元オウム真理教幹部・岡﨑一明死刑囚が描いた「贖罪の墨絵」 | FRIDAYデジタル

元オウム真理教幹部・岡﨑一明死刑囚が描いた「贖罪の墨絵」

「坂本弁護士一家殺害事件」実行犯 創作期間は20年。鉛筆や筆ペン、限られた画材で生み出された作品は300点以上 執行直前まで描き続けた

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死刑執行の約1ヵ月前に鉛筆や筆ペンを駆使して描いた『月下の鯉』。画号を「吼宇(こうう)」とし、身分を隠してコンクールにも出展した
死刑執行の約1ヵ月前に鉛筆や筆ペンを駆使して描いた『月下の鯉』。画号を「吼宇(こうう)」とし、身分を隠してコンクールにも出展した

「岡﨑に身内との付き合いはなく、生前入門したお寺の兄弟弟子の方が、死の間際まで彼と連絡を取っていました」

’18年7月26日、オウム真理教の元幹部、宮前一明(旧姓岡﨑)の死刑が執行された。警視庁と神奈川県警は、「坂本弁護士一家殺害事件」などの実行犯として、’95年に岡﨑を逮捕。その後、’98年に死刑を言い渡された岡﨑は、執行まで20年間の刑務所生活を送った。獄中では、贖罪のため多くの絵を描き、死刑囚の展覧会に出展。また、差し入れをくれた人へ絵を贈るなどしていた。冒頭で岡﨑の死刑執行直前の様子を語ったのは、遺品や絵画保存ボランティアの山田茜さんだ。’13年から死刑執行までの5年間、獄中の岡﨑とは手記のやり取りを通じて交流があったという。

「手紙は一通で16ページに及ぶこともありました。内容は自らの生い立ちや日常の雑記です。教団にいた頃や幼少期の記憶が夢に出てくることもあったと語っていました。麻原彰晃の三女、松本麗華のことは”リカちゃん”と呼んでいて、彼女のことは気にかけている様子でした。また、彼は手紙一枚一枚にページ数を書いて、刑務所の検閲で一部を抜かれないようにしていました。元々社交的な性格だったようで、贖罪の思いや自らの生い立ちを人に知ってもらいたい気持ちが強かったのだと思います。

自分が何か話しても、編集によって異なる内容になることがあります。彼はそれを嫌がって、後から加工できない絵画表現にたどり着いたと話していました。死刑確定前の’04年、臨済宗に入信すると、師事する住職と養子縁組を結び、苗字を『宮前』に改名しました。その後は、曼荼羅のようなイラストや、僧侶をモチーフとした精神世界を表現するような絵を熱心に描いていた印象があります」

死刑執行後、茜さんは岡﨑が入信していた寺の関係者から遺作と遺品を譲り受け、管理することとなった。

「実際に絵を受け取ってみると、墨絵だけでなくボールペンで描いたカラフルなイラストや、母への川柳をしたためた作品もありました。さらに、全く同じ構図の夫婦鶴の絵を70枚ほど描いていたことを知りました。岡﨑は絵を習ったことはなく、独学で描いていた。房の中では、彼が殺害した坂本弁護士と元信徒の田口修二さんの戒名が書かれた手作りのお札に、毎日手を合わせていたそうです。細かな絵を描く作業は、岡﨑にとって修行であり、被害者の方々への贖罪だったのではないでしょうか」

茜さんは現在、岡﨑の手記や遺品、絵画作品をネット上で公開する活動をしている。死刑は執行されたが、歴史に残る凶悪事件の実行犯が残した300点余りの作品は、彼の背負った罪と共にこれからも人々の目に触れ続ける。

獄中で臨済宗の住職を師と仰ぎ、’04年には師の養子となり、苗字を「岡﨑」から「宮前」に改名。教えに基づく曼荼羅のような模様の作品を多く残した
獄中で臨済宗の住職を師と仰ぎ、’04年には師の養子となり、苗字を「岡﨑」から「宮前」に改名。教えに基づく曼荼羅のような模様の作品を多く残した
岡﨑は、画材が制限される中、色紙に絵を描くことが多かった。この作品も白い色紙を紫に塗り、その上から赤いボールペンで模様が描き込まれている
岡﨑は、画材が制限される中、色紙に絵を描くことが多かった。この作品も白い色紙を紫に塗り、その上から赤いボールペンで模様が描き込まれている
岡﨑の手記と絵を手に取材を受ける茜さん。保管する作品には1m四方を超えるサイズのものもあるという
岡﨑の手記と絵を手に取材を受ける茜さん。保管する作品には1m四方を超えるサイズのものもあるという
岡﨑が愛用していた茶色の作務衣。これを着て岡﨑は死刑執行19日前の’18年7月7日に最後の作品を描き上げた
岡﨑が愛用していた茶色の作務衣。これを着て岡﨑は死刑執行19日前の’18年7月7日に最後の作品を描き上げた

『FRIDAY』2022年9月9日号より

  • PHOTO足立百合

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