NHKしかできなかった…オダギリジョー『オリバーな犬』誕生秘話 | FRIDAYデジタル

NHKしかできなかった…オダギリジョー『オリバーな犬』誕生秘話

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真剣に演出を指導するオダギリジョー。一人四役をこなした『オリバーな犬』はネットを中心に話題に…
真剣に演出を指導するオダギリジョー。一人四役をこなした『オリバーな犬』はネットを中心に話題に…

オダギリジョーが脚本・演出・出演・編集の一人四役を務めるドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK)。シーズン2の放送は終わったものの、ネット民の間では早くもシーズン3を求める声が上がっている。

この作品は、鑑識課警察犬係に所属する警察官・青葉一平(池松壮亮)が、相棒である警察犬オリバー(オダギリ)と迷コンビを組み事件に挑むサスペンスドラマ。去年放送されたシリーズ1から10日後の世界を描いた今シリーズでは、11年前に失踪した美少女・北條かすみ(玉城ティナ)、そして事件の鍵を握ると見られたヤクザ組織『関東明神会』の若頭・龍門(松重豊)も殺害され犯人探しが行われる。

最終回では神々廻(橋爪功)が怪しいと睨む一平が捕まってしまったオリバーを助けるためにトントン牧場に潜入。クライマックスを迎え、予想のはるか斜め上を行く結末が待っていた。

「警報が鳴り響く中、いよいよ神々廻たちとの全面抗争が始まるかと思いきやカメラは突然、ズームバック。すると出演者たちが舞台の上にいるという予測不能の展開に、辛口で知られるネット民も大興奮しています。

しかもヘリコプターに乗って逃げる神々廻がマスクを取ると“オダギリジョー”が現れる奇想天外なラストシーンには、唖然とする視聴者が続出。早くも次回作を望む声が殺到しています」(ワイドショー関係者)

豪華すぎるキャスト陣には、今シリーズからさらに松たか子、黒木華、松田龍平&翔太兄弟、浜辺美波に染谷将太、仲野太賀、村上虹郎たちが加わり、放送開始前から話題を呼んでいた。

さらに第2話でみせた青葉と上司・漆原冴子(麻生久美子)の1分間にわたる「え?」の応酬をはじめとするシュールな会話劇や動画分割など、今シーズンではオダギリワールドがさらに加速。これに対して称賛の意味を込めて、“攻めすぎNHK”の声も寄せられている。

だが、これほど斬新な企画がなぜNHKで成立したのか。首をかしげる視聴者も多い。

「一見NHKらしからぬ企画に見えるかもしれませんが、『オリバーな犬』は民放GP帯では絶対に成立しないドラマ。そのあたりをオダギリ自身も『NHKはスボンサーを持たない強さだったり、自社のコンプライアンスで計算できる強さを持っている』。

さらに『今のドラマって、やっぱりものづくりが難しい時代。それに対して一石を投じる気持ちがあった』とコメントしています。『オリバーな犬』は、そんな時代に風穴を開ける画期的なコンテンツであったことは間違いありません」(制作会社プロデューサー)

オダギリとNHKの蜜月関係から生まれた『オリバーな犬』。きっかけは一体なんなのか。その秘密が、オダギリが10年の歳月をかけて作り上げた長編映画に隠されている。

「オダギリは’20年に長年温めてきたオリジナル脚本を映画化。初監督作品となった『ある船頭の話』は、近代化以前の山村を舞台に村と町を繋ぐ川の船頭を続けてきたトイチ(柄本明)を主人公に据え、文明のあり方、人間にとって大切なものは何かを問いかける“古き良き日本映画”を思わせる作品。スタッフには世界的なカメラマン、クリストファー・ドイルをはじめ、これまで培ったオダギリの人脈から国際的な顔ぶれが揃っています」(同・プロデューサー)

完成した作品はヴェネツィア国際映画祭で、革新的作品を集めたベニス・デイズ部門に出品。公式に上映され、高い評価を得た。

「実は『オリバーな犬』には、『ある船頭の話』に主演した柄本明をはじめ村上虹郎、村上淳、永瀬正敏、橋爪功、細野晴臣といった出演者たちが勢揃い。10年分の思いがこもった『ある船頭の話』を観て、オダギリの作品なら参加したいと考えている俳優やスタッフは今、数多くいます。そうした思いを共有する仲間の中にNHKのスタッフもいたというわけです」(同・プロデューサー)

さらにオダギリが朝ドラに出演したことも『オリバーな犬』にとってはプラスに働いているのではないか。

「オダギリは昨年後期の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)に出演。2代目ヒロイン・るい(深津絵里)の夫で、戦災孤児として育ち、原因不明の病でジャズトランペッターの夢を諦めた大月錠一郎役を演じています。この仕事を引き受けるにあたり『僕は夜中の作品の方がしっくりくる』『今までインディーズや小さな作品に重きを置いて活動してきたので自分らしくない』などの理由から引き受けるかどうか悩み、最終的には脚本家・藤本有紀がオダギリをイメージして書いた役だと知り引き受けています。

『カムカム』の放送は、『オリバーな犬』の前シリーズの放送後とはいえ、『カムカム』に出演し好評を得たことが『オリバーな犬』シリーズ化の背中を押したことは間違いないでしょう」(制作会社ディレクター)

これがNHKとオダギリの“戦略”だったかどうかは定かではない。しかし『オリバーな犬』という斬新なドラマが、今のドラマ界に一石投じたことは紛れもない事実だ――。

 

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO近藤 裕介

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