CAでなく「グラハン」!ハードだけど飛行機女子を魅了する仕事 | FRIDAYデジタル

CAでなく「グラハン」!ハードだけど飛行機女子を魅了する仕事

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いまや採用者の約4割は女性!

「日焼け止めをいくら塗っても、外に出た瞬間に汗で流れ落ちるので、塗るのを諦めました」(JALグランドサービス・山本芽生さん)

空港における「グランドハンドリング」(通称・グラハン)という仕事をご存じだろうか。運航便の到着から出発までの間、航空機の誘導やプッシュバック(自力走行できる誘導路まで航空機を押し出すこと)、旅客の手荷物や貨物コンテナなどの搭降載、機体の移動などの地上作業を行う。航空機の安全と定時運航をしっかり支える“縁の下の力持ち”的な存在だ。

1年365日、雨の日も風の日も雪の日も、酷暑でも厳寒でも、基本は屋外で作業を行う。現場の作業環境は厳しい。一昔前は、男性スタッフしかいないような職場だった。

そんな職場に今、女性スタッフが増えている。日本航空(JAL)グループ運航便などのグランドハンドリングを担うJALグランドサービス(JGS)によると、近年スタッフ募集を行うたびに女性の応募者が増え、いまや採用者の約4割は女性。採用担当者も「10年前と比較すると、女性のグラハン志望者は飛躍的に増えている」といい、職場環境をはじめ、働きかたの改善を積極的に進めている。

航空業界で働く女性といえば、客室乗務員(CA)のほか、空港のカウンターで搭乗手続き(チェックイン)作業などを行うグランドスタッフが昔から多く、現在も大半が女性だ。羽田空港の現場を取材した。 

JALグランドサービスの山本芽生さん(写真左)と福田友里子さん
JALグランドサービスの山本芽生さん(写真左)と福田友里子さん

チームワークが欠かせない仕事内容、限られた時間での作業

グランドハンドリングの作業は、まさに「チームワーク」で行う。航空機が到着し、次に出発するまでは1時間あまり。その間に一連の作業を完了しなければいけない。

到着機をスポット(駐機場)へ誘導し、機体にPBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ=搭乗橋)を取り付け、貨物コンテナや手荷物などを搬出する。その後、次便の貨物コンテナや手荷物などを搭載し、乗客が搭乗を終えるとPBBを外し、プッシュバック(航空機を押し出す)の準備を行う。

そして、トーイングカー(航空機牽引車)で、出発機をスポットから出して誘導路へ。地上スタッフが一列に並び、手を振って見送る光景は見たことがある人も多いだろう。これで作業は完了。1便あたり担当するスタッフの数は航空機の大きさなどで異なり、国内線主力機のエアバスA350型機の場合は5~6名という。

JGSでは、空港のグランドハンドリングで働く女性スタッフが近年増えている
JGSでは、空港のグランドハンドリングで働く女性スタッフが近年増えている

JALグループの会社で働く女性スタッフに密着取材

今回取材したのはJGSの女性スタッフの2名。入社3年目の山本芽生さんと、入社4年目の福田友里子さんだ。

2人が担当したのは、14時ちょうどの羽田発福岡行きJAL321便。12時40分に到着した航空機に、山本さんはトーイングトラクターで貨物コンテナを運搬後、機内の貨物室に搭載する作業を、福田さんはトーイングカーで出発機をプッシュバックする作業を担当していた。羽田―福岡路線は国内線では大きめの機体かつ乗客と貨物の数も少なくないため、作業量は多い。

限られた時間内でテキパキと作業しているが、決してラクではない。全部で数トン分になるコンテナを手際よく取り扱うのもコツが要り、プッシュバック前に機体とトーイングカーをつなぐ「トーバー」と呼ばれる棒を連結、取り外しするのも2人がかりで、手作業で行う。2人を含め担当する全員が力を合わせて作業を確実にこなさなければ、安全運航、定時運航にも影響する。

JALの国内線主力機、エアバスA350型機。羽田―伊丹、新千歳、福岡、那覇着などの路線で運航されている最新鋭の機種。369名乗り/391名乗り(座席配置などによる)
JALの国内線主力機、エアバスA350型機。羽田―伊丹、新千歳、福岡、那覇着などの路線で運航されている最新鋭の機種。369名乗り/391名乗り(座席配置などによる)
貨物のコンテナをハイリフトローダーと呼ばれる特殊器材に乗せる。コンテナの重さは1個1トン以上あることも
貨物のコンテナをハイリフトローダーと呼ばれる特殊器材に乗せる。コンテナの重さは1個1トン以上あることも
トーイングトラクター(TT車)は最大6個の貨物コンテナ運搬が可能
トーイングトラクター(TT車)は最大6個の貨物コンテナ運搬が可能
ペットもお客さまの大切な家族。動物が不安にならないよう、積み下ろし作業は細心の注意を払う
ペットもお客さまの大切な家族。動物が不安にならないよう、積み下ろし作業は細心の注意を払う

グラハンを志望したキッカケ

山本さんは、大学卒業後にJGSへ入社。もともと航空関連の仕事がしたかったわけではないが、世界中で活躍できる職場を探し、グラハンの仕事を見つけたとのこと。一方、福田さんは以前もグラハンの仕事を別会社で行ってきた経験があり、さらに活躍の場を求めてJGSへ転職した。

2人が口を揃えてまず語ってくれたのは、想像をはるかに超えていた職場環境の厳しさ。

夏は照りつける太陽で地面からの熱は尋常ではなく、体感温度が実体温を超えることも頻繁だ。逆に、冬の寒さも過酷だ。到着機を外で待つうち、指先の感覚がなくなってくるという。豪雨のときは、雨にひたすら打たれながら作業を行う。

「激しく降る雨の日、しかも夜だと、地面に引かれたラインもとても見えづらく、プッシュバックする際はいつも以上に慎重になります」

とトーイングカーの運転を担当する福田さんは話す。大変なのは、実際の仕事だけではない。トーイングカーなどを取り扱うのにそれぞれ「資格」が必要だ。数ヵ月の訓練を経て試験に合格した後、初めてその作業を担うことができる。当然ながら男女とも同じ条件である。

トーバーの連結作業は2人がかりで、呼吸を合わせて行う
トーバーの連結作業は2人がかりで、呼吸を合わせて行う
トーイングカーとトーバーの連結は、機体へのダメージを与えないように慎重な作業が求められる
トーイングカーとトーバーの連結は、機体へのダメージを与えないように慎重な作業が求められる

過酷な現場を支える仕事へのプライドと安全への想い

グラハン現場のスタッフを支えるのは「仕事へのやりがい」だ。

「安全を支えるための確認行為を『これで良し』のレベルに留めず、さらにひと手間かける『質の追求』にこだわることこそ、羽田空港発着のフライトを支える私たちのプライドです」

と2人は語る。 JGSでは、「ご搭乗いただいたお客さまへの想い」「支えてくれる仲間の想い」のための努力、仕事に情熱や信念を持つことを「東京PRIDE」と呼んでいる。

「すべての作業完了後、機内のお客さまと手を振りあう関係は『言葉によらないお客さまとのコミュニケーション』の証です」(福田さん) 

「達成感で気持ちが充たされると同時に、グラハンという仕事は飛行機の安全運航を支える重要な役割を担っていて、『将来何かを支える仕事に就きたい』という学生時代の想いが、今、実現できています」(山本さん)

取材に応じてくれた2名はそう話してくれた。

羽田空港で出発機を見送る山本さんと福田さん(写真左と右)
羽田空港で出発機を見送る山本さんと福田さん(写真左と右)
お客さまに寄り添ったファインサービスには、JGS東京支店長が自筆の感謝メッセージを添えたサンクスカードで激励(画像:JALグランドサービス提供)
お客さまに寄り添ったファインサービスには、JGS東京支店長が自筆の感謝メッセージを添えたサンクスカードで激励(画像:JALグランドサービス提供)

「ちょっと前までグラハン現場で女性スタッフとすれ違うのは珍しかったのが、今は本当に増えました」(福田さん)

以前の職場も含めグラハン歴7年の福田さんは、女性がまだ少なかったころの様子を振り返る。JGSによると、男性が大半だった職場に女性が増えるにつれ、職場のコミュニケーションも向上し、活気が出るという相乗効果も生まれたとのことだった。

羽田空港の展望デッキからも見えるグラハンの作業。機会があれば、その仕事ぶりも見てみてほしい。写真のボーイング787型機もJAL国内線で主力機の1つ
羽田空港の展望デッキからも見えるグラハンの作業。機会があれば、その仕事ぶりも見てみてほしい。写真のボーイング787型機もJAL国内線で主力機の1つ

グラハンスタッフが働く姿は、各空港の展望デッキから見ることができる。羽田空港でもしばらく観察してみると、男性に交じって女性が働く姿を見かけるはずだ。航空業界で活躍する女性の職種、空港のグラハンはその1つとして、いまや定着しつつある。

■記事中の情報、データは2022年10月28日現在のものです。

■シカマアキさんのウェブサイトはコチラ 

  • 取材・文・写真Aki Shikama / シカマアキ

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