早明戦再び!12月に敗れた早稲田に挑む「明治の結束」

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春、夏、秋と帝京大を破った明治。早稲田との準決勝を勝って2年連続の決勝進出なるか(写真は2018年5月)

全国大学選手権を間近に控えた2018年12月。明治大学ラグビー部の田中澄憲監督が、最上級生にこう告げたという。

「1度、4年生だけで飯に行って来たら?」

国内有数の人気校は、OBでサントリーから出向の田中がヘッドコーチとなった前年度から実戦仕様のトレーニングを重ねて、タフになっていた。

昨季は19年ぶりに大学選手権の決勝へ進み、今季は大学選手権9連覇中の帝京大学(帝京大)に春季大会、夏の練習試合、秋の関東大学対抗戦A(対抗戦)の公式戦で3連勝。タックルした後の素早い起き上がり、相手にぶつかった際の鋭い踏み込みと、日頃の練習の成果が実を結んだ。

ところが帝京大戦の前後にあった慶應義塾大学(慶大)戦、早稲田大学(早大)戦を落とし、対抗戦を5勝2敗の3位で終えることになった。同率3位の慶大に敗れていたため、大学選手権のトーナメント表では「4位扱い」となる。特に「伝統の早明戦」と呼ばれる12月2日の早大戦では、攻め込んではミスを重ね、守っても本来の機動力は影を潜めた。終盤に2トライと追撃しながら27―31で負けて、田中監督は次のように反省した。

「前半は手堅く行き過ぎた。それは私が示したプランだったので、(結果は)私の責任だと思います。後半はボールを動かして、伝統の一戦らしい試合にできたので」

12月16日の3回戦から挑む大学選手権を前に、チームはさらなる前進を目指していた。そこで田中の打った手が、「4年生だけで飯に…」というグラウンド外での「采配」だったのだ。

一般論として、この国の学生ラグビー界ではレギュラー、控えを含めた最上級生の振る舞いがその部の最終成績を左右すると見られている。

王者の帝京大では、4年生が部内の雑務を率先しておこなう文化をいち早く醸成。レギュラーを目指す4年生が指導陣へ加わる「学生コーチ」なる制度も、このクラブが唱えたものだった。

田中も「大学ラグビーは4年生」という哲学を信じる1人だ。監督となった今季は、通常なら主将、副将で計2~3名程度というリーダー陣を計8名という大所帯にした。指名された福田健太主将らは期待に応えるべく、週に1度の会議で日々の暮らしをフィードバック。練習内容の変更をコーチ陣に相談したり、夏には大運動会を企画して一体感を演出してきた。主務、寮長を含めた10名の幹部たちが、良質な雰囲気作りを心掛けてきた。

そして卒業が間近に迫ったこの時期、すべての最上級生が腹を割って話し合う場を作ったわけだ。事実上の仕掛け人と見られる指揮官は、一連の事実関係の確認を求められ「それ、誰が言っていたんですか?」と苦笑いを浮かべた。

ちなみに12月の4年生会は、帝京大でも実施されたことがある。メディアで報じられたのは、2連覇目を果たした2010年度の一夜。対抗戦4位と苦しんでいたなか、主将だった吉田光治郎が仲間たちにサポートして欲しい、と、頭を下げた。

以後、チームはバランス重視から力勝負重視に戦略を変え、決勝ではライバルの早大を17―12で下した。チームを率いる岩出雅之監督は大会後、会合へ出かける吉田へ「必ずお前の本音を言えよ」と助言していたと話す。

田中は、サントリーラグビー部の新人採用を担当していた頃に岩出監督のもとへ足しげく訪問。常勝軍団のエッセンスに触れている。もっとも岩出監督の決起集会の話は、知らなかった。ここでは、勝負の世界における田中の第六感が光ったのだ。

明大の4年生が集まったのは12月14日、寮のある東京・八幡山周辺の中華料理屋だった。

リーダーの1人で左プロップの齊藤剣は、「4年生から変わっていかないと。その部分を話し合いました。いままでこういうことがなかったので、よかったです」。改めて思い返せば、同学年の仲間だけで宴席を設けることは稀だったという。今度の決起集会は、互いのあり方を再確認するいい機会になったと話す。

「僕はリーダー陣の1人でしたが、それまでは周りに頼りがちなところがいっぱいありました。それを直し、もっと自分から引っ張っていけるようになりますと、宣言しました」

話題は、私生活からラグビーの戦術まで多岐に渡った。心を通わせる時間を経て、リーダーの1人でスタンドオフの松尾将太郎は「素になって、吹っ切れた感がある」と言った。どうやら、中華料理店近くの公衆浴場にも入ったようだ。

「皆で同じご飯を食べて、皆で温泉に入って。ここで本当に、思っていることを話し合いました。いい機会でした。2~3年の時は自分のことで精いっぱいだったんですけど、去年の先輩たちがどうだったか(古川満前主将を中心に結束していた)、いまの自分たちがどうすべきかを話し、ひとつの方向にまとまってきています」

16、22日に大阪・キンチョウスタジアムでおこなった選手権の3回戦、準々決勝では立命大に50―19、東海大に18―15とそれぞれ勝利する。

この戦いのさなか、松尾は確かに耳にした。

控え部員が座るスタンドからの「困ったら、こっちの4年生の顔を見ろ」という声を。

今季の対抗戦の結果を総合すれば、明大は、持てる力を発揮すれば日本の大学で最も恐いチームとなり得る。今度の決起集会では、その持てる力を発揮するための空気を整えたと言えよう。

1月2日、東京・秩父宮ラグビー場で準決勝に挑む。相手は対抗戦で負けた早大である。前回対戦時は相手の複層的な攻撃陣形に翻弄されたが、明大は今度こそ今季の帝京大戦時のような組織防御を整えたいところ。田中監督の談話通り、攻撃中のプレー選択も注目点となりそうだ。

最上級生の底力を見つめ直した明大は、落ち着いてビッグマッチへ挑む。

  • 取材・文向風見也

    (むかいふみや)スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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