1日10時間練習も…ストイックすぎる美女プロゲーマーの日常

eスポーツの現場から 第1回:はつめ選手

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2018年、流行語大賞のトップテンに入るほど大きな注目を集めた「eスポーツ」。日本国内でも、数々のイベントが開催され、競技人口も右肩上がりだ。その熱狂のど真ん中、eスポーツの「現場」にいる当事者たちはこの盛り上がりをどう感じているのか。

第1回目は、女性プロゲーマーとして活躍するはつめ選手(20歳)。18歳の時、日本の格闘ゲーム界において、史上3人目となる女性プロゲーマーとなり大きな話題を呼んだ。まだまだ男性が中心のeスポーツの世界に若くして飛び込んだ彼女に、プロゲーマーの本当の姿を訊いた。

起きてから寝るまでゲームの練習

――話題沸騰のeスポーツですが、実際eスポーツ選手がどんなことをされているのか分かっていない人も多いと思います。そこで現在、プロ選手としてどのような活動をされているのかお聞かせください。

はつめ選手(以下はつめ):あまりゲームに詳しくない人でも『ストII(ストリートファイターII)』という格闘ゲームは知っているのではないでしょうか。「波動拳」とか「昇龍拳」とかなら聞いたことがあると思います。そのシリーズの最新作である『ストリートファイターVアーケードエディション』のプロ選手として、大会に出場しています。

『ストV』を発売しているカプコンは、「カプコンプロツアー」として、1年かけて世界中33ヵ所で大会を開催しています。そこで好成績を収めた人にポイントが与えられ、ポイント上位者が年末の「カプコンカップ」に出場できるんです。私もカプコンプロツアーに参加させていただいてます。今年だと、シンガポール、韓国、台湾、香港、東京の大会に出場しました。プロツアー以外だと、アメリカで行われている対戦格闘ゲームの一大イベントである「EVO(EVOLUTION)」と、日本開催版の「EVO Japan」にも参加しています。

選手以外にも、自分のプレイしているゲーム動画を配信する、いわゆるストリーマーとしても活動しています。他にはイベントの司会や、eスポーツ番組の出演とか。私はやっていませんが、なかにはeスポーツの先生として、専門学校で教えている人もいます。本当に幅広いんですよ。

――普段、ゲームのトレーニングはどのくらいされているのですか。

はつめ: 起きている時間のほとんどを『ストリートファイターV』に費やしています。目覚めてすぐにゲーム機のスイッチを入れて、練習して、スイッチを切ると同時に寝ている感じです。ゲームに触っている時間は最低でも8~10時間くらいでしょうかね。『ストV』はオンライン対戦がメインなので、人が多く集まる夜中にプレイするのがほとんどなんです。プロ選手じゃなかったら、ニートだと思われても仕方ないライフサイクルですね(笑)

ゲームをしていない時間でも、なんだかんだいってずっと『ストV』のことを考えています。他のプロ選手の動画をみて攻め方を考えたり、自分の対戦を振り返ったり、研究することがいっぱいあるんです。

――スポーツ選手のようなストイックさですね。今の時期はどのような活動が中心となるのですか。

はつめ:毎年12月のカプコンカップが終了すると、次のシーズンへ向けたゲームの調整と新キャラクターの発表があるんです。そこから来年のカプコンプロツアーが始まる3月まではオフシーズンとなります。多くのプレイヤーは、この時期に来年に向けたアップデート対策などを考えています。私が使っている「キャミィ」は、今年成績が良かったいわゆる「強キャラ」認定されているので、下方修正されてしまう可能性が……。だから、来年も使うべきか悩んでいます。そういった対策を考えるのが、eスポーツのオフシーズンですね。

父親もゲーマー

――eスポーツ選手はまだ男性が多く、特に対戦格闘ゲームは女性比率が低いと思います。なぜ『ストV』でプロを目指そうと思ったのですか。

はつめ:実は、私の父がPCゲーマーで、幼少期からオンラインゲームをプレイしていたんです。次第に誰かと実力を競い合う喜びみたいなものを覚えてきて、高校2年生くらいまではずっと※FPSで遊んでいましたね。

※FPS(First Person Shooting):操作するキャラクターが画面内に表示されておらず、プレイヤー目線で戦うシューティングゲーム

格闘ゲームにハマったのは、バイトをしていた秋葉原のeスポーツ施設「eSports SQUARE AKIHABARA」で『ウルトラストリートファイターⅣ』の大会を観てからです。そこに出場していたプロゲーマーのネモ選手がロレントというキャラクターを使っていたのですが、それがすごくかっこ良くて。ネモ選手が使うとこんなにかっこ良い動きをするんだ!って、感動したんです。

――家にゲーミングPCがあったのは、その時代としては珍しい。eスポーツ選手になることを考えると良い環境だったといえますね。プロとして活動をはじめたきっかけがあったのですか。

はつめ:『ストリートファイターV』が発売され、大会に出場していくなかで、健康食品メーカー「COMP」からスポンサー契約のお話をいただきました。その当時は、JeSU(日本eスポーツ連合)によるプロライセンスもなくて、明確な「プロ」の定義はなかったような気がします。ただ野球やサッカーなど、他のスポーツの世界でもスポンサーがつくことで「プロ選手」と認められることが多かったので、私も「プロ選手」を名乗らせていただいています。

――プロ選手として活動されてから何か変化はありましたか。

はつめ:プロとしての自覚というか、いろいろ悩むことが増えました。対戦格闘ゲームの選手って、大会やイベントでファンとお会いするケースが多いんです。でも私、もともと明るい性格じゃないんですよ。仕事をする上で、きっと明るいキャラクターのほうが良いのかと思って、無理していたこともあったんですが、本当の自分とあまりにもかけ離れすぎて……。それがキツくなったりしたこともありました。でも今は、徐々に自然体の自分でも良いんだと思えるようになってきましたね。

収入は高校生のバイト1ヵ月分くらい

――はつめさんは「専業」プロ選手ですね。基本的には、選手としての活動以外に収入がないと思いますが、生活面で苦労されることはありますか。

はつめ:私はプロ選手としては、大会で上位入賞できるだけの実力がないので、まだまだ賞金だけで生計を立てることは難しいです。収入としては、スポンサー料がメインで、毎月一定額を頂いていますが、「プロ」と呼べるほどたくさん頂いている訳ではなく……。イベント出演の数によっても変わるのですが、平均すると高校生が1ヵ月みっちりバイトしたくらいでしょうか。でも私、あまり物欲もなく、買い物もしないので、それほど困っていません(笑)。ただ、海外での大会は、渡航費、滞在費を出して頂いているので、それはとても助かっています。

――eスポーツ選手として活動しているうえで、嬉しいことと辛いことはなんでしょうか。

はつめ:やっぱり勝ったときです。勝てるようになってくると、どんどんゲームをするのが楽しくなってくるんです。あとは、私のプレイを見て「ストVを始めました」と言ってくれる人がいて、それは本当に嬉しいですね。

辛いことは、長い時間プレイしていると「自分が強くなっているのかわからなくなってくる」こと。始めた当時は、必殺技が出せるようになったり、難しいコンボが決められるようになったり、自分が強くなったことが実感しやすかったんですけど、ある一定のレベルまでくると、そういったわかりやすい上達ではなくなってくる。いくら時間をかけても、本当に自分が成長しているかわからないんです。

だから、一通りできるようになってしまうと、後はもっている引き出しでどうやって戦っていくかにかかってくるんですよ。たぶん、eスポーツのプロ選手って、完成した人同士が戦うのでこういう感覚の人が多いと思います。

――まさにプロだけが見える境地ですね。はつめさんが思う、格闘ゲームにおける「強さ」とは何だと思いますか。

はつめ:対戦格闘ゲームは、FPSとかに比べると競技年齢も高め。反射神経や運動神経だけでなく、経験が物言うジャンルです。すでに10~20年と対戦格闘ゲームをプレイしている選手たちに比べると、私の経験は本当に少ないんですけど、その少ない経験を最大限に活かして、駆け引きや試合勘のようなものを発揮できるかで強さは決まってくるのだと思います。

だって、みなさん私が生まれる前から波動拳を撃っている人たちなんですよ。そんな方々を相手にしなくちゃならないんですから、相当努力しないと追いつかない。しかも、トッププレイヤーである、ときど選手とかウメハラ選手などは、私以上に練習をしているわけです。でも、私や同年代の若手がそこを追い抜いて行かないとeスポーツは面白くなりませんから、頑張るしかない。

――素晴らしい意気込みですね。最後に今後の目標をお聞かせください。

はつめ:成績的にはカプコンプロツアーのファイナリストになることを目標にしています。来年はもっといろいろな大会に出たいと思っています。そういった経験により、もっと強くなれると信じています。私はプロ選手としての実力はまだまだ。女性プレイヤーという希少性だけで注目されているところはあります。だからこそ、他のプロ選手と同じように実績で認めてもらえるようになりたいんです。

 

はつめ/1998年、千葉県生まれ。eスポーツ施設eSports SQUARE AKIHABARAでスタッフとして働く傍ら、ストリートファイターVのプレイヤーとして活躍。2017年、18歳の時に健康食品メーカーCOMPとスポンサー契約を結び、プロゲーマーとしての活動を開始。2018年には、プロゲーミングチーム『父ノ背中』に加入。Twitter:@hatsumememe

  • 取材・文・撮影岡安学

    ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスライターに。ゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、かかわった書籍数は50冊以上。現在は、esports関連とデジタルガジェットを中心にWebや雑誌、ムックなどで活躍中。ゲームやアニメ、マンガ、映画なども守備範囲。近著に「INGRESSを一生遊ぶ!」(宝島社刊)。【Twitter】@digiyas

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