Tani Yuuki「ポジティブな涙を生む曲を作っていきたい」

「今までの人生は挫折の連続でした。でもそのたびに音楽が救ってくれた。次は僕が救う側になりたいんです」

そう語るのは、シンガーソングライターのＴａｎｉ Ｙｕｕｋｉ（23）だ。’20年５月にデビューすると、１年後には月９ドラマ『ナイト・ドクター』（フジテレビ系）の主題歌を担当する５人のうちの一人に選出。

昨年５月にリリースした『Ｗ／Ｘ／Ｙ』はＴｉｋＴоｋの総再生数が9.9億回を突破するなど、若者を中心に人気を集めている。現在の手応えを聞くと、はにかみながら今の想いを明かした。

「純粋にたくさんの人に聴いてもらえたのが嬉しかったです。自分の根拠のない自信を肯定された気がして、家族や親戚にも胸を張って会えるようになった（笑）。

ただ、まだまだ悔しいことばかりです。よく比較される優里くん（28・シンガーソングライター）や、憧れている『ＲＡＤＷＩＭＰＳ』の野田洋次郎さん（37）には全然及ばない。これからが勝負ですね」

Ｚ世代が〝泣ける〟と口を揃えるＴａｎｉの曲。作詞の時には意識していることがある。

「今でも忘れられない思い出があるんです。高校時代に同級生の前で歌う機会があったんですが、突然泣いちゃった子がいたんですよ。理由を聞くと、『自分の人生と重なる部分があって、歌詞がその時は分からなかった思いを言語化してくれて、ストンと胸に落ちた。ポジティブな涙だよ』って言ってくれたんです。

僕も昔、親とうまくいっていなかった時、『ゆず』や『ドリカム』を聴いては、歌詞が気持ちを代弁してくれて、仲直りできたことがあって。だから自分が作詞するときは、聞き手の気持ちに寄り添える言葉選びを意識していますね」

’19年に20歳で専門学校を卒業して、本格的に音楽の世界に飛びこんだ。Ｔａｎｉはこれまでの道のりを「挫折ばかりだった」と語る。楽器に初めて触れたのは中学生時代の病床だった。

「中学２年生の時に病気で学校に行けなくなってしまい、家族とも壁を作って塞(ふさ)ぎ込んだ時期があるんです。そんな時に祖父からストレス発散のため渡されたのがアコギでした。弾き語りの”ひ”の字も分からなかった中、楽器をイジるところから音楽人生が始まったんです」

本格的に音楽活動を始めたのは意外な人物への反骨心だった。

「高校時代にすごい好きだった彼女がいて、その親御さんが、音楽で生計を立てている方だったんです。その前で歌う機会があって、ド緊張しながら中島みゆきさんの『糸』を歌ったんですね。そしたら『人の曲を歌っていた割に良い声ではあったよ』と言われて。遠回しにオリジナル曲が無いと駄目だよと言われた気がして、『やってやるよ！』って作り出したのが最初です（笑）。その子とはお別れしちゃいましたけど、人生において大きな出来事でしたし、淡い思い出ですね」

病気に失恋と数々の経験を乗り越えてきたＴａｎｉ。そのたびに音楽に救われてきたと語り、次は恩返しをする番だと志す彼に、今後の目標について聞いた。

「一番はもちろん『ポジティブな涙』を生む曲をこれからも作っていきたいです。その上で、アニメソングにも挑戦してみたい。小さい頃、家から出られなくて、その時によく観ていたのが『ドラえもん』だったのでアニメの主題歌を担当することが憧れなんです。大人になった今でもそれだけは変わらないですね」

新たな目標を胸に、挑戦は続く。

『FRIDAY』2022年9月30日・10月7日号より