死亡事故を阻止する「駐車場パトロール部隊」に密着!
密着!繰り返されるパチンコ店での「車内子ども放置」を防げ 「開店2時間前から稼働」 「保護者を捜索」
「現場のスタッフは1日平均3万歩になります。でも『疲れた』とは言ってられない。人の命がかかっていますから」
そう明かすのは埼玉県の大型遊技施設『SAP草加』で駐車場パトロール業務を統括する尾上正明氏だ。ボウリング場、飲食店、パチンコ、スロットなどを楽しめる総合アミューズメントプラザだ。

毎年夏になると、子どもが親の都合でさまざまな場所で車内に放置されたまま熱中症などで亡くなる悲しいニュースが流れる。パチンコ店では子どもを乗せた車の入場自体が禁じられているのに「車内子ども放置」はなくならない。ただ、「全日本遊技事業協同組合連合会」が’05年からはじめた未然防止活動により、最近5年間で多いときの3分の1まで減った。そこで「SAP草加」の「駐車場パトロール部隊」に密着した。
営業開始は午前10時だが、2時間前の8時から懐中電灯をもって巡回がはじまる。車内に子どもがいないかを確認し、発見した場合は保護者を探し出し、車内放置の危険性を説き、退店を促す。子どもの状態が危険だとわかれば、消防署や警察にも通報。一刻を争う場合、店舗の判断で窓ガラスを割って救出できるよう、消防署の許可も得ているという。
「週末には最大900台が停まる駐車場はいっぱいになり、しかも入れ替わるので1000台近くを見る。すべてを回ると、二人で1時間はかかり、しかも3〜4回は回る。指導する私でさえ1日1万5000歩ですから、その倍は歩かないとしっかり確認できません」(尾上氏)
警備会社のスタッフに交代する午後4時まで勤務する昼間のスタッフが『SAP草加』で以前発生した「車内子ども放置」の現場を発見した。
「5〜6歳の子が車内にいたのですが、いくら窓を叩いても開けてくれない。すぐに車種とナンバーを控えて何人かで手分けして店内を1席ずつ回り、保護者を探し出しました。パチンコなどに夢中になると、場内放送に気づかないんです。
数年前にはウチの駐車場の5階から飛び降りようとした女性を阻止したこともあり、毎日同じことの繰り返しでも『命を預かる』緊張感はいつもあるんです」
今日も開店前から、事故を未然に防ぐために駐車場を回り続ける。

『FRIDAY』2022年9月23日号より
取材・文:加藤久美子PHOTO:加藤博人