<p>〈データ・技術で最先端を行くアメリカ。全球場でホークアイという機器が設置され全てのプレイを測定し、データが公開されることでボールの変化に影響を及ぼす要素の解析が進んだ。</p>
<figure id="attachment_266858" aria-describedby="caption-attachment-266858" style="width: 1976px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="36d1f5b2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/09/aflo_199398926.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-266858" class="wp-caption-text">データ分析によって明らかになった大谷投手最高の変化球「スライダー」（写真：AP/アフロ）</figcaption></figure>
<p>その結果、回転軸以外にシームシフトウェイク（SSW）と呼ばれる「シーム（ボールの縫い目のこと）」による効果が明らかとなり、今季はその効果を使うボールが増えた。要するにスピンと実際の変化が一致しないボールである。</p>
<p>これらのボールはジャイロ回転の成分を含んでおり、曲がり出しが遅い上に曲がり出してから鋭い「レイトムーブメント」となるため打ちにくい。ジャイロ成分を含むスライダー、カッター、スプリット、2シーム及びチェンジアップがシームの効果を使って鋭く変化するボールとなりやすい。</p>
<p>速球の平均球速が150キロを超えている世界でこうした効果を使い、スピンと変化が一致しない上に重力での自由落下程の落差を実現するボールは、世界最高の打者が集うメジャーリーグでも“魔球”のように機能している。</p>
<p>そんな各投手の魔球を2022年の「RV（相手チームの得点期待値を減らした数値のこと。RV-5なら、相手チームの得点期待値を5減らしている。RV-0ならばリーグの平均的な働きをしたと見なせる）」や被安打率などのデータから分析し、上位5球をランキング形式で紹介する〉</p>
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<h4>5位.エドウィン・ディアズ（メッツ） スライダー（ジャイロカッター）RV-22</h4>
<p>５位はエドウィン・ディアズのスライダー（ジャイロカッター）だ。今季、メッツのクローザーとして記録的なシーズンを送っているエドウィン・ディアズ。トランペットのかっこいい入場曲で登場すると対戦する打者の半分以上を三振に切ってとる。</p>
<p>佐々木朗希にも似た体の使い方のフォームで低いアングルから100マイル（約160キロ）超のシュートライズストレートと93マイル（約150キロ）前後のジャイロカッターのみを投げ込むが、このジャイロカッターが被打率.114、Whiff％（空振り/スイング）54.7％を誇る魔球であり、投球比率を6割近くに上げてこの無双に繋げている。</p>
<p>回転効率の低いジャイロ回転の高速のボールはシームシフトウェイク（SSW）が働いていればチェンジアップ効果も出て、思ったより曲がりながら落ちるため最も空振りを奪うことが出来る。それをディアズは証明している。</p>
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<h4>4位.ジャスティン・バーランダー（アストロズ） ストレート（4シーム）RV-24</h4>
<p>４位はジャスティン・バーランダーのストレート（4シーム）だ。トミージョン手術から復活の今シーズン。39歳で防御率1点台、最多勝を走り、ア・リーグでサイヤング賞候補筆頭の支配的な投球を披露するメジャーのエース、バーランダー。</p>
<p>一度終わったと思われた30歳台前半の体幹の故障は克服したが、高齢でのトミージョン手術からの復活は流石に厳しいかに思われた。</p>
<p>しかし、復帰から安定感抜群の投球で円熟みの増したパワーピッチを展開している。メジャーではストレートは打たれやすい球種のため減らすのが基本だが、それでも50.4％を投げRV-24、被打率.194と4シームで最高の指標を叩き出す。</p>
<p>回転数が多く浮き上がるような軌道の上に球速が早いのにボールがなかなか来ないように感じさせる独特なボールは多くの空振りとポップフライを奪っており、7回の勝負どころでは往年のようなフルパワーの99マイル（約159キロ）で抑え込んでしまう。見ていて本当に憧れるバーランダーの投球である。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="進化し続ける魔球「大谷翔平のスライダー」"></div>
<h4>3位. サンディ・アルカンタラ（マーリンズ） 高速チェンジアップRV-25</h4>
<p>3位はサンディ・アルカンタラの高速チェンジアップだ。マイアミ・マーリンズのエースで、ナ・リーグサイヤング賞最有力候補のアルカンタラは静かなフォームから100マイル（約160キロ）近い4シームと2シーム、90マイル（約145キロ）前後のスライダーと高速チェンジアップを全て同じくらいの割合で投げ込み、長いイニングを安定感抜群で投げ抜く投球スタイル。</p>
<p>全ての球種が理論上最も打者を打ち取りやすい変化量と速度のバランスになっているのだが、中でもこの高速チェンジアップは別格だ。シームシフトウェイク（SSW）が働き、4シームや2シームとの区別がつきにくくサイドスピンで鋭く重力での自由落下くらい落下し、被打率.145と、多くの空振りを奪っている。</p>
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<h4>2位.大谷翔平（エンゼルス） スライダー（スィーパー/スラッター）RV-28</h4>
<p>2位は大谷翔平の横スライダーだ。今年の投手大谷を支えたのが「スィーパー」とも呼ばれる高速スライダー。横に大きく曲がるのに、これまた2シームジャイロになるように握ることで思ったよりボールが落ちずに横滑りする。</p>
<p>MLBでは大谷やダルビッシュ、前田健太、NPBでは菅野智之、嘉弥真新也、東條大樹らが得意としている日本人の横スライダーだが、このボールの指標が高いことは以前からわかっており、割合を増やした。</p>
<p>大谷は85.3マイル（約137キロ）と140キロ近いスピードで40cmも横にスライドさせながら落ちずに横滑りする高速スライダーを投げることが出来る。伊藤智仁（現・ヤクルト投手コーチ）が30年前に投げていたのも大谷のスィーパーと同様のボールで、被打率も.161だった。</p>
<p>スィーパーは思ったより落ちないボールだからバットの上に当たりやすいためフライが多くなりやすい。そのため、思ったよりは長打を打たれやすかったり、犠牲フライすら打たせたくない場面にはあまり向かなかったりするため、使い方も重要となってくる。シーズン終盤大谷はスライダーの握りを変える事で縦スライダーも実現し左打者から空振りを奪っている。この縦スライダーがスラッターに近い球質で、また魔球となっている。</p>
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<h4>1位．ダイラン・シーズ（ホワイトソックス） 縦スライダー RV-36</h4>
<p>1位はダイラン・シーズの縦スライダーだ。ホワイトソックスの口ひげの伊達男、ダイラン・シーズの縦スライダーが失点抑止の観点から質／量でトップとなった。大谷のスライダーとも迷ったが、被長打の少なさなどからシーズに軍配が上がった。</p>
<p>NPB編のモイネロのスライダーに近い変化と速度のボールで、シーズの縦スライダーはトップスピンが入っており、そのままなら普通ボールはもっと落ちるのだが、2シームのジャイロ回転となるように握っているためシームシフトウェイク（SSW）が働きスピンから想定されるよりは落ちない。</p>
<p>そのため、結果としてはトップスピンのボールなのにスラッターくらいの重力による自由落下程の落差となっており、打者は欺かれる。</p>
<p>シーズは被打率.128のこのボールを約43％と多投し、ノーヒットノーランまで後1人というピッチングも披露した。四球はリーグ最多だが、サイヤング賞を争うピッチングの源泉となっているのがこの縦スライダーである。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「最新魔球理論」を実現する大谷翔平…！"></div>
<h4>番外編　大谷のシンカー、ダルビッシュの2シーム</h4>
<p>8月の試合でそれまで使ってなかった2シーム（アメリカでは2シームのことをシンカーと言う。日本のシンカーとは違うボールなので注意）を投げ出して度肝を抜いた大谷。</p>
<p>大谷のようにストレートにジャイロ成分が多く、腕のアングルが低い投手はカットボールを裏返らせるようなイメージでこのような100マイルのシンカーを投げることが理論的には可能ではあったのだが、二刀流をしながらシーズン中に試合で使えるレベルに仕上げてきたことに驚いた。</p>
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<p>ヤンキースのリリーバー、クレイ・ホームズの100マイルのシンカーを打席で体感して触発されたのかもしれない。</p>
<p>現在大谷はこのシンカーを右バッターへのインローと左バッターへのアウトロー限定で使っているが、ダルビッシュの2シームのようにフロントドアで左バッターのインコースに投げてみて欲しい。</p>
<p>食い込むカットボールやスライダーを見せた後にフロントドアで投げればおそらく、大谷のシンカーなら見逃し三振が奪えるだろう。かつてのサイヤング賞投手コリー・クルーバーより球速帯が5~10キロ速いような投球を大谷は展開できる。</p>
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<p>しかし、大谷は二刀流でありながら究極の変化球投手でもあり、ロマンが凄い。今季は投球割合は少ないがスプリットは依然メジャーナンバーワンのボールである。投手専念をした姿も見てみたい。本当に日本人初のサイヤング賞に手が届くところまで来ている。</p>
<p>（参考）<br>
https://baseballsavant.mlb.com/<br>
http://www.mlbpitchprofiler.com/</p>


お股ニキ

AP/アフロ

〈データ・技術で最先端を行くアメリカ。全球場でホークアイという機器が設置され全てのプレイを測定し、データが公開されることでボールの変化に影響を及ぼす要素の解析が進んだ。 データ分析によって明らかになっ

大谷のスライダーは何位？データで判明！「MLB魔球ランキング」

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