「サレ妻」の復讐劇『極限夫婦』…夫婦で不倫漫画を描き続けるワケ
『極限夫婦』を公開中!
「結婚には3つのスキルが必要」…

今、漫画アプリのピッコマで独占配信中の不倫漫画『極限夫婦』が人気だ。サレ妻の葛藤と予想を裏切るスカッとした展開で、多くの女性に響いている。手掛けるのは、妻・きづきあきらと夫・サトウナンキによる漫画ユニット。なぜ、夫婦で不倫といった背徳的なテーマの作品を描き続けているのか? 不倫漫画を描き続ける中で見えてきたものとは?
はじまりは別媒体で描いたセックスレスがテーマの漫画

――『極限夫婦』が生まれたきっかけは何だったんでしょうか?
サトウナンキ(以下、サトウ):元は別の雑誌で描いたセックスレスがテーマの『レス~限界夫婦~』という作品です。その後、もっと尖ってて、読んだ後でスッキリするような前・中・後編のオムニバス作品を双葉社の『月刊アクション』で描こうということになり、『極限夫婦』が生まれました。
――作品作りの際に、ヒントにしていることはありますか?
きづきあきら(以下、きづき):ニュースや週刊誌なども見ますが、そもそも私“ツイ廃”なんです。旦那さんに浮気をされている、いわゆるサレ妻さんがたくさんいらっしゃって、旦那さんの悪口や悩みを日々呟かれています。中にはファンになってしまったサレ妻さんもいたりして。ニュースなんかで社会問題になっていたりすることと、みなさんが実際に苦しんでいる声をあわせて理解を深めながら、ヒントをもらっています。
――漫画を描く時の役割分担と流れは?
サトウ:まず担当編集と三人で打合せした後、持ち帰って二人でさらに詳細を話し合ってから、彼女がネームに起こします。それを僕がチェックして、保留されたセリフを入れたり、修正案を反映したりして完成させます。それを担当編集に見てもらい、修正が済んだら作画作業に入ります。彼女が線画を描き、二人でトーンを貼ったりベタを塗ったり処理をして完成させる、という流れです。
――『極限夫婦』は展開が速いですし、旦那さんの発言にヒドいと思うことも多いです……。
きづき:ネームを描く時に、私の方で大体のセリフは考えて入れるんですが、男性のセリフって難しいんですよね。キメのセリフは「ここで狡猾に言いくるめるようなセリフ」とかフキダシに書いておいて、彼に渡してしまうことが多いんです(笑)。そうすると、「よくこんなこと思いつくな!」って思うくらいのヒドいセリフが入って返ってくるんです。

サトウ:(苦笑)。僕たちは高校時代からの付き合いなんですが、当時は、結婚したら女は家庭に入るもんだ、みたいないわゆる昭和の価値観が当たり前で、僕もそんな感じでした。付き合ってる中で、いろいろ揉めたりしながら少しずつ男女平等を理解していったので、亭主関白で自分優先の男性だったらこう言うだろうなっていうのが、何となく想像つくんです。Twitterで、「旦那が昭和の古い考えでムカつく」という感想を見ると、ちゃんと書けてるのかなって嬉しくなりますね。
不倫漫画を描いていて気づいた夫婦「3つのスキル」
――不倫がテーマの作品を描く中で、何か気づいたことはありますか?
きづき:実はつい先日、「男女が付き合うためのスキルとして、恋愛するスキルと、夫婦でいるスキルと、子育てするスキルの3タイプがあるね」って話していたんです。ぜんぜん違うスキルなのに、全てを求められるところに結婚の難しさがあると思うんです。恋愛して結婚したのにセックスレスになっちゃったり、子どもが生まれてから子育てに協力してくれないとわかったり……。
サトウ:でも、3つのスキルを最初から持ってる相手に出会うのは難しいですよね。かと言って、結婚して気に入らなくても、別れるのはまた大変です。話し合いながら、スキルを成長させていけたらいいんですが、女性は経済的に自立するのが難しい環境に置かれがちなので、対等に話し合うのが難しいことが多いです。
――成長でいうと、もしかしたらお二人がいいお手本なのかもしれませんね。
きづき:そんなイイものではないですよ(笑)。
サトウ:普通に揉めます(笑)。一緒に漫画を描きはじめた頃は、ダメ出しでケンカになることもしょっちゅうでした(苦笑)。でも仕事なので仕方なく「叩き台を二人で作っている」と割り切ったり、言い方を工夫したりして、何とか20年以上一緒にやって来られました。僕たちは夫婦だけどビジネスパートナーでもあるんで、お互い意見を言い合って、譲歩するところは譲歩しながらやってきたのが良かったのかもしれませんね。
きづき:言い合いやケンカを乗り越えて今があるので、これから新しく別の人とくっついて、同じことを繰り返したくないというのもありますね(苦笑)。
『極限夫婦』は悪い見本でいい
――ビジネスパートナーではない夫婦が成長する秘訣はあるんでしょうか?
きづき:漫画の中では、どの旦那さんにも一度はチャンスを与えるようにしています。
サトウ:でも、それに気づかず自分勝手に行動するから、みんな復讐されてしまうという(笑)。夫婦はある意味、人生のビジネスパートナーだと思うんです。家の中でもお互いに意見を言い合ったり、譲歩したりできる関係を築いていく工夫は必要かもしれませんね。

――サレ妻さんや旦那さんに不満を抱えている奥さんは、どうしたらいいのでしょうか?
きづき:漫画では離婚を突きつけて終わりますが、そのためのお膳立てが毎回大変です。Twitterのサレ妻さんたちもそうですが、離婚したいと思っていても、経済的に自立できなかったり、親権で揉めたり、女性の方が不利な立場になりがちなので、そう簡単には離婚できないんですよね。いろいろ不満はあっても我慢するしかない女性たちが『極限夫婦』を読んで、少しでもスカッとしてもらえたら嬉しいですね。
サトウ:あとは、漫画の中から旦那さんに反論するセリフや方法、考え方みたいなものを見つけてもらうのもいいかなと思います。もちろん旦那さんにも『極限夫婦』を読んでいただきたいです。そして悪い見本にしてもらって、自分たちのことを振り返るきっかけにしてもらいたいですね。

取材・文:安倍川モチ子
WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。