<figure id="attachment_261896" aria-describedby="caption-attachment-261896" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="95a6b6e5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/35_410.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-261896" class="wp-caption-text">大阪桐蔭には全国から有望選手が集まっているが、少数精鋭でもある。部内では日々、激しい競争が行われている</figcaption></figure>
<p>夏の甲子園を制し、初めて大優勝旗の「白河の関」越えを果たした仙台育英（宮城）の須江航（すえわたる）監督は、お立ち台であえて「大阪桐蔭」の校名を口にし、こう続けた。</p>



<p><span class="strongInContent">「そういう目標になるチームがあるから、暗い中でも走って行けた」</span></p>
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<p>監督に就任した’18年より打倒・大阪桐蔭を掲げてきた自称・大阪桐蔭マニアの須江監督らしいな、と思ったものだ。その大阪桐蔭は、準々決勝で準優勝の下関国際（山口）に敗れた。しかしながら、昨秋の明治神宮大会、そして今春のセンバツを制していて、現在の高校野球ヒエラルキーの頂点に立っていることに異論を挟む者はいないだろう。</p>



<p>大阪桐蔭は選手を集めすぎている――。同校が全国の舞台で活躍するたびに、そんな批判的な声が飛び交う。だが、大阪桐蔭のスカウティング現場を取材してきた私はこういう意見には強い抵抗を覚える。全国の能力の高い選手に眼を光らせ、関係者を通じて入学に導いていくことは、いわば企業努力だ。”集めている”と同時に、数多（あまた）の勧誘がある有望選手から”選ばれている”ことを忘れてはならない。</p>
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<p>藤浪晋太郎らが春夏連覇を達成した’12年以降、春４回、夏３回の全国制覇を遂げている大阪桐蔭の一強時代が続いている最大の要因は、「退部者が少ない」点にあると私は思っている。確認できる限りここ10年間で二人しかいない。強豪校になるほど、ドロップアウトしてしまう球児は少なからずいるものだ。一学年20名前後の少数精鋭とはいえ、大阪桐蔭の退部者が少ないことはつまり、控えの選手を”腐らせない”ことに起因している。</p>



<p>西谷浩一監督は中心メンバーを「Ａ」チーム、そこに入れない「Ｂ」「Ｃ」チームの試合を育成試合と呼ぶ。西谷監督はかつてこう話していた。</p>



<p><span class="strongInContent">「メンバー争いは全員にチャンスがある。Ａが遠征などに行っている間、残った選手たちの育成試合を一日２試合組んだり、近隣の学校と平日にナイターで試合をして、野手なら数十打席を保証する。そこから台頭してきたらＡに起用していきます」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="控え選手底上げのために取り入れた某プロ球団の手法"></div>



<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"> </div>
<p>野手の打席数を保証するシステムは、北海道日本ハムから西谷が学んだものだ。</p>



<p><span class="strongInContent">「僕は監督になりたての頃、下手くそな選手は試合に出なくていい、まずは試合に出られる実力まで練習で鍛えてからが競争だと思っていた。ところが、プロの二軍でも所属選手に打席を保証することを知って、目から鱗（うろこ）でした。今はなるべく平等にチャンスを与え、這い上がってきた選手を起用しようという考えです」</span></p>
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<p>昨今は夏の地方大会の前に、ベンチ入りできなかった３年生の引退試合を先に行う私学も多く、メディアもそれを美談として取り上げる。ところが大阪桐蔭の３年生は夏が終わるまで引退はない。大阪大会中も、登録外の選手たちは逆転ベンチ入りを目指して競争に臨む。</p>



<p><span class="strongInContent">「毎回、甲子園のベンチ入りに一番頭を悩ませます」（大阪大会決勝、履正社戦後の西谷監督のコメント）</span></p>



<p>夏の大阪大会のベンチ入りメンバーは20人。甲子園では18人だ。今夏は大阪大会から４人が外れ、登録外だった左腕の青柳佳佑ら２人が甲子園のベンチに入った。この競争が常勝軍団を築く。</p>
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<p>春季大会は毎年、公式戦出場の機会が少なかった３年生や下級生を起用し、全体の底上げに充てる。期待の１年生は上級生のプレーを間近で目撃できるようにボールボーイ（今夏の甲子園からボールパーソンに名称変更）に起用する。大阪大会では両親がスリランカ人という期待の１年生大砲であるラマル・ギービン・ラタナヤケが務めていた。秋にはベンチ入りを果たしているかもしれない。</p>



<p>秋春夏の３冠の夢が潰えた日、西谷監督は、64人の部員をこう労った。</p>



<p><span class="strongInContent">「手前味噌ですがメンバーとメンバー外が共に（秋春夏の）連覇を目指し、毎日そればかりを考えてやってくれた。誇りに思っている。良いチームだった」</span></p>



<p>主将の星子天真（ほしこてんま）はスタンドに向かって、涙ながらにこう叫んだ。</p>



<p><span class="strongInContent">「ごめん！」</span></p>



<p>最近まで競争をしてきた仲間への謝罪だった。  </p>
<figure id="attachment_261897" aria-describedby="caption-attachment-261897" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="feb69916"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/05_550.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-261897" class="wp-caption-text">前田悠伍は２年生ながら事実上のエースだ。帽子にはムードメーカーの記録係が書いた「桐の神童」の文字が</figcaption></figure>
<figure id="attachment_261898" aria-describedby="caption-attachment-261898" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a5db3443"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/50_890.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-261898" class="wp-caption-text">今大会２本塁打を放った捕手の松尾汐恩（３年）。１年秋にショートからコンバートされ、ドラフト候補に成長</figcaption></figure>
<figure id="attachment_261900" aria-describedby="caption-attachment-261900" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f19d2e52"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/57_630.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-261900" class="wp-caption-text">春夏通算９回の全国制覇は歴代２位。大阪桐蔭の強さは、西谷監督のスカウト力と指導力に支えられている</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2022年9月9日号より</p>


柳川悠二

夏の甲子園で優勝候補大本命だった大阪桐蔭が準々決勝で下関国際に敗れた。しかし盤石の強さは今後もしばらく続くとみられる。選手スカウトからチーム作りまで西谷浩一監督は他の監督とどこが違うのか

最強軍団・大阪桐蔭まさかの敗退…それでも”一強状態”が続くワケ

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