div>
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<figure id="attachment_260996" aria-describedby="caption-attachment-260996" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c602a066"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/2020031400630.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-260996" class="wp-caption-text">2020年、全線運行を再開した特急「ひたち」</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_260997" aria-describedby="caption-attachment-260997" style="width: 735px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8e2ed6bb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/2022081709640.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-260997" class="wp-caption-text">宮城県登米市にあるJR気仙沼線の柳津（やないづ）駅を出発するBRTのバス。線路があった所がバス専用の道になった（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">【2日目】</span></p>
<p>2日目は気仙沼から再びBRTだ。気仙沼駅10時59分発のBRT大船渡線盛行きを利用するが、宿の場所によっては内湾入口駅（11時1分発）から乗車してもよい。ところで大船渡線と縁が深いのがロッテの若き剛腕、佐々木朗希投手だ。佐々木は陸前高田市の出身だが、東日本大震災で父と祖父母を亡くし、町も壊滅的被害を受けた。震災後は大船渡に移り住み、地元大船渡高校に進学。その後の活躍は周知の通りだ。</p>
<p>BRTは12時16分に盛に到着。ここから三陸鉄道リアス線を乗り通す。三陸鉄道は国鉄の盛線・宮古線（盛～釜石駅間）、久慈線（釜石～久慈駅間）を転換した第3セクター鉄道で、震災後にJR山田線釜石～宮古駅間の経営を移管。現在は盛～久慈駅間163キロを結んでいる。三陸鉄道は私鉄だが、東日本パスの対象なので追加料金は必要ない。</p>
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<p>三陸鉄道の旅は長い。13時に盛駅を出発して13時51分に釜石に着く。釜石で乗り換えて15時31分に宮古駅に到着。駅前には飲食店もあるが、次に乗車するのは16時35分発の列車なので余裕はあまりない。店が混雑していないようならちょっと立ち寄るのもアリだが、列車に乗りそびれると今後の行程が全部狂うので無理は禁物。心配な人は宮古駅に併設された三陸鉄道直営の土産物屋「さんてつや」でお土産を買おう。</p>
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<p>宮古駅を出発した列車は18時11分に久慈に到着。久慈駅で18時18分発八戸線普通列車に乗り換えて20時ちょうどに八戸に着く。東北新幹線であれば東京から新青森まで700キロ超を3時間で駆け抜けるのに、盛～八戸間約278キロは7時間を要する。東北の海岸線には独特の時間が流れている。そんなことを噛みしめながら2日目は終了だ。</p>
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<figure id="attachment_261000" aria-describedby="caption-attachment-261000" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="739c314e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/08/2019032301813.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-261000" class="wp-caption-text">2019年、宮古駅前にオープンした三陸鉄道グッズ専門店「さんてつや」</figcaption></figure>
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<p><span class="strongInContent">【3日目】</span></p>
<p>特急を中心に一気に進む。八戸駅8時35分発の東北新幹線「はやぶさ95号」で新青森駅に9時2分に到着。続いて新青森駅9時11分発、奥羽本線特急「つがる2号」に乗り換え、11時45分に秋田駅に到着。秋田から12時8分発羽越本線普通列車で酒田駅まで移動し、酒田駅14時31分発「いなほ10号」で16時37分に新潟までたどり着く。</p>
<p>最後は16時57分発の上越新幹線「とき336号」で19時に東京に戻って来る。初日は約520キロ、2日目は約272キロ、3日目は約870キロ進んで、東北地方の海岸線をぐるりと一周する旅は終了だ。指定席枠は3日目の「はやぶさ」と、その他3回の特急・新幹線利用に使おう。鉄道に乗りっぱなしの旅になるが、東北の現在を知るまたとない機会となるはずだ。</p>
<p><span class="strongInContent">≪追記：大雨に伴う秋田支社管内の被害と今後の見通し≫</span></p>
<p style="font-weight: 400;">JR東日本は8月25日、豪雨被害を受けた奥羽本線の運転再開には数カ月を要する見込みと発表した。工期が短縮される可能性もあるが、10月14日までに復旧が間に合わなかった場合、3日目の新青森から秋田に抜けるルートが使えなくなってしまう。</p>
<p style="font-weight: 400;">その場合は八戸駅9時5分発「はやぶさ14号」で盛岡（9時41分着）、盛岡駅9時46分発「こまち5号」で秋田（11時25分着）に向かうことでリカバリーが可能だ。このプランでは指定席枠に余裕があるため、始発から乗車できる「いなほ」か「とき」を自由席に変更し、「はやぶさ」「こまち」の指定席を取ることで対応したい。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>≪【後編】<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/260888">「JR東乗り放題切符」で食べられる”新幹線５路線グルメ”</a>に続く≫</p>


（鉄道ジャーナリスト）埼玉県出身。1982年生まれ。東京地下鉄（東京メトロ）に11年勤務した後、2017年に独立。東京圏の都市交通を中心に各種媒体で執筆をしている。

枝久保達也

佐々木が育った岩手県陸前高田市に事務局がある「佐々木朗希選手を応援する会」に入会すると発行される会員証（写真：共同通信） 鉄道開業150周年を迎える今年、JR東日本がスペシャルな企画乗車券を発売する。

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