「1年間で62億円」荒稼ぎ　オンラインカジノを使った悪質マルチ

「宣伝して会員を獲得すれば高額の報酬がもらえる」
「全世界のカジノの売り上げの数％が入る」などと言葉巧みに勧誘

「伐渡(ばっと)に初めて会ったのは、５年ほど前です。当時、彼は神戸で実家の稼業である貿易関係の仕事を手伝っていました。そのときは腰も低く、気配りのできる子でしたよ。しかし、マルチ商法に手を染めるようになると、途端に態度が横柄になり、言葉遣いすら変わってしまいました」（伐渡容疑者の知人）

オンラインカジノを利用した儲け話を持ちかけ、報酬の条件を告げずに契約させたなどとして、大阪府警は９月20日、特定商取引法違反（事実の不告知など）の疑いで、名古屋市の会社経営者・伐渡アーマッド裕樹容疑者（35）ら男女15人を逮捕した。伐渡容疑者らは、ＳＮＳやマッチングアプリなどで知り合った相手に悪質なマルチ商法を持ちかけ、今年６月までの１年間で実に約62億円もの大金を荒稼ぎしていたという。

「『副業に興味がないか』などと言って自身が主催するセミナーに連れ出し、『宣伝して会員を獲得すれば高額の報酬がもらえる』『全世界のカジノの売り上げの数％が入る』と勧誘。『ＥＲＡ(イーラ)』と称するオンラインカジノサイトへの登録が必要だとして、入会金75万円を支払わせて契約を結ばせていました。実際に報酬を得るには毎月約２万６０００円の課金が必要でしたが、伐渡容疑者らはその説明をせずに契約させていたのです」（全国紙社会部記者）

まさに典型的な悪質マルチ商法である。前出の知人は、伐渡容疑者がカネの魔力に取りつかれていった様子をこう振り返る。

「彼が変わったのは３年ほど前です。突然、『面白い話があるから会いませんか』と連絡があり、言われるがまま大阪・心斎橋にあるオフィスへと向かいました。そこにいたのは全身ブランドのスーツで身を固めた伐渡でした。礼儀正しかった姿はどこへやら。ソファに深々と座り、マルチ商法の説明を始めました。紹介されたのは今回の『ＥＲＡ』とは違うものでしたが、手口はまったく一緒。『高額な入会金を支払って人を紹介すれば儲かる』と持ちかけてきました。私が勧誘を断ると、『どうしてですか？』と不思議そうな表情を浮かべていました」

伐渡容疑者は、「第二の与沢翼になる」とも吹聴していたという。

「与沢氏がどうやって稼いでいるかも知らず、ただ単にカネ持ちになりたいという意味で言っていたんでしょう。弟子を取って儲け話をレクチャーしたり、ＳＮＳでも豪華なパーティの写真を上げたりして積極的に顔を売っていました。シンガポールの高級ホテルである『マリーナベイ・サンズへ一緒に行きませんか』と誘ってくることもありましたよ。彼の周囲には取り巻きのように若い女の子たちがいて、その子たちにもブランド品を身に付けさせていたのが印象的でした」（同前）

知人の心配をよそに、その後もマルチの道を突き進んでいった伐渡容疑者。彼らはいかにして62億円という大金を稼いだのか。伐渡容疑者のセミナーに参加したことがある別の知人が、その手口を説明する。

「彼のセミナーのやり方は、強引そのものでした。まず、伐渡が『絶対儲かる』などと言いながらデタラメなシステムを説明する。そして、弟子を前に立たせて『自分は伐渡のおかげでこれだけカネを稼げた』としきりにアピールさせるんです。その後は参加者をテーブルごとに分け、弟子たちを一人ずつ配置してあの手この手で契約させる。
伐渡のセミナーに来る人は、カネに困っている若い人が多かった。赤子を連れたシングルマザーなんかもいた。弟子たちは伐渡よりも年下ばかりでしたから、セミナーは本当に若い子だらけでした」

伐渡容疑者らが逮捕された同日には、福岡県警も男女３人を同じ容疑で逮捕している。好青年がマルチグループのリーダーに堕ちた背景には、黒幕の存在もあると見られる。

「各地にいくつかのマルチグループがあり、伐渡容疑者はそのうちの一つを任されていたようです。それを統括する首謀者がいると見て、警察は捜査を進めています」（前出・全国紙社会部記者）

まだまだ被害者は増えそうだ。

『FRIDAY』2022年10月21日号より