「次にくるマンガ大賞」受賞!『メダリスト』作者が語る制作ウラ話 | FRIDAYデジタル

「次にくるマンガ大賞」受賞!『メダリスト』作者が語る制作ウラ話

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『メダリスト』第1話より。家族にさえホンネを言えなかった内気な少女・いのりが初めて想いを打ち明けるシーン。純粋な熱意に、胸を打たれる

9月に発表された、ネクストブレイクを発掘する『次にくるマンガ大賞2022』コミックス部門で見事、大賞に輝いたのは『月刊アフタヌーン』で連載中の『メダリスト』だった。

同作はフィギュアスケートが題材で、スケーターとしては挫折した青年・明浦路(あけうらじ)司が、少女・結束(ゆいつか)いのりと出会う。彼女の才能にほれ込んだ司はいのりのコーチとなり、二人三脚で夢を掴みとっていく姿を描く。

作者は本作がデビュー作となるつるまいかだ氏だ。『次にくるマンガ大賞』は5巻以内という縛りがあるため、7月に最新6巻が刊行された本作は今年がラストイヤーだった。最後のチャンスを手にしたつるま氏は今の気持ちをこう語る。

「色んな漫画の賞があるんですけど、今回が新人作家として受賞できる最後の賞だったので、受賞のお知らせは、本当にうれしかったです。『メダリスト』という作品は、メダルや賞を獲ることで周囲から期待をされ、その期待を強さに変えていくというのがテーマになっているんですが、自分がメダルを獲りにいく選手と同じ気持ちになれたので、すごい貴重な経験をさせて頂きました」

『メダリスト』第1話より。コーチを務める司は、かつて選手として、トップスケーターになる夢を追いかけていた

『メダリスト』は、昨年も『次にくるマンガ大賞』にノミネートされたが、16位という結果に終わっていた。

「正直、去年は自分なんかが獲れるわけないって思っていたんです。他のノミネート作品を見たら、自分も読んでいて大好きな作品ばかりで、錚々たるラインナップだなと思って。でも、いざ結果を知ると、初めからあきらめていた自分が情けなく思えてきて、すっごい悔しかったんです。作中で司というキャラが言っていることなんですが、みんなが欲しがる1位が、とれたらいいなと思っている程度の人に来るわけはないって思って、今年は絶対に1位になるんだっていう気持ちでのぞみました。でも、その瞬間から胸がバクバクしちゃって、自分の強さを信じるのってこんなに大変なことなんだってことに気が付かされました」

今回の受賞はつるま氏のそんな強い気持ちが呼び寄せたものだったのかもしれない。ちなみに、受賞を知らせるメールが届いたのは、取材で訪れたアイスショーの会場だったという。ホットドッグを片手に開演を待っているときに届き、同席していた編集者と一緒に“うわぁぁぁ”と喜びを爆発させたそうだ。

「あのとき食べたホットドッグの味は一生忘れられません(笑)。フィギュアスケートの漫画を描くのって本当に難しいんですよ。フィギュアスケートをテレビで見たことある人は大勢いると思うんですが、ルールまでちゃんと理解している人って少ないんじゃないかなって。だから、そのルールを説明しなきゃないんです。でも、漫画はエンターテインメントなので、教本のようになってはダメ。そのバランスが本当に難しくて、本当に毎回毎回ネームが描けないんですよ(笑)。

もう連載はじまって、2年以上経つんですが、“虎の巻”みたいなものがなくて、毎回解決策が違うんです。キャラの心情よりも展開を優先させてしまっていたり、いままで描いてきた要素を見落としてしまっていたりと、これをすればネームが描けるようになるってのがなくて、次はどんな困難がくるんだろうって思うと、恐ろしいです(笑)」

そんな難しい題材を選んだのは、つるま氏がフィギュアスケート王国・愛知県の出身だったからだという。小さい頃からテレビで見ていた選手たちが、ここに至るまでにどんな努力を積み重ねてきたのか気になったのがきっかけだった。

「いざ描こうと思っても、何を描けばいいのかもわからなくて、自分が経験しなきゃダメだと思って、フィギュアスケートのスクールに通ったんです。そしたら、練習中に複雑骨折してしまって。連載決定の知らせを聞いたのは病院のベッドの上だったんです。そのときは喜ぶに喜べずみたいな状況でしたね(笑)」

氷上の華麗な戦いと、熱い人間ドラマが魅力の『メダリスト』。現在第6巻まで発売中

連載決定前に取材しても連載ができなければ徒労どころか、骨折しただけで終わっていたのだが、つるま氏は「新しい世界を知れるのは、人生の大きな財産になりますから」と笑って話す。

そんなつるま氏のような前向きなキャラクターたちが『メダリスト』の大きな魅力の一つだ。5歳ではじめていなければ遅いと言われるフィギュアスケート界に、11歳という年齢で足を踏み入れたいのりは、周囲からの声に押しつぶされてしまいそうになりながらも、その声を跳ね返していく。いのりが、その時、どういう気持ちになり、どう乗り越えていくのかという心情が細やかに描かれている。

「私は人の心の機微を描ける漫画家になりたいとずっと思ってきたので、司やいのりが勝ちたいと思う気持ちはどこから来たのかや、キャラクターたちの心の動きを丁寧に追っていきたいなと思っています。だから、そういう感想を目にすると、“ちゃんと届いているんだ”ってとてもうれしくなります。

あと、いのりと同世代のフィギュアスケート選手の子たちが読んでくれているという声も聞くようになってきて、その時は背中に翼が生えたかのように舞い上がっちゃいますね。取材をたくさんしてきた甲斐があったなって思います。普段は『メダリスト』一色の生活を送っているんですが、唯一、一息つけるのが、作画から次話のネームに切り替わる瞬間です。その時に編集部経由で届けられる読者アンケートを、嬉しく拝見しています。いつも仕事の邪魔にならないようにスマホにアクセス制限をかけているのですが、その一瞬だけはスマホも解禁します(笑)」

『メダリスト』が、様々な人の挑戦をするきっかけとなってほしいと話すつるま氏。主人公である、司といのりの挑戦は、7巻でついに全日本選手権という大舞台を迎える。最後に、『メダリスト』の今後の見どころをこう話してくれた。

「次巻からいよいよ、ブロック大会を終え、いのりがはじめて全日本選手権に出場します。そこで、ようやく因縁のライバルであり、フィギュア界の天才少女として注目を浴びる光と対決することになります。その対決の行方はもちろん、いままで明かしてこなかった光の素性も明らかになっていきますので、是非、そこを楽しみにしていていただけたら嬉しいです」

『メダリスト』第7巻の発売はフィギュアスケートシーズン真っ只中の12月下旬予定。選手たちの熱演とともに、司といのりの活躍を楽しみたい。

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  • 取材・文味道苑

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