橋本愛『家庭教師のトラコ』で魅せる“怒り”の演技に感じた成長力 | FRIDAYデジタル

橋本愛『家庭教師のトラコ』で魅せる“怒り”の演技に感じた成長力

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ドラマ『家庭教師のトラコ』で女優として成長した姿をみせた橋本愛
ドラマ『家庭教師のトラコ』で女優として成長した姿をみせた橋本愛

女優・橋本愛が主演する水曜ドラマ『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)もいよいよ佳境だ。第8話が9月7日に放送され、橋本演じるスーパーキャラクター・トラコ(橋本)がベールを脱いだ。

このドラマは、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の大ヒットで知られる脚本家・遊川和彦のオリジナル作品。合格率100%を誇る家庭教師・根津寅子が、年齢も抱えている問題も異なる3人の子供とその母親の問題を解決する個別指導式ヒューマンドラマである。

「今作は現実にはいないスーパーキャラの出現でまわりの人達が変わっていく、『家政婦のミタ』の系譜に連なる作品。第7話では、第6話まで築き上げて来た3つの家族の問題を解決するフォーマットをぶち壊し、いよいよ核心に触れる最終章に突入。

入院するベットの上で『私は世界を変えたいの』から始まる野望とも呼ぶべき“壮大な夢”を語る橋本の7分間に及ぶ熱演ぶりには、度肝を抜かれました」(制作会社プロデューサー)

特に『ありえない』と反論する福多(中村蒼)に激昂して

「私大っ嫌い!! 無理とか、ありえないって言葉。やってみなきゃわからないじゃん。それが人間としてやるべきことじゃないの」

と言って、怒りをあらわにするトラコ。このシーンこそ、“怒りこそドラマを生み出す最大の力”と日頃から公言してはばからない脚本家・遊川和彦の真骨頂を見た思い。橋本は、その期待に見事に応えている。

「橋本が湯川作品に出演するのは、’19年『同期のサクラ』、’20年『35歳の少女』(共に日本テレビ系)に続き、3作目。全作品を手掛けてきた大平太プロデューサーは、『とてもクールなイメージがありますが、お芝居になると途端にスイッチが入る。そういう俳優さんは多いのですが、その中でも群を抜いている』

『いつかこの女優を主演にしたドラマを創りたいと湯川氏と話していた』とコメント。その湯川氏も『橋本愛は今ぼく達の想像以上のスピードで成長している気がしてなりません』と絶賛しています」(ワイドショー関係者)

『同期のサクラ』の第1話では、空気を読まない発言を繰り返す主人公サクラ(高畑充希)とケンカをする場面が登場。その時、橋本が見せる“ブチ切れ演技”、そしてまるで射すくめるような“目力”にも注目が集まった。

しかし今作の橋本は、さらなる進化を遂げている。

「第8話では、福多が里親に自分を選んでもらうためにトラコの自転車のブレーキを切り、事故に遭わせたと告白。トラコは福多を突き飛ばし馬乗りになり、『ふざけんなよ。私は今までずっとあきらめてきたんだよ。私なんて誰も愛してくれないって。全部お前のせいだったのか』と、顔を紅潮させ怒りをぶつけた。演じる橋本の姿には鬼気迫るものがありました」(制作会社ディレクター)

しかしさらなる見せ場が、その後にやってくる。我に帰ったトラコが『まいっか』と呟き、悟ったように『もうさぁ。あんたが何を言っても、何にも聞こえないんだよね』と突き放す。この一言で、改めてトラコの心に潜む闇の深さに気づかされた人も多いはずだ。

しかし、思い起こせば第7話。ベットに横たわるトラコは、深い闇に沈んだ心の内を我々にこう告げている。

「ベットから起き上がるトラコが、福多の制止を振り切って『学歴も資格もコネもカネもない私はこうするしかないの。自分の頭と未来だけを信じて生きていくしかない』と自身の思いを口にする。

そして『助けてくれる人なんか、誰もいないんだろ』と言う福多に『1人なら慣れてる。クリスマスも正月も誕生日も、いじめられても風邪引いても地震が起きても、いつもひとりだったから』と呟く。この時トラコが見せる救いようのない目には、凍りつくほど空虚なまなざしが宿っていました」(前出・制作会社ディレクター)

“怒り”をあらわにした後に見せるゾッとするような空虚な眼差しこそ、今作で橋本が見せる新境地なのかもしれない。

しかし意外にも、橋本は“怒り”とは無縁な人生を生きてきた。

「橋本自身は『人に対してまったく怒らないタイプ』であり、今回の役柄を演じる際『普段、怒りという感情を遠ざけて生きている』ため、『最初は、体が中々簡単にはそこにたどり着けなくて試行錯誤している』と、“怒り”の演技の難しさについて話しています」(前出・ワイドショー関係者)

湯川が脚本を手掛けた100%愛を信じる『過保護のカホコ』(日本テレビ系)のヒロイン・カホコ(高畑充希)とは、真逆のトラコ。“怒りの権化”と化したトラコの心を鎮めるのは、時折トラコの脳裏に浮かび上がる母の存在しかもはやない。

「ごめんね」の一言を残して、トラコを捨てたラスボスとモンスターと化したトラコの対決はあるのか。橋本愛の演技と共に、最終回へ向けて期待は高まるばかりだ――。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO近藤裕介

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