KOC決勝!キモ面白さを追究する「いぬ」の意外なコンビ結成理由
高校時代、ラグビー部でスクラムを組んでいる最中にコンビを結成 芸人仲間から恐れられる実力派コンビがついに決勝進出
今年で15年目を迎えるコント師の祭典『キングオブコント』。数々のドラマを生んできたその決勝戦が、いよいよ今日、幕を開ける。
参加した3018組のうち、残ったのはわずか10組。個性豊かなファイナリストたちの中でも、一際異彩を放っているのが、結成13年目のコンビ『いぬ』だ。
ツッコミの有馬徹(34)とボケの太田隆司(35)が組む『いぬ』は、可愛らしいコンビ名に似つかわしくない奇抜で独特な世界観が最大の魅力。〝キモくて面白い〟と称されるネタで、初めて決勝の舞台へとたどり着いた。
有馬「決勝進出が決まってから、たくさんの人に祝ってもらいました。同期の『ニューヨーク』の屋敷(裕政・36)と嶋佐(和也・36)は、結果発表直後に『良かったな』って連絡くれて。養成所時代からユニットコントをするほどコンビで仲がいいので、嬉しかったですね」
太田「え、嶋佐からも? 僕には来てないですね……。『とろサーモン』の久保田さん(かずのぶ・43)からは連絡をもらいました」
初めてコンビを組んだのは高校時代。ともにラグビー部に所属しており、当時から学校行事などでお笑いを披露することがあったという。しかし、芸人になることに前のめりだった太田に対し、有馬はなかなか決断できずにいた。そこで太田は、驚きの勧誘法に出た。
太田「あれは高校2年生の冬でした。部活中、二人一組で行うスクラム練習があったんです。漢(おとこ)らしく想いを伝えようと、スクラムを組んだ時に『俺たちって勉強もスポーツもできないし、モテないけど、お笑いだったらいけるんじゃない?』って切り出しました」
有馬「それまでは恥ずかしくて、将来の夢を聞かれたら漫画家って言って誤魔化していました。ただその時はなんかしっくりきて、『そうだね』って即答しました」
太田「今思えばなんであの時、切り出したのか。お互い、めっちゃ汗臭かったしね(笑)」
その後、大学に進学するも21歳でそろって中退。お笑いの世界に飛び込んだ。’10年のデビュー当時から芸風はあまり変わっていないというが、そこには共通の理想像があったからだという。
太田「お互いに学生時代から『ジャルジャル』さんが好きでした。日常にある小さな違和感をわかりやすく誇張したようなネタが、僕たちが高校の頃にやっていたお笑いと似ているんですよ」
有馬「実は『ジャルジャル』さんのオンラインサロンに入っていて、コッソリ勉強させてもらってます。影響されるので、見すぎないようにしていますが……」
同期であり、今大会で優勝を争うライバルからも、ネタのヒントを得ている。
有馬「『ニッポンの社長』はすごく面白い。ネタを作っているツッコミの辻(35)は同期ですが、あいつらにしか作れない世界観には憧れます。現実に根差していますが、どこか生々しくて、クレイジーで、ほかの誰とも被(かぶ)らない。世界観で勝負する者同士、意識しますよね」
先輩から学び、同期と切磋琢磨してきた二人。賞レースでなかなか結果がでなかったなか、大きな転機となったのは新型コロナウイルスの大流行だった。
太田「実はコロナ前はけっこう喧嘩も多かったんです。理由は僕がネタ出しをサボるから(笑)。でもコロナになって、時間もできて、そこをサボらなくなった」
有馬「僕が主にネタを書いているんですが、最近は打ち合わせの度にお互い2案ずつ持ち寄って、膨らませるようにしています。そのおかげでネタの精度があがりました。コロナがプラスに働いたんです」
念願の大舞台へ向け、気合は十分だ。
有馬「ここまで来たら、もうテッペンしか見てません。優勝して、今まで付いた負けグセを払拭してみせます」
太田「キモい=面白いってことを証明して、爪痕を残してやりますよ!」
芸人仲間が恐れる実力派コンビが、頂点へ駆け上る。



『FRIDAY』2022年10月21日号より
PHOTO:足立百合