９年前から使用も…中国・算数教科書「社長ら27人厳罰のワケ」

〈品性に欠ける〉

〈こんなイラストを子どもに見せる神経を疑う〉

〈教材にふさわしくない〉

中国のネット上で、大批判を浴びている教科書がある。政府系の「人民教育出版社」が発行する、小学生向け算数の教科書だ。８月22日、中国教育省は看過できない問題があるとして同社社長や編集責任者など27人を免職する厳罰を加えた。

「当該の教科書は12年の審査に合格し、翌年から中国全土で使用されていました。教育省は９月から新年度に合わせ、約2500冊の教科書を再調査。『人民教育出版社』の教科書の、ほぼすべてのページで再編集を求めたんです」（全国紙国際部記者）

女の子の胸を……

教育省は、処分の理由を「正しい政治理念や価値観を体現し人民の美的感覚と合わせるため」と説明している。いったい何が問題視されたのだろう。

「教科書内には子どもたちが公園で遊ぶ様子が描かれていたのですが、男の子が女の子の胸を触ったり、スカートを引っぱっている挿絵があったんです。下着を履いていない男の子もいました。

他にも中国の国旗が正確に表現されていなかったり、米国の国旗をデザインしたようなシャツを着てポケットに手を入れている男の子のイラストもありました。こうした素材（現在は削除）が、『中国の明るい児童のイメージにそぐわない』と修正を求められたんです」（同前）

だが、この教科書は９年ほど前から教育現場で使われている。なぜ今になって、中国当局は厳しい態度に転じたのだろう。

「今年５月になり、ネット上で『米国の手先だ』などと教科書の内容を批判する書き込みが。批判は全国に広がり大炎上したんです。ネガティブキャンぺーンの広がりに、当局も看過できなくなったんですよ。

批判を放置していたのは、当局の意図でもあります。習近平・国家主席は愛国教育を重視していますが、10年近く前から使われていた教科書をいきなり使用中止にするわけにはいかない。炎上を、うまく利用したのでしょう」（中国在住ライター）

国の方針に合わせるためなら、ネット上の誹謗も活用する中国政府。教育現場の規制も、より厳しくなりそうだ。