<figure id="attachment_265976" aria-describedby="caption-attachment-265976" style="width: 379px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dbc8b73b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde373.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-265976" class="wp-caption-text">『ワンコイン』の資料に掲載されているイグナトバ容疑者の写真。全世界から莫大なカネを集め、「仮想通貨の女王」と呼ばれていた</figcaption></figure>
「会場にイグナトバ博士のビデオメッセージが流れた瞬間、歓声や拍手が巻き起こり、中には涙ぐむ人までいました。あまりの熱狂ぶりに唖然としていると、周囲の人から『あの人は凄い人なのよ。どうして拍手しないの！』と怒鳴られたのを覚えています。投資セミナーというより、何かカルト宗教に近いような印象を受けました。とにかく異常な雰囲気でしたね」
仮想通貨『ワンコイン』の決起集会に参加した沖縄在住の主婦・Ａ子さん（40代女性）は当時の様子をそう振り返る。
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今年６月、米連邦捜査局（ＦＢＩ）はルジャ・イグナトバ容疑者を「最重要指名手配犯」のリストに加えたと発表した。「最重要指名手配犯」になっているのは、カルテルのボスや凶悪殺人犯などわずか10人のみ。そのうちの一人に加えられたイグナトバ容疑者は「クリプトクイーン（仮想通貨の女王）」と呼ばれ、仮想通貨を道具に世界各地で悪質なマルチ商法を展開。「史上最大の仮想通貨詐欺」とＦＢＩに言わしめるほどの莫大なカネを集めた。
「ブルガリア出身のイグナトバ容疑者は、自身が生み出した『ワンコイン』という仮想通貨を使って、’14年頃から世界各地で投資者を募っていました。『ワンコイン』はビットコインに次ぐ仮想通貨という触れ込みでしたが、蓋を開けてみれば運用の形跡はなし。ただのマルチ商法というのが実態でした。
〝史上最大〟と呼ばれるのはその規模です。ワンコインには世界から300万人が投資し、被害総額は４８００億円を超えると推定されています。ＦＢＩは最大10万㌦（約１４００万円）の懸賞金をかけてイグナトバ容疑者の行方を追っています」（全国紙ニューヨーク支局記者）
イグナトバ容疑者は&#8217;17年10月に捜査が始まった事実に気づき、ブルガリアからギリシャ行きの航空機に乗った後、行方をくらましたとされる。逃亡に際し持ち出した現金は、少なくとも５億㌦（約700億円）に及ぶという。
世界をまたにかけて詐欺を働いてきた女王・イグナトバ容疑者。実は彼女は、日本にも入り込んでいた。冒頭のＡ子さんもまた『ワンコイン』に投資をしてしまった一人だ。
<div data-friday-nextpage-lead="考える暇もないほどの強烈な勧誘"></div>
『ワンコイン』はいかにして広がり、被害を生み出したのか。Ａ子さんがその巧妙な手口を証言する。
「『ワンコイン』の存在を知ったのは’14年頃です。地元・沖縄の友人に『無料だから』と誘われて、ホテルのガーデンパーティーに参加したのがきっかけでした。ホテルの庭にはバーベキュー用の高級なお肉など、とにかく豪華なバイキングがずらりと並んでいました」
当日まで『ワンコイン』については一切聞かされていなかったＡ子さんだったが、パーティー開始直後から異変を感じ取っていた。
「私たちのテーブルにはないのに、隣には高級なシャンパンが置かれていたりして、何か変だなとは思っていました。そしてパーティが始まってしばらくすると、突然、『表彰式』が始まったんです。『●●さんが達成されました！』とアナウンスされ、名指しされた人はルイ・ヴィトンなどのブランド品を受け取ったりしていました。意味もわからず、私はただ呆然とその様子を眺めていました」
違和感はあったものの、この日は純粋にパーティーを楽しんで帰宅したＡ子さん。しかし、１週間もすると猛烈な勧誘を受けることになる。
「知り合いから『セミナーがあるから来ないか』と言われ、パーティーでお世話になったという後ろめたさもあり、断り切れずに参加しました。それが『ワインコイン』のセミナーでした。担当者からは『入会するだけでお金が入って将来的には100億の資産が築ける』、『ワンコインはイグナトバ博士という高名な人が作ったコインだ』、『Ｆ１のスポンサーにもなっているから怪しくない』といった説明を受けました。仮想通貨の仕組みすら知らない私にとっては、正直言って何が何だかわかりませんでした。『これを買えば一生働かなくていい』とまで言われたり、考える暇も与えられないほどの強烈な勧誘でした」
本誌は投資者向けに配られた『ワンコイン』の説明資料も入手。そこにはコインを購入すると翌年には５倍、２年後には100倍の資産が形成されるといった、にわかには信じ難い錬金術が書かれていた。イグナトバ容疑者については、「ブルガリア出身」「オックスフォード大学法律博士卒業」「マッキンゼーと提携」などといった大仰な経歴が紹介されていた。
Ａ子さんが続ける。
「説明の中では『ビットコインは作った人が誰なのかはっきりしていないけれど、ワンコインはイグナトバ博士が作った。ワンコインは誰が作ったのかはっきりしているから怪しくない』という言葉もありました」
セミナー後は担当者からファミレスに呼び出され、１対１でひたすらに『ワンコイン』の購入を勧められる日々が続いたという。
「担当者から『ワンコインで利益を出すには２パターンある。１つは人を紹介する。それができないなら、自身で大金を払い、大量のコインを購入する』と迫られ、後者を選びました。誰かを無理やり勧誘するのは嫌だったので……。いま思えばはっきりと拒否しておくべきだったと後悔しています」
Ａ子さんは担当者から言われるがまま560万円を支払い、『ワンコイン』を購入。投資者の一人となった。
「しばらくして『ワンコイン』のサイトを担当者に確認してもらうと、560万円で買った自分のコインが12億円になっていると聞かされました。といっても、『ワンコイン』は現状では円に換金するのが難しいとの説明もあり、半信半疑でした。換金の代わりに用意されていたのは『ワンコイン』独自のＥＣモールでした。周りに『ＥＣモールで家を買った』『高級車を買えた』と話す人もいましたが、実際にサイトを見ると歯ブラシや宝石まがいのネックレスなどがあるだけ。正直、がらくた同然のものしかありませんでした。『いつ換金できるのか』と担当者に聞いても『時間がかかっている。もう少しだけ待ってくれ』と答えるばかりでした」
<div data-friday-nextpage-lead="今でも一部の投資者は信じている"></div>
画面上の数字は膨れ上がるも実益はなしという生活が続く。複雑な気持ちを抱えていたＡ子さんに異変が訪れたのは’19年頃だったという。
「突然、『ワンコイン』のマイページが見られなくなったんです。それからイグナトバ博士がＦＢＩに詐欺で指名手配されたというニュースを耳にしました。担当者に『どうなってるんだ』と問いただしても、『ごめんなさい。今はまだわからない』と返ってくるだけ。『ワンコイン』は日本に正規の支部がなく、問い合わそうにも窓口すらない状態で……。今はただ、どうしたらよいのか戸惑っています」
『ワンコイン』の日本人被害者はＡ子さんだけではない。30万円を投資したという男性にも取材をすることができた。
「私は’18年に知り合いから『ワンコイン』の紹介を受けました。当時、日本では実業家を名乗るＭという人物がインフルエンサーとなり、全国各地を飛び回って『ワンコイン』を広めていました。怪しかったのは換金を希望した時の反応。担当者に『円に換えたい』と伝えても『持っていたほうが儲かるから今は換えないほうが良い』の一点張り。とにかく換金を拒否する姿勢に終始していました。イグナトバ博士の指名手配を知ってから、担当者に『ブロックチェーンで自分の資金の行方を追いたい』と問い合わせたんですが、『ブロックチェーンはない』と言われ、さらに驚きです。ブロックチェーンがなければ入金した証明もできず、被害を訴えることも難しい。泣き寝入りするしかないのが実情です」
Ａ子さんもこう悔しさを滲ませる。
「本当『やられたな』って。恐ろしいのは、今でも一部の投資者の間で『イグナトバ博士が指名手配されたのはワンコインを潰す為の策略だ。それだけワンコインは素晴らしい通貨。そのうちに博士は戻ってくる』と陰謀論が語られていること。映画でもあるまいに……。それだけ、洗脳に近いやり方で投資者を盲信させていたということだと思います」
莫大な現金を持っている上、全世界に協力者がいるイグナトバ容疑者。消えた「女王」をＦＢＩは追い詰めることができるか。
<figure id="attachment_265977" aria-describedby="caption-attachment-265977" style="width: 1341px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="325fd37e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/91137679495ce500679cd0f361fe3afa.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-265977" class="wp-caption-text">投資者を勧誘するための資料に記載されたイグナトバ容疑者の経歴。オックスフォード大卒業など、仰々しい経歴が並んでいる</figcaption></figure>

『ワンコイン』の資料に掲載されているイグナトバ容疑者の写真。全世界から莫大なカネを集め、「仮想通貨の女王」と呼ばれていた 「会場にイグナトバ博士のビデオメッセージが流れた瞬間、歓声や拍手が巻き起こり、

日本人被害者が語る「仮想通貨の女王」の悪質すぎる手口

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