小栗旬『鎌倉殿の13人』の傷ついた勝者と重なるハリウッド再挑戦 | FRIDAYデジタル

小栗旬『鎌倉殿の13人』の傷ついた勝者と重なるハリウッド再挑戦

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妻・山田優と共に家族でハリウッドに挑戦した小栗旬。大きな挫折を味わったが…
妻・山田優と共に家族でハリウッドに挑戦した小栗旬。大きな挫折を味わったが…

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第31話が8月14日に放送され、小栗旬演じる北条義時がついにダークサイドに堕ち、荒ぶる牙を剥いた。

源頼朝(大泉洋)の死後、

「これからの鎌倉に自分はいらない」

と言って、一度は鎌倉を離れ伊豆に退く決意を口にする義時だが、政子に

「あなたは卑怯よ。少しは責任を持ちなさい!」

とたしなめられ、しぶしぶ鎌倉に留まる。そんな義時の目に闘いの炎が宿ったのは、第30話。熟慮の末、讒訴や死罪の連鎖を断ち切るために、比企能員との対決を覚悟。

「鎌倉殿の元で、悪い根を断ち切る、この私が」

と啖呵を切るや、手段を選ばず能員を騙し討ちにして比企一族を滅亡へと追い込む。

中でも二代将軍・頼家(金子大地)の息子で、比企の血を引く一幡の命乞いをする政子に

「仏門に入って頂きます」

と言っておきながら、その舌の根も乾かぬ内に息子の泰時(坂口健太郎)に

「戦になったら、真っ先に一幡様を殺せ。生きていれば、必ず災いの種になる。母親ともども。頼朝様なら、そうされていた」

と命じて、泰時を驚愕させる。この豹変ぶりにも、ネット民からは

《顔つきが完全に非常な鬼》
《ブラック義時降臨》

といった声が上がっている。

さらに8月21日に放送された第32話で一幡が生きていることを知った義時は、前話にもまさる阿修羅のごとき形相を見せる。必殺仕事人・善児(梶原善)の元を訪ね、“殺せ”と命じるも、

「できねえ。わしを好いていてくれる」

と言って抗う善児に、義時は表情一つ変えず

「千鶴丸と何が違う」
「似合わないことを申すな」

と、冷徹に言い放つ。この時の義時の表情には、もはや人間としての感情など微塵もない。

しかしこの変貌ぶり、果たして頼朝を見習ってのものなのだろうか。私はそうは思わない。

その証拠と言えるセリフが第31話、比企討伐の報告の帰りに、義時の脳裏に蘇る。それは、亡き兄・宗時(片岡愛之助)のセリフ

「小四郎、俺はこの坂東を俺たちだけの物にしたいんだ。坂東武者の世をつくる。そしてその天辺に北条が立つ」

この言葉こそ、義時を“狂気”に走らせる呪いの呪文ではないのか。

今回大河の制作統括を担当する清水拓哉氏は、義時を演じる小栗旬について興味深い話をしている。

「今作は『新選組!』『真田丸』に続き、三度目の大河に挑む三谷幸喜氏が初めて手掛ける勝者の歴史。義時は伊豆の田舎侍の次男に生まれ、ひょんなことから見出され、わずか10年で鎌倉幕府の中枢に駆け上り、やがて実質的な“日本の王”になっていく。

しかしこの王は、権力を握って傲慢に高笑いする王ではなく、苦しみや憎しみ、悲しみを乗り越えて王となる“傷ついた勝者”。その姿が数々の映像作品や、シェークスピアの舞台など様々なことに挑戦し続けている小栗旬の姿とオーバーラップすると語っています」(ワイドショー関係者)

小栗自身、今回のオファーを受けて

「かなり悩みました」

と告白。その際、源義経役を演じた俳優・菅田将暉にも相談したところ

「そういうところで戦っている小栗さんの姿を見せてもらえると自分には励みになります」

と言われ、出演を決断するひとつの要因になったと話している。実は当時、小栗はハリウッド進出を巡り、大きな蹉跌を味わっていた。

「小栗は去年7月に公開された映画『ゴジラvsコング』でハリウッドデビューを果たしたものの、出演するシーンはわずか5シーン。セリフもほとんどなく撮影時に比べて半分くらいカットされてしまいました。

当初とキャラが変わってしまい、同情の声も寄せられていますが、本人は『思い出すと今も脂汗が出てくる』と漏らすほど、悔しい思いをしています」(前出・ワイドショー関係者)

小栗は、今年の5月に放送された番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)で、400日に及ぶ大河ドラマの密着取材の中で俳優としての葛藤を口にしている。

「ネームバリューもあり、大物俳優の一人に数えられるようになった小栗を制作サイドが『出てくれるだけでOK』『小栗旬をそんなに傷つけずに作品を終わらせましょうねという現場が増えてきた』と分析。『そうすると、俺の居場所はないよ』『俺って死んだなって思う。小栗旬って役者は、多分ここ数年で死ぬんだよ』と苦しい胸の内を明かしています。だからこそ、何としてもハリウッド進出を成功させたかったのでは」(制作会社プロデューサー)

そんな中、小栗は大河ドラマ撮影終了後に家族を連れて、再びロスへ移住すると報じられ、話題を呼んでいる。

「小栗は『プロフェッショナル』のラストで『小栗旬にとってのプロフェッショナルとは?』の問い掛けに対して『ここまで自分を連れてきてくれた人たちへの恩返し』と答えている。

ハリウッドデビューにつまずき、悔し涙を流した小栗。その姿が様々な苦しみや憎しみ、悲しみを乗り越えトップを目指す義時の姿と被って見えるのは、私だけではありません」(前出・制作会社プロデューサー)

後輩の俳優たちには「米国に忘れ物を取りに行く」と話している小栗。俳優・小栗旬もまた

「坂東武者の世をつくる。そしてその天辺に北条が立つ」

と言った義時の言葉を胸に、虎視眈々とハリウッドへのリベンジを狙っているのかもしれない。

  • 島 右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍「異聞 徒然草」シリーズも出版中

  • 写真Splash/アフロ

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