ユーチューバー宅建太郎が「日本一ヤクザに詳しい素人」になるまで

いま、日本で一番ヤクザに詳しい”素人”と言って差し支えないだろう。ユーチューバー・宅建太郎氏（年齢非公表）が発信する「ヤクザ情報」は、それほどディープなものばかりだ。

たとえば８月16日には、〈神戸山口組！「直参」倍増人事〉と題した動画で神戸山口組の内部事情を詳報。かと思えば翌17日には、〈情報　住吉会　新体制！〉という動画で、今度は住吉会の動向について発信している。

「私のチャンネルは『報道』ではありません。私のもとに入ってきた情報や噂を取り上げて感想を述べたり、考察したりする、エンタメバラエティーチャンネルです。正しい情報を視聴者の皆さんにお伝えすることは、目的としてないんですね。だからこそ、私は動画のなかで必ず『裏は取っていません』と伝えています」

そう不敵に笑う宅建氏の登録者数は、４万９７００人（『宅建太郎ＣＨ』、８月23日時点）。４年前にチャンネルを開設してからジワジワと数字を伸ばし、いまではヤクザ好きはもちろん、本職の方々からも熱い注目を浴びるまでになっている。

そんな宅建氏だが、実はユーチューバーになった当初から「ヤクザ動画」を上げていたわけではない。初期の頃は、その名のとおり宅建試験に関する真面目な動画を投稿していたという。

「もともと私は、早稲田セミナーという予備校で宅建の講師をしていたんですよ。大成建設や清水建設などから依頼されて、試験対策の講習会なんかもやっていました。講師時代に『宅建太郎』というビジネスネームを名乗っており、それを今も使っている形です」

約20年予備校に勤務した後、不動産会社に転職。退職後の’18年から、本格的にユーチューバーとして活動を始めた。

「最初はぜんぜん再生数が伸びませんでした。そこで、東京・五反田の地面師事件で話題になった土地を取り上げてみたんです。私が自分でカメラを回し、不動産のプロとしての視点から解説動画を投稿すると、再生数がぐっと伸びた。『みんなが興味のあることをやれば再生してもらえるんだ』と気づきましたね」

その後、『NGT48』の騒動や日大アメフト部による「殺人タックル」問題など、まったく違うジャンルも取り上げるようになっていった。ヤクザ動画を投稿するようになったのも、「需要があるかも」という軽い気持ちからだったという。

「ノンフィクションやルポルタージュが好きだったので、一般の方よりは知識があったと思います。それで昔のヤクザを紹介するような動画を上げてみたら、毎回毎回、かなり再生数が伸びました。動画を投稿していくなかで、元山口組系・義竜会会長の竹垣悟さんと知り合う機会をいただき、そこから人脈も広がっていきました」

いまでは、ＳＮＳを通じて現役のヤクザから直接「会いたい」と連絡が来ることもあるという宅建氏。ヤクザ情報の収集にあたり、確固たるネットワークも作り上げているようだ。

「ツイッターのＤＭやＬＩＮＥで、情報を送ってくれる有志の視聴者さんが７～８人います。なかには、山口組内の幹部としか思えないことを知っている方もいましたね（笑）」

それにしても、素人がヤクザ情報を発信することに恐怖心はないのだろうか。

「いまのところ危害を加えられたことはありませんが、いつか殺されるかもしれません。まあ、射殺されたら２～３日ネットが盛り上がるでしょうし、それはそれでいいかな、と（笑）。最初の頃は『素人が何口出しとんねんボケ』とかコメントが来ることもありましたが、いまではそれもなくなりました。むしろ本職の方からも『宅建さん詳しいよね』と。ただ、私はあくまでエンタメユーチューバーです。ヤクザに限らず、今後も皆さんが興味を持ってくれそうな内容を投稿していくつもりです」

動画は毎日投稿しており、現在の稼ぎは月に50万円ほど。今後は５万人、10万人と登録者数を伸ばしていきたいという。登録者数100万人を超える人気ユーチューバーもいいが、宅建氏のような異色の存在を見つけることも、ＹｏｕＴｕｂｅの楽しみ方ではないだろうか。

右上：元山口組系・竹垣悟氏とのコラボ。他にも、元山口組顧問弁護士や元刑事などさまざまな人物とコラボしている 左上：今年２月１日に公開された「司忍組長傘寿お誕生日会」に関する情報動画。写真入りで内容を詳しく伝えた 右下：今年８月20日に公開した動画。メディアではほとんど報じられていないが、チャンネルでは独自情報を発信した 左下：業界に出回った「破門状」や「絶縁状」もいち早く入手し、視聴者に紹介。出された背景などを解説している

『FRIDAY』2022年9月9日号より