「空飛ぶ親善大使」ユーロファイターが初来日した「本当の目的」
ドイツ空軍のトップが自ら操縦、日本国旗を大きくプリントなど「協力関係」をアピール 茨城・百里基地で自衛隊と共同訓練
「今回来日したインゴ・ゲアハルツ総監は、ドイツ空軍の紛れもないトップです。そんな大物がシンガポールから8時間もかけて自ら操縦桿を握ってやってきたのは、異例中の異例と言えます。それだけ、国際社会にアピールしたいことがあったということでしょう」(軍事ジャーナリストの伊藤明弘氏)
9月28日、ドイツ空軍の戦闘機「ユーロファイター」が初来日した。今年8月からドイツ空軍が行っているインド太平洋地域への大規模展開訓練「ラピッド・パシフィック2022」の一環として、茨城・百里(ひゃくり)基地に降り立った3機のユーロファイターは、自衛隊と共同訓練を実施。そのうち1機の翼には、オーストラリア、シンガポール、韓国、日本の国旗がプリントされており、そのデザインから「エア・アンバサダー(空飛ぶ親善大使)」とも呼ばれている。
「ラピッド・パシフィック」は、安全保障分野でインド太平洋地域とのパートナーシップを強化していくことが目的だが、背景にあるのは、中国への牽制だ。
「NATO(北大西洋条約機構)の中核国として、軍事力を増強し、覇権を拡大しようとしている中国に対抗していくことを明確にアピールする狙いがあると考えられます。その上でドイツが重要視しているのが日本です。ユーロファイターは韓国にも3機行っていますが、そのなかに特別塗装機はありません。日本の国旗が大きくプリントされているデザインからも、日本を重視していることは明らかでしょう」(前出の伊藤氏)
一方の日本も、百里基地の隊員約110名がユーロファイターをお出迎え。基地着陸前の富士山付近上空では、航空自衛隊のトップである航空幕僚長が自らF2戦闘機に乗って出迎えるという、こちらも異例の歓迎ぶりを見せた。
「国際社会へのアピールをしながらも、各国を回る今回の訓練でドイツは、台湾の上空を回避した飛行ルートを取るなど中国を刺激しすぎないよう配慮もしています。強(したた)かな外交をしている、という印象です」(同前)
初来日したユーロファイターの威容をひと目見ようと、百里基地には数百人の航空ファンが詰めかけた。和気あいあいとした共同訓練の裏では、さまざまな思惑が蠢(うごめ)いていたのである。

『FRIDAY』2022年10月21日号より
撮影:大塚賢二