三遊亭円楽さん 戒名にまでみせた大名跡「圓生」襲名への執念 | FRIDAYデジタル

三遊亭円楽さん 戒名にまでみせた大名跡「圓生」襲名への執念

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
人気番組『笑点』に40年以上出演し続けた三遊亭円楽さん。国民的な落語家だった…
人気番組『笑点』に40年以上出演し続けた三遊亭円楽さん。国民的な落語家だった…

落語家の三遊亭円楽さんが9月30日、肺がんで亡くなりました。74歳。

「今年1月から5月まで、脳梗塞で入院していました。ですが、その間は肺がんの治療を同時並行でできなかったそうで…」(落語家仲間)

8月11日に高座復帰したものの、その後、肺炎で再入院。

「肺がんが進行していて、治療に着手はしたんですが、それに耐えられる体力ではなくなっていた。いわゆる手の施しようがなかったそうで、本人もうすうす感じていたようです。無念だったと思いますよ」(前出・落語家仲間)

戒名は

“泰通圓生上座(たいつうえんしょうじょうざ)”

円楽さんが死を賭して守った大名跡『圓生』の二文字が、そこには刻まれています。生前に円楽さんは曹洞宗の得度式を行っており、戒名はその僧侶名からきています。

’19年に出版した本『流されて円楽に流れつくか圓生に』(竹書房)で円楽さんは、圓生襲名への意欲を示していました。

「その段階では、六代目圓生の直弟子が、五代目円楽一門会と落語協会にいました。円楽一門会は円楽さんが襲名することで一致していましたが、落語協会の直弟子、三遊亭円丈さんと三遊亭円窓さんにきちんとあいさつをしなければいけない。しかし、その点ではいつも“外交力”を武器にしている円楽さんも腰が重かった」

と明かすのは興行関係者です。

ただ状況は変わりました。円丈さんは昨年11月に、円窓さんは今年9月に旅立ちました。だがこのたび、円楽さんも……。

「ある演芸評論家がデイリースポーツ紙の追悼記事で、《落語界は、大名跡である三遊亭圓生の七代目襲名の最適格者を失ったのである。当面、圓生の空位は続く。それが円楽師匠の死が意味する“演芸的損失”である》と書いていましたが、その通りだと思いましたね。圓生の名跡が、またさまよう時代になります」

とは前出の興行関係者。さらに次のような見方も。

「同時に考えたことは、ここまで円楽さんがこだわった名跡に、落語協会の襲名資格者(圓生の孫弟子。円楽さんも孫弟子にあたる)も声を上げにくくなった。円楽さんは、円楽一門の外に『圓生』という名跡が出ていくことを何としても阻止したかった。

円楽さんが生前、意欲を見せていたこと、戒名にも盛り込んだことで、『圓生』は円楽一門の門外不出の名跡になると思いますね」

円楽さんは師匠の五代目円楽から、圓生襲名に関する密命を受けていたといいます。ベテラン演芸記者が明かします。

「円楽さんの兄弟子の三遊亭鳳楽が『圓生』を襲名し、それをサポートするようにということだったと聞きました。’11年に鳳楽さんと円丈さんが『圓生争奪戦』というイベントごとにして話題を振りまいたことがありますが、みんなに祝福されないで襲名することが、その後の鳳楽さんの意欲をそいでいったようです」

代わりに意欲を持ち続けたのが円楽さんでした。先のベテラン演芸記者が続けます。

「円楽さんは嫡嫡(ちゃくちゃく)という言葉をよく使いましたね。嫡男嫡子、つまり一番弟子、総領弟子に襲名する権利がある、と。言い換えれば、六代目圓生の一番弟子だった五代目円楽が『圓生』を継ぐはずだった。さらにその五代目円楽の弟子である自分にも襲名する権利がある、という論理の組み立てです。

ただ、落語界は様変わりしていますから、一番弟子が継ぐ時代ではない。そもそも五代目円楽の一番弟子は鳳楽さんですからね。まぁ、2人の間で“六代目円楽で圓生を!”という合意はできていたようですが…」

今、落語協会の新真打ち披露興行が都内の寄席で行われていますが、10代目入船亭扇橋という大名跡が復活しました。継いだのは、先代扇橋の一番弟子でもなく、直弟子でもなく、六番弟子の弟子です。つまり孫弟子でした。一門の総意があれば、誰でも襲名していい時代になったと言ってもいいでしょう。

’78年6月、圓生一門が落語協会を脱退した落語協会分裂騒動から約44年。当時を知る関係者が鬼籍に入る中、五代目円楽一門と落語協会にまた裂きになった『圓生』という大名跡は亡霊のようにさまよっています。円楽さんが亡くなったことで、圓生の空位はしばらく続くでしょう――。合掌。

  • 取材・文ワタベワタル

    夕刊紙文化部デスク、出版社編集部員、コピーライターなどを経てフリーランスのエンタメライターとして活動。取材対象は、映画、演劇、演芸、音楽など芸能全般。タレント本などのゴーストライターとして覆面執筆もしている

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事