<figure id="attachment_265583" aria-describedby="caption-attachment-265583" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b1459e35"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/48dd286036564044db62d80b64c03641.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-265583" class="wp-caption-text">新横浜駅に現れた司忍組長と髙山清司若頭（撮影：濱﨑慎治）</figcaption></figure>
<h3>「カネ、カネ、カネ」</h3>
<p>国内最大の暴力団組織「６代目山口組」が2015年８月27日に分裂し、離脱したグループが結成した「神戸山口組」との対立抗争は７年が経過した。神戸山口組の旗揚げ時の構成員は約2800人だったことが警察当局によって確認されていたが、その後、同組ではさらに分裂が繰り返され、2021年末には約510人へと減少した。さらに今年８月になって有力傘下組織「侠友会」の離脱が新たに判明。対立抗争は８年目に突入するなか神戸山口組はさらに組織が縮小する傾向が強まっている。</p>
<p>神戸山口組は、６代目山口組を脱退した山健組、宅見組、侠友会、正木組、池田組の５組織を中核とする13組織で結成された。分裂の主な原因はカネだった。6代目山口組では、「直参」と呼ばれる直系組長が毎月、百数十万円の会費を納めていたほか6代目山口組組長の司忍の誕生日や盆暮れに直参が分担して１億円や5000万円が贈られていた。</p>
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<p>公然と反旗を翻した行為に対して、6代目山口組は神戸山口組組長に就任した井上邦雄、宅見組組長の入江禎、侠友会会長の寺岡修ら５人を「絶縁」としその他を破門などの処分とした。暴力団社会には絶縁や破門、除籍などの処分があるが、復帰の余地を残す破門や除籍と違い、絶縁は暴力団社会からの永久追放を意味した。敵対関係となったのは決定的だった。</p>
<p>ところが、神戸山口組でもまたもやカネが問題となった。組織犯罪対策を担ってきた警察当局の幹部は、<span class="strongInContent">「カネのかからない組織にするということで神戸山口組は結成されたが、またもやカネの問題が持ち上がった。トラブルの原因はカネだ」</span>と振り返る。</p>
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<p>神戸山口組最高幹部だった織田絆誠を代表として一部グループが離脱して2017年４月、「任侠団体山口組」（現・絆会）を結成。異例の記者会見を開き、上層部からカネを吸い上げられていたことを暴露して痛烈に批判。神戸山口組は即座に織田を絶縁とした。最初の分裂だった。</p>
<h3>警察幹部「抗争は最終局面と言って差し支えない」</h3>
<p>分裂はこれにとどまらず、神戸山口組の中核組織であった「山健組」が2020年８月、離脱を表明。７月には豊富な資金力で知られた「池田組」も脱退。神戸山口組は大きく勢力を減少させた。当時を知る別の警察当局の幹部は<span class="strongInContent">「山健組と池田組の離脱は、（神戸山口組組長の）井上が返し（報復）を許さなかったため。返しをさせなかった理由は分からないが…。山健組と池田組はヤクザとして納得がいかず、離脱したのだろう」</span>と解説する。</p>
<p>警察当局の幹部がここで指摘した「返しを許さなかった」とは、主に３つの事件を指した。山健組については、2019年４月、山健組のナンバー２、若頭の与則和が刃物で刺され重傷を負った事件だった。池田組では2016年５月に若頭の高木昇が、2020年５月にも若頭の前谷祐一郎が銃撃された。高木は死亡、前谷は重傷を負った。池田組は２代続けて組織の要である若頭が銃撃されても報復はなかった。</p>
<p>山健組では組長、中田浩司が自らヒットマンとして6代目山口組弘道会系の幹部を銃撃したが、事件直後、中田は井上から叱責されたという。こうした経緯を経て、山健組は2021年９月に6代目山口組に復帰、池田組は独立組織として2021年11月に指定暴力団に指定された。神戸山口組は山健組組長の中田を除籍処分としたが、離脱は大きな痛手だった。</p>
<p>神戸山口組の2021年末時点での構成員は約510人だったことは前述したが、同時点での6代目山口組は約4000人となった。山健組の加入などで前年の約3800人から増加していた。前出の警察当局の幹部は、<span class="strongInContent">「構成員数で８対１となっており、抗争は最終局面と言っても差し支えないのではないか」</span>との考えを示している。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="なにが「非常に珍しい」のか？"></div>
<h3>指定暴力団幹部が「非常に珍しい」と語ったこと</h3>
<p>こうした経緯をたどるなか、今年８月になって、侠友会会長の寺岡が神戸山口組から脱退を表明したのだった。この警察当局の幹部は、<span class="strongInContent">「寺岡は神戸山口組組長の井上を引退させることで事態の収束を水面下で図っていたが、井上が聞き入れなかったようだ」</span>とも指摘する。</p>
<p>神戸山口組は今年８月、離脱した寺岡を絶縁とした。寺岡は2015年８月に６代目山口組を離脱した後に絶縁となっていたため、２回目の絶縁となった。これまでの経緯を注視してきた首都圏に拠点を構える指定暴力団幹部は、<span class="strongInContent">「２度も絶縁となるのは聞いたことがない。非常に珍しい」</span>との感想を述べる。そのうえで、次のような疑問を投げかける。</p>
<p><span class="strongInContent">「任侠団体山口組代表の織田らを絶縁にしたのは分かる。その後、途中で脱退した山健組組長の中田は除籍という比較的軽い処分だった。しかし、分裂後に７年にわたって神戸山口組の井上に付いて来て事態の収拾に向けて活動していた寺岡を今になって絶縁とはどういうことだろうか」</span></p>
<p>正木組はすでに解散しているため、神戸山口組旗揚げ時の中核の５組織のうち残っているのは宅見組だけになった。ただ、９月に入り神戸山口組と池田組、絆会がそれぞれが独立を保った形で「連合体」となることが決定した。それでも構成員数では6代目山口組が圧倒的に優勢で分裂問題は最終局面と言える。ただ、収束にはもう少し時間が必要となりそうだ。（文中敬称略、一部の肩書は当時）</p>


ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』（文藝春秋）

尾島正洋

濱﨑慎治

新横浜駅に現れた司忍組長と髙山清司若頭（撮影：濱﨑慎治） 「カネ、カネ、カネ」 国内最大の暴力団組織「６代目山口組」が2015年８月27日に分裂し、離脱したグループが結成した「神戸山口組」との対立抗争

ついに”最終局面”…「山口組分裂抗争」水面下で今起きていること

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