明治大に勝利をもたらした主将・福田健太の執念 | FRIDAYデジタル

明治大に勝利をもたらした主将・福田健太の執念

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明治大の主将、福田健太。2018年5月の東海大戦にて 
明治大の主将、福田健太。2018年5月の東海大戦にて 

明治大は「重戦車」と呼ぶにふさわしい勝ち方を見せ、4強入りを決めた。

12月22日、大阪・キンチョウスタジアムで行われた第55回ラグビー大学選手権準々決勝で明治大が東海大を18-15で下した。

勝った田中澄憲(きよのり)監督は、選手たちを手放しでほめる。

「この試合はフィジカル・ファイトをテーマに掲げてやってきました。それを体現してくれました。よく勝ち切ってくれました」

後半30分、東海大のフッカー加藤竜聖にトライを奪われ、15-15の同点になる。

そこから攻めに攻めた。

ゴール前に迫り、「ピック・アンド・ゴー」と呼ばれる攻撃を繰り返す。フォワードがラックのボールを拾い上げ、突進する。

まさに肉弾戦。骨や肉のぶつかり合う「ブギッ」という鈍い音が、スタジアムにこだまする。

まれにバックスを絡ませた攻撃は実に31次(フェイズ)に及んだ。10に到達すれば、「よし」とされる数の3倍を上回る。

フォワードリーダーのフランカー・井上遼は振り返る。

「フィジカルは勝っている、とことんこだわろう、と話していました」

約7分間の濃密なアタックを持続させた。

ついに、加藤真也レフェリーは長い笛を吹く。重い反則が示された。

ノット・ロール・アウェイ。

タックルをした人間はすみやかに退転すし、ボール出しを妨げてはならない。

飛び上がり、抱き合う紫紺。うなだれる青。ジャージーにはともに薄茶色に冬枯れした芝生と黒い泥がこびりついていた。

距離約10メートル、ほぼ正面のやさしいペナルティーゴール。フルバックの山沢京平は真ん中を通す。

後半40分、最後で勝負は決した。

一番の敗因は、と聞かれ、東海大の木村季由(ひでゆき)監督は答える。

「あそこでミスしてしまったことです。メイジはあっぱれでした。ミスをまったくしませんでしたから」

悔しさを押し殺し、勝者を讃えた。

明治大のプロップ・安昌豪(あん・ちゃんほ)は笑顔を浮かべる。

「ああいう感じの練習はだいたい週に1回はしています。自信? まあ、ありました」

1人目が当たると左右についた選手が、ボールを奪いに来る相手に対し、低くスイープする。厳しいと見るや3人目が加勢する。その型が徹底されていた。

安は前半20分、178センチ、112キロの体をねじ込んでチーム初トライを挙げた。この時の攻撃数も12。型もピック・アンド・ゴーだった。安は選手権初戦となった前週の立命館大戦(50-19)から2試合連続で5点をもぎ取る。スクラム最前列で押しに奮闘するフロントローとして、体の強さと得点の嗅覚を持つ貴重な存在だ。

明治大は、勝利の道筋――31次の攻撃からペナルティーゴール――を描いたキックオフをしていた。

ボールを大きく蹴り込んだ。

捕球したアタアタ・モエアキオラをスクラムハーフの福田健太が捉える。東海大はキックでタッチに逃げる。敵陣22メートル上のラインアウトが勝負を決める起点になった。

主将でもある福田はその選択を振り返る。

「手前に浅く蹴って、再獲得するやり方もありました。でも、天気もよくなかったので、奥に蹴ってもらいました。ミスがあるかもしれない、と考えたからです」

この日、関西は正午過ぎの試合開始前まで雨が降っていた。

福田は先頭を切ってそのボールを追いかける。通常、チェイサーはフォワードの選手か脚の早いウイングになることが多い。

「できるだけプレッシャーをかけとようと思いました。僕はまだ走れましたから」

勝利への執念があった。

東海大との激闘を制した明治大は2大会連続の準決勝進出。次は対抗戦で27-31と4点差で敗れている早稲田大と激突する。

人気の早明戦が再戦される。

「チャレンジャーとして、気持ちを前面に出して臨みたい。次の試合はトーカイの分まで頑張りたいと思います」

田中監督は抱負を語った。

リベンジをかけた一戦は新年1月2日。東京・秩父宮ラグビー場で12時20分にキックオフされる。

もう一試合は10連覇を狙う帝京大が関西王者の天理大と対戦する。

4校に絞られた大学選手権。明治大が2つ勝てば、22大会ぶり13回目の学生王座につく。この数字は早稲田大の15回に次ぎ、歴代2位の記録になる。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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