<figure id="attachment_270429" aria-describedby="caption-attachment-270429" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fafdf636"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/10/2022083112071.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-270429" class="wp-caption-text">保育園への誤支給で謝罪する葛飾区の青木区長。だが、そのウラでは様々な問題点が浮き彫りになり…</figcaption></figure>
《ジャーナリスト・阿部光利の『地方政治を斬る！』》
区民に不利益になりかねない随意契約を区民の税金を使って行っていた事実が、住民の情報公開請求によって明らかになった。
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
東京都葛飾区が、私立保育園に誤って補助金約5億1千万円を過大に支給していた問題で、青木克德区長が
「誤支給した公金の返還を求めないための法的根拠」
を模索していたのである。情報公開によって明らかになった随意契約の仕様書（内容）によると
・私立認可保育園に対する扶助費（補助金）の算定相違による過支給額について、保育所へ返還を求めない事の法的根拠となる見解。
・その際に予測される住民監督請求と住民訴訟の争点の内容を提示する。
上記の2点が区からの要望であり、その要件に応じた港区の弁護士事務所が契約を締結している。
ある葛飾区の住民は
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
「誤って送金した公金だけに返して貰うのが当たり前で、返さなくてもいい方法を税金を使って外部の弁護士に依頼するのはおかしい。区長の住民に対する背信行為である」
と語気を強める。
そもそもの誤支給は、保育園の人手不足の解消を目的に、パートの保育士を雇った私立の認可園に対する補助金で、’18年度から’21年度の4年間に、総額5億1181万円余を過大に支給していた問題である。
誤支給は葛飾区内の87園のうち72園に及び、本来の約2倍の金額を支給した例もあった。新たに導入した計算ソフトの設定ミスが原因で、今年3月に職員が気づいて発覚したのである。
過大に支給した誤支給である事が明確なだけに、区の対応としては保育園関係者にお詫びと事情説明の後、直ちに返還を求めるのが本来の行政としての正当な手続きのはずだ。だが問題発生当初、青木区長と保育園関係者との間で内々の会談があり、青木区長が返還を求めない方針をいち早く決め関係者に伝えているのである。 
しかし、区の職員が“委員会で返還を求める”と発表した事から捻じれが生じ
「請求する」「請求しない」「やはり請求する」
と二転三転の挙句、請求する事が決定された。その過程で、区長の方針であった請求しないための法的根拠を求めて110万円の公金を支出して民間の弁護士事務所と随意契約を締結したのだ。 
更に住民らは
「保育園から不正申請のような納得できない申請があったにも拘らず、区はそれを容認しているのも不可解である」
と訴えている。
<div data-friday-nextpage-lead="不正申請の中身とは…"></div>
実は、31園で計94人の保育士の勤務実態が確認できていない。それが住民には、保育園から不正申請が行われたと映るようである。
区は勤務実態が確認できない事実を委員会で公表しているが、その際に、議員からも
「補助金の不正請求だ」
との指摘があった。しかし区は、
① 全員雇用契約が結ばれている 
② 途中で産休に入った保育士がいた 
③ コロナで勤務が無くなった為
などの理由をあげ
「全てがミスによる申請である」
との見解で不問に処したのである。更に捜査機関への通報を行わない方針も明らかにしている。
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
一連の責任を取り、青木区長は3か月間減給20%、2人の副区長も3か月間減給10%を給料から減額する条例案を9月議会に提出した。その際に、部長級の職員の減給も青木区長は模索していたのだが、特別区人事委員会からの指摘があり部長級の職員の減給は断念している。青木区長は
「すべては私の判断ミスだ」
と言っていながら、全体責任を求めた事で、職員との亀裂が生じているとの情報も聞こえてきている。
返還を求める額は、保育園により3万円から多いところでは4000万円あまりにのぼる見通し。だが、返還の時期や金額、方法などの方針が決まっていない事から、関係者からは、
「返還されないままに“うやむや”になってしまうのではないか」
との懸念が出ている。
今回の一連の問題は、青木区長のワンマン体制が背景にあると住民は指摘している。
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
給食費無償化問題が審議されている文教委員会を傍聴した際に、議員から
「区長は、各会派の幹事長にも委員会の委員にも報告がないまま勝手に専決で決めている」
との発言があった。過去にも
「議会に報告がないままに決めて事後報告で進めているのは議会軽視だ」
との意見も出ている。
2大代表制の地方自治体において、専決処分（注：本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄について、地方公共団体の長が地方自治法（昭和22年法律第67号）の規定に基づいて、議会の議決・決定の前に自ら処理することをいう）で物事が決まっていく様は、葛飾区の住民にも、健全な姿とは映らないだけではなく危機感すら覚えているようである。
誤支給は葛飾区のミスが発端ではあるが、約5億円の公金を
「返還しなくてもいい法的根拠を110万円の公金を使って模索する」
区長の金銭感覚は何なのだろうか。
弁護士事務所が提出した、25頁に及ぶ意見書（調査回答）は、区長が模索していた「保育園から返還を求めないことが相当である」というものであったが、区はそれを公表することなく、意見書（調査回答）とは真逆の「全額返還を求めること」を選択している。
意見書（調査回答）の中で、区長個人への責任問題にも言及している。保育園からの返還を求めないことを選択した場合、区長自らがその額を払わなければならない可能性が指摘されているのである。
弁護士事務所との随意契約は税金から110万円を支出して法律上の正当性を立証するのが目的であったが、結局は、リスクを避け安全策を選択した事になる。
先にも触れたとおり、この度の不祥事の責任を取り青木区長は減給20%（3か月）を申請している。計算してみると区長の給与減額は75万円であった。

『タイム３』『おはよう! ナイスデイ』『とくダネ！』（フジテレビ系）などの8番組でリポーターとして活躍。広告代理店経営の後、‘11年から‘19年まで東京都台東区議会議員に。その後、衆議院議員の公設第一秘書に就任。現在は行政の諸問題や社会問題などを独特の視点で取材、執筆活動を続けている

阿部光利（地方政治ジャーナリスト、元TVリポーター）

共同通信

私立保育園に誤って補助金約5億1千万円を過大に支給していたことが発覚した葛飾区。そのお金を区長が「返還しなくていい」法的根拠を随意契約で弁護士に頼んだこともバレて…

青木葛飾区長「公金返還求めないため」の税金支出がバレて住民激怒

あなたへのオススメ

関連記事