「山口組顧問弁護士」が”ユーチューバーデビュー”した納得の理由 | FRIDAYデジタル

「山口組顧問弁護士」が”ユーチューバーデビュー”した納得の理由

山之内幸夫 が明かす ’84 年に就任して以来、ヒットマンをはじめ、 宅見勝・元山口組若頭、盛力健児・盛力会会長ら 数々の大物ヤクザの弁護を担当

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まさかの人物が、まさかのユーチューバーデビューをはたした。

渡邉芳則・五代目山口組組長(左から二人目)、宅見勝若頭(右から二人目)と撮った記念撮影。左端は映画プロデューサーの後藤浩滋氏、右端が山之内氏 写真提供:山之内幸夫氏
渡邉芳則・五代目山口組組長(左から二人目)、宅見勝若頭(右から二人目)と撮った記念撮影。左端は映画プロデューサーの後藤浩滋氏、右端が山之内氏 写真提供:山之内幸夫氏

山之内幸夫氏(76)。山口組顧問弁護士として、約40年にわたって山口組に関わってきた人物だ。山口組の内幕を描いたベストセラー『悲しきヒットマン』(’88年)の著者としても知られる。

7月末にチャンネルを開設すると瞬く間に登録者数1万人を突破。シニアユーチューバーとしては異例の人気である。山之内氏が穏やかな口調で語る。

「もともとYouTubeは好きだったんです。温泉や旅、株などの動画をよく見ておりました。そんなとき、久しぶりにあった友人から『そんな好きなら山口組のことでもしゃべったらええやん』と勧められたのがきっかけです。山口組の面々も見ているようで、『先生、何してんねん』とみんなびっくりしていますよ」

’46年、香川県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、’72年に司法試験に合格して民事専門の弁護士事務所に勤めた。自動車保険の賠償交渉を行う中で、架空請求を「しのぎ」としているヤクザと関わるようになった。やがて、山之内氏の一歩も引かない姿勢を見て、彼らから刑事弁護の依頼が舞い込むようになる。’81年頃に山口組本部長の小田秀臣組長の顧問となり、’84年頃、宅見勝若頭補佐の推挙で「山口組顧問弁護士」となった。

「神戸市灘区の本部など、山口組はかなりの数の不動産を所有しています。当然、組名義では所有できませんから、2つの会社を設立して不動産管理をしていた。その2つの会社の顧問を私がやっていたから、『山口組顧問弁護士』と呼ばれたのです。顧問料は両社とも月々10万円、合計20万円でした。ヒットマンの弁護はだいたい所属の組から依頼されますね。すべての弁護を私が担当するわけではありませんが、方針についてのセカンドオピニオンはよく求められました」

ヤクザ史に残る大事件に関連する、数々の大物たちの弁護も担当してきた。’78年7月、田岡一雄・三代目山口組組長が京都のクラブ『ベラミ』で銃撃を受けた事件では、報復に出た盛力健児・盛力会会長の弁護人を務めた。

「当時の警察の取り調べは違法行為が当たり前でした。『特攻隊』と呼ばれる被疑者に暴力を振るうことだけを仕事にしている奴や、下半身をまさぐる変態的イジメを特技とする者までいました」

苛烈な取り調べに、盛力会長は報復がトップからの指示だったと認めそうになった。口を割らぬため、会長は両手で下顎を支え、肘を机に打ち付けて舌を嚙み切ったと、山之内氏は著書に記している。

「報復の手柄は刑事責任を受けてこその勲章です。親を懲役に引きずり込んでしまった大失敗の場合は、処分が下されることもある」

’84年5月に宅見若頭補佐が逮捕され、同じくベラミ事件で報復を指示した疑いを追及された。このときの山之内氏の働きは、日本のヤクザ史を大きく動かした。

「『山口組の金庫番』というイメージの強い宅見さんですが、実際は情に厚い人でした。逮捕後、面会に行くと『立派な仕事をしてくれた子分のために逃げる気はありません』と、実行犯との関わりを認めたと言うのです。幸いにもまだ調書には署名していないとのことだったので、私は『必ず容疑は潰して見せます! 人生が終わるのは早すぎます!』と必死に説得し、宅見さんを翻意させました。あのまま認めていれば、宅見さんは長期の懲役刑になり、後の五代目体制で若頭になることもなかったでしょう」

山之内氏は’15年に建造物損壊教唆の罪で有罪判決を受け、弁護士資格を失った。それでも、「堂々と元山口組顧問弁護士と名乗れるようになり、むしろ気楽です」と笑う。YouTubeでは、山口組を中心にヤクザの実像をしっかりと伝えていくという。動画では、活発化してきた山口組の分裂抗争についても独自の視点から解説をしている。

「’15年の分裂直後は、神戸山口組への同情もあって、彼らを優勢と見る向きもあった。しかし現実は、六代目山口組の圧倒的な力・カネ・人員の前に神戸山口組は返しすらできていません。抗争終結は神戸山口組の解散と井上邦雄組長の引退が絶対条件。もはやそのタイミングがいつくるか、という最終段階に入っていると考えられます」

元山口組顧問弁護士がYouTubeで自ら情報発信……。つくづく、すごい時代がやってきたものである。

YouTubeの撮影をする山之内氏。チャンネル開設からわずか1ヵ月で、早くも登録者数は2万人に迫る勢いだ
YouTubeの撮影をする山之内氏。チャンネル開設からわずか1ヵ月で、早くも登録者数は2万人に迫る勢いだ

「FRIDAY」2022年9月16日号より

  • 写真山之内幸夫氏提供(1枚目) 加藤 慶(2枚目)

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