東京医大裏口入学事件 “官僚接待リスト”の腐った役人を総直撃!
逮捕されたブローカー、谷口浩司容疑者の毒まんじゅうを喰ったのは誰だ?
「谷口が接待に使ったカネは月平均で計300万円。多い月には600万円にも及んでいたようです。接待に使用した店は主に銀座の高級クラブや高級料亭です。谷口は多額の接待費を各省庁と関係を持ちたい民間企業から引っ張っていました」(全国紙社会部記者)
文科省官僚の汚職事件が相次いで発覚している。東京医科大学へ息子を不正入学させた文科省前科学技術・学術政策局長の佐野太被告(59)と、JAXA理事時代に約140万円相当の過剰接待を受けた同前国際統括官の川端和明被告(57)だ。一連のスキャンダルを契機にいま、背後で暗躍した、ある「ブローカー」の存在が注目を集めている。
一連の事件に「受託収賄幇助(ほうじょ)」及び「贈賄役」として関与し、7月4日に逮捕された谷口浩司被告(47)だ。谷口は「医療コンサルティング会社役員」や「政策顧問」を名乗り、官庁と民間企業を仲介する名うてのブローカーだった。
「谷口の名前は文科省だけでなく各中央省庁の間で有名だった。それだけに、佐野の事件が発覚した当初から、接待を受けた官僚はまだまだいるはずだと、もっぱらの噂でした」(文科省関係者)
本誌は今回、谷口被告の「官僚接待リスト」を入手。下のリストがそれだ。これは谷口被告が接待のターゲットとしていた官僚の名前・部署・役職を記録したものだとされている。
「役職から判断するに、このリストは’12~’14年頃のものでしょう。課長が多いのは、現場レベルでカネを動かせるから。ブローカーとして、霞が関にかなり食い込んでいたことが見て取れます」(官界に詳しいルポライターの横田由美子氏)
このリストに載っているのは、逮捕者を含む31人。果たして各省庁はどう申し開きをするのか。本誌は総直撃を試みた。まず、最多9人の名前が載った厚生労働省の人事課人事調査官は次のように語った。
――こちらの9人は谷口被告から接待を受けたのか。
「リストについて承知していないのでお答えすることは差し控えたい」
――聞き取り調査などはしている?
「お答えしたくありません」
文科省も谷口被告の接待については回答せず、「現職の職員が逮捕されたことは極めて遺憾です。文部科学行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態に立ち至っていることについて、皆様に深くお詫び申し上げます」とのみコメント。他省庁も対応は同じで「リストについては把握していないので回答を差し控えたい」とのことだった(田村憲久元厚生労働大臣からは「担当者が不在なので回答しかねる」との返答)。
一様に知らぬ存ぜぬという木で鼻をくくったような態度。だが、彼らが事実を認める日が来るのは、もはや時間の問題だろう。
「一連のスキャンダルで、文科省の戸谷一夫事務次官(61)は辞任を避けられない事態にまで追い詰められた。さらに、谷口被告に『政策顧問』の名刺を渡していた羽田雄一郎参議院議員の責任も厳しく問われるべきです。リストについては、間違いなく東京地検特捜部も把握していますから、載っているうちの何人かが捜査対象となる可能性は少なくありません」(前出・全国紙社会部記者)
そもそも、官僚には「国家公務員倫理規程」があり、接待を受けることが固く禁じられている。にもかかわらず、なぜこれほど多くの役人がブローカーの術中にはまってしまうのか。ブローカーの接待現場に同席した経験がある省庁関係者が証言する。
「接待ではなく”勉強会”の名目で開催されるので参加しやすい。さらに政治家から声がかかると、官僚は行かざるを得ません。ブローカーはそこで官僚と親しくなり、そのまま”夜の接待”に連れ出す。会計はもちろんブローカー持ちです」
元財務省官僚で嘉悦大学教授の髙橋洋一氏もこう危機感を募らせる。
「エリート人生を歩んできた官僚は、ブローカーのような裏社会の住人とは接した経験がなく、簡単に籠絡されてしまう。ブローカーが31人しか相手にしていないとは思えません。このリストが氷山の一角である可能性は極めて高い」
谷口に喰わされたまんじゅうの毒は、霞が関の中枢を蝕んでいる。
写真:アフロ、共同通信、時事