その数1300匹!インドネシア保護猫施設が直面する現状と課題 | FRIDAYデジタル

その数1300匹!インドネシア保護猫施設が直面する現状と課題

インドネシア最大の民間保護猫団体「ルマ・シンガ・クロウ」。運営費用はすべて寄付で賄っているという同団体の主催者が指摘した、インドネシアの保護猫事情とは

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約1300匹の猫が暮らすジャカルタ郊外の保護猫施設。’16年の立ち上げから、徐々に数が増えていったという
約1300匹の猫が暮らすジャカルタ郊外の保護猫施設。’16年の立ち上げから、徐々に数が増えていったという

床一面に猫、猫、猫――。

タイルの上にまるで絨毯のように寝そべる大量の猫が住むのは、インドネシアの首都ジャカルタ郊外にある民間保護猫団体「ルマ・シンガ・クロウ」の施設だ。このインドネシア国内最大の団体では現在、約1300匹の猫が保護されているという。

「虐待などのひどい目にあっている猫があまりに多いことに驚きました」

こう話すのは、団体を主催するビンビンさん。元々ペット猫に関係する仕事をしていたが、アゴの骨を折られるなどの虐待を受けている猫を見て、’16年に保護シェルターとしてこの団体を立ち上げた。

設立当初は50匹程度だったが、受け入れ拒否はしないとの方針のもとで、ジャカルタや周辺を中心に保護猫が次々に運び込まれてきた。現在では「1日に消費するエサは、キャットフードで60㎏、鳥の頭は30〜40㎏」(ビンビンさん)にも上る。施設内ではビタミンや薬の投与も行うなど、病院のような印象も受ける。

この団体は全額寄付だけで成り立っているという。InstagramをメインにSNSを使って団体の活動を宣伝、保護猫情報の収集や虐待の現状を発信し、1万ルピア(日本円で約100円)など少額からの寄付を募ってきた。

SNS上には顔を刃物で斬られたり、足を折られたりするなどの虐待を受けた痛々しい写真もアップされており、保護猫を取り巻く状況の深刻さを感じ取ったSNSユーザーからの共感が団体を支えてきた。

ただ、動物保護の活動について理解がある人ばかりとは限らない。団体も心無い誹謗中傷を受けたり、「活動を開始した時はSNSが何回もハッキングされるなど、嫌がらせをされたこともあった」(ビンビンさん)という。

ビンビンさんたちはそうした嫌がらせに負けず粘り強く活動を続けた。猫を虐待した写真や動画をSNSに上げる人をフォロワーの通報によって見つけ、追及するなどしてきた結果、相手が謝罪するケースも出てきたという。

ビンビンさんは「猫の虐待は禁錮や罰金という刑事罰が科される犯罪行為であることを社会に周知できたことは成果だ」と話した上で、

「自分たち人間よりも弱い猫を虐待するなどのサディスティックな行為に出る人は、単なる動物嫌いというよりも精神的な病を抱えてることが多いのではないかと思う」

と指摘する。

ジャカルタの街を歩くと、猫の姿は日常的に見られる。野良猫が人通りの多い道や歩道橋などに無防備に寝そべるなど、日本の感覚からは考えられないほど人との距離が近い。

これほど街中に猫が多い理由は、インドネシアが猫を神聖な動物とするイスラム教の国だからという面が大きい。イスラム教の始祖であるムハンマドは愛猫ムエザを膝に乗せて説教をしたとされるほどの猫好きで、ムエザが袖の上で眠っていた時にムエザを起こすのではなくその片袖を切ってしまったとのエピソードも伝わる。

猫を大事にする習慣は人口2億7000万人を抱え「世界最大のイスラム国家」といわれるインドネシアだけでなく、トルコやモロッコなど他のイスラム国家でも広く見られる。

一方で、一旦ペットとして飼われたものの、飽きて捨てられたりするケースも少なくない。野良猫が増えると生態系に悪影響を引き起こす懸念もある。日本では自治体が保護猫の去勢や避妊の手術の費用を助成するなどの対策を実施しているが、これは猫が増えすぎる悪影響を防ぐことが目的だ。

ビンビンさんは「保護猫の数を中長期的に減らしていくには去勢や避妊の処置で出生数を減らすことが不可欠だ」と指摘し、インドネシアの政府や自治体の助成制度の拡充を訴えている。

ビンビンさんの団体への寄付はインスタグラム(https://www.instagram.com/rumahsinggahclow/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D)で受け付けている。

日本からもPayPalを通して寄付が可能だ。(https://www.paypal.com/donate?token=rTcEYIHDtunlyHp8WI73Bfq1mst746Nh1MmZBIBYwYqOVwXERPMG143Q9VhvqLLCYY2rQsm4TDvdBxxg&locale.x=US)

施設には、虐待を受けていたと思われる猫も少なくない
施設には、虐待を受けていたと思われる猫も少なくない
猫の世話をする団体の運営スタッフ
猫の世話をする団体の運営スタッフ
薬の投与をするなど、施設では猫の体調面にも気を配っている
薬の投与をするなど、施設では猫の体調面にも気を配っている

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