<p>〈佐々木朗希（ロッテ）の完全試合、東浜巨（ソフトバンク）、今永昇太（DeNA）、山本由伸（オリックス）、ポンセ（日本ハム）によるノーヒットノーランによって、1940年以来82年ぶり2度目となる史上最多タイのノーヒッター5回が達成された2022年シーズン。</p>
<figure id="attachment_266814" aria-describedby="caption-attachment-266814" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b12c6815"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/2022041010800.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-266814" class="wp-caption-text">今季完全試合を達成したロッテ佐々木朗希投手（撮影：共同通信社）</figcaption></figure>
<p>千賀滉大（ソフトバンク）の予言通り3割打者は減り、パリーグのチーム打率は2割3分近辺のチームが3チーム。「投高打低」の要因は飛ばないボールだけでなく、投手の大幅なレベルアップだろう。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>科学的なトレーニングやフォームの分析に加えて、映像とデータからボールの回転や変化量を測定し、調整することが可能となったため投手の進化が著しい。</p>
<p>平均球速も146キロと8年前と比べると4.5キロも上昇した現在のNPBの投手はMLBとの差がかなり縮まったといえるだろう。メジャー級の鋭い変化球や速球が増えてピッチャー好きからしたらたまらない。そんな各投手の魔球を2022年のxPV（※1）やxPV advanced（※2）、被安打率などのデータから分析し、上位5球をランキング形式で紹介する〉</p>
<p>※1　xPV/100…期待ピッチバリュー、投手の責任範囲外の要素を可能な限り排除しており、真の実力の推定に長けた指標。0であればリーグの平均的な働きをしたと見なせる。</p>
<p>※2　xPV advanced…xPV/100の偏差値。受験偏差値などと同様70を超えていたら素晴らしい。プロの中で偏差値80を超えているのがモイネロ。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h4>5位．ケラー（阪神）ストレート（4シーム）　xPV advanced 77</h4>
<p>5位はケラーのストレートだ。阪神の新外国人であるケラーはメジャー移籍したロベルト・スアレスの穴を埋めるクローザーを期待されたが、開幕直後は調整不足もあり期待に応えることができなかった。</p>
<p>だが、2軍調整後は支配的な投球を続けており、その4シームは圧倒的な精度を誇る。最速157キロ、平均球速が152.2キロと球速も上昇し、メジャー時代から縦変化量が多くボールの下を振ってしまうような質で被打率.134 、被本塁打もなし。流石にオスナよりは若干質は劣るが、制球が良いため高い評価となった。</p>
<p>阪神の投手の調整能力、特に4シームの改善技術は素晴らしい。スプリットを覚えるなど日本野球への適応に貪欲で、得意のカーブとストレートの間にモイネロや松井のようなスラッターも加えることができる。そうなれば、来季以降抑えとしてピアース・ジョンソンやスアレスのような活躍も期待できる。</p>
<h4>4位．ジャリエル・ロドリゲス（中日）縦スライダー　xPV advanced 78</h4>
<p>4位はジャリエル・ロドリゲスの縦スライダーだ。今期からセットアッパーに転向し、160キロで真っスラ軌道の4シームと鋭い縦スライダーで打者を圧倒するジャリエル・ロドリゲス。</p>
<p>ロドリゲスの縦スライダーの特徴は鋭くトップスピンで曲がり落ちる「パワーカーブ」のような性質で、球速も130キロ台前半と速い点だ。</p>
<p>カーブは球速が速いほど効果的になる性質があり、130キロ台前半でパワーカーブのような曲がり方をするロドリゲスの縦スライダーは被打率.082でまさに魔球といえるだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本球界ベスト3の「魔球たち」は…？"></div>
<h4>3位．松井裕樹（楽天）スライダー　xPV advanced 79</h4>
<p>3位は松井裕のスライダーだ。松井裕は防御率3点台と0～1点台の年が交互に訪れるいわゆる「隔年傾向」がある投手で今季は悪い方の年だが、防御率1点台とシーズンが終わりに近づいている今でも絶対的な投球を続けている。</p>
<p>持ち球である4シーム・スプリット・スライダー全てが被打率1割台以下と優れているが、xPV/100とxPV advancedで最も優れているのはスライダーだ。</p>
<p>平均球速135.3キロでジャイロ回転での自由落下にややトップスピンが入る程度のスラッター性質のスライダーは高校時代の大きなスラーブとは異なる質の球となっていて、モイネロとも似ている。やはりこれくらいの速度と変化量のボールを体現できれば空振りが多く奪える上に制球もしやすいため、xPV/100が3.0でxPV advancedが79と圧倒的な評価となる。</p>
<p>変化量の少ないスライダーは打たれるなどと必死で対抗する前に、よく試合をみて途中から「鋭く程よく」曲がるスラッターの凄さを注視してみると良いだろう。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h4>2位．ロベルト・オスナ（ロッテ）ストレート（4シーム）　xPV advanced 79</h4>
<p>2位はロベルト・オスナのストレートだ。一般的に、ストレートは最も打たれやすい球種のひとつ。現代野球では、昔の野球ファンからしたら物足りないくらいストレートが減り、フォークやスライダーなど落ちるボールが増えている（それでもまだまだストレートが多すぎると個人的には思っているのだが…）。このような時代で、力勝負できるストレートは魅力的だ。</p>
<p>2022年の日本球界で、ストレートの質が最も優れているのがロッテにシーズン途中加入した、ロベルト・オスナの4シームだろう。</p>
<p>力感のない理想的なフォームから投げられるこのボールは150キロ台前半の速度できれいな縦回転かつ伸びがあり、被打率.167と球質が抜群に優れている。元メジャーセーブ王の実力は伊達ではない。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h4>1位．モイネロ（ソフトバンク）スライダー　xPV advanced 84</h4>
<p>1位はモイネロのスライダーだ。防御率1.03、奪三振率14.87。その支配的な投球はモイネロの「攻撃」と形容される程圧倒的だ。</p>
<p>「モイネロはストレートが良い」、「いやカーブがエグい」、「いやいやチェンジアップが凄い」。どれも正しく全ての球種が良いのがモイネロなのだが、中でもxPV/100が3.6でxPV advancedが84と最も優れているのがスライダーである。</p>
<p>140キロ台でジャイロ回転、重力での自由落下程落ち、私が「スラッター」と形容するこのボールは空振りも見逃しも多い。カウント球にも決め球にもなり制球も良いため、被打率.179ながらxPV/100とxPV advancedでは圧倒的な数値となった。</p>
<p>そういえば、以前楽天に移籍した西川遥輝も2020年頃こう言っていた。「モイネロはカーブが注目されるがあの小さいスライダーを覚えてから厄介で手がつけられなくなった」と。モイネロの「攻撃」の際には是非スライダーにも注目してみてほしい。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ランキングには惜しくも入らなかった魔球たち"></div>
<h4>番外編</h4>
<p>ランキングにはあげられなかったが、中日の2年目、セ・リーグの新人王候補筆頭の高橋宏斗（中日）は7月と8月の防御率が0点台と支配的な投球を披露した。ショートアームと呼ばれる小さなテイクバックをモノにして力感のない高い重心のフォームから鋭いボールを投げ込んでいるが、そのスプリットはxPVが18.2でxPV advancedが70と高い評価となった。</p>
<p>139キロ程でこれまた重力での自由落下に近いくらい落ちるボールは多くの空振りを奪い、質が高いと評価される。結局、これくらいの球速と変化量を実現できれば多くの打者は空振りをしてしまう。今のところ、対処法は見当たらない。</p>
<p>ほかにもトミージョン手術から復活して好投を続ける才木浩人（阪神）のフォーク、復活した加治屋蓮（阪神）のスプリット、そして完全試合男・佐々木朗希（ロッテ）のフォークや球界のエース山本由伸（オリックス）のフォークも上位と匹敵するボールである。新人ではあるが宇田川優希（オリックス）のフォークも量は少ないながら質はトップレベルであり、オリックスの強力リリーフ陣の一画となった。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>広島のクローザーである栗林良吏のフォークもトップクラスである。1年目防御率0点台、オリンピックでも活躍し勤続疲労から「2年目のジンクス」も心配されたがこの男には関係なかった。春先やや不調だったものの、中盤から調子を取り戻し今季も防御率1.49と支配的な投球を続けている栗林の最大の武器もフォークである。オーバースローで上から投げ下ろす分、バックスピンがかかりやすく落差を出すのが難しい中で栗林のフォークは握り方が良いためにシームの影響も受けて138キロ程で重力での自由落下と同じくらい落ちる。</p>
<p>モイネロや松井裕樹のスライダーを右投手が投げていると言ったらわかりやすいかもしれない。この栗林も結局、フォークの他にストレートもカットボールもカーブも全てが良い。</p>
<p>良い投手は結局全ての球種が良く、何を投げても打たれないというのが現実でもある。そして、フォークを全体の30％前後投球しているのも重要な要素のひとつである。これくらい投球すると各打者に1球は投げている計算となり、打者は落ちる球を頭から消すことができない。それゆえ、ストレートや他の球種への対応も難しくなっていくのである。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>千賀滉大のお化けフォークや育成から8回の男に出世したシンデレラストーリーの藤井皓哉のフォースラ、山岡泰輔の縦スライダーなどが次点だが、これら大きい変化よりもう少しだけ小さく140キロ前後で重力での自由落下程変化するランキング上位のボールが指標上は最も優れていることになる。</p>
<p>とにかく、落ちるスライダーやフォークが上位を占めることが多くなった。データ上でも落ちるボールは優れていることが明らかとなっており、今の投手はどんどん球速を上げたうえで落ちるボールを増やしていく流れは止まらないだろう。投げ方や握り方、回転の与え方も解明され、ますます鋭い変化球が増えていくかもしれない。こうしたボールを複数組み合わせて投げていくことが重要である。</p>
<p>そんな中、オスナやケラーのような力勝負できる質の高いストレートや佐々木朗希のようなスピードボールもまた魅力的だ。野球のピッチングはディフェンスであるが、ボールを持っていて主導権を有しており、守備のシフトや配球、フレーミングも含めて際限なく支配力を高めていくことができる。このような投手優位の環境でゲームバランスが崩れているために、アメリカではシフト禁止やピッチクロックなど打高への改善を促す施策が打ち出されている。今後投手の活躍に期待しつつ、打者がどのように対応していくかも見守っていきたい。</p>


お股ニキ

共同通信社

〈佐々木朗希（ロッテ）の完全試合、東浜巨（ソフトバンク）、今永昇太（DeNA）、山本由伸（オリックス）、ポンセ（日本ハム）によるノーヒットノーランによって、1940年以来82年ぶり2度目となる史上最多

投高打低の22年プロ野球「全く打たれなかった」魔球トップ5…！

あなたへのオススメ

関連記事