アニメ絶好調!『うちの師匠はしっぽがない』人気の「3つの理由」
上方落語をドジッ娘タヌキとツンデレ美人師匠の“百合表現”で味わう
9月30日からTVアニメの放送が始まった『うちの師匠はしっぽがない』。キャラクターたちの自由闊達なやりとりと、上方落語という題材の真新しさで、回を追うごとに人気が高まっている。
主人公のまめだは、淡路で暮らす豆狸一族の雌タヌキだ。「人間を化かしてやろう」と大阪へやってきたまめだだったが、その腕前はからっきし。逆に初めて見た落語の面白さに“化かされ”てしまい、正体がバレてしまう。そんなまめだを助けたのは、人気落語家・大黒亭文狐(だいこくていぶんこ)。最初は「諦めて里に帰れ」とまめだを突き放すが、何度追い払っても諦めず、「化かす」ことに執念を燃やすまめだの弟子入りを認め、二人は一緒に暮らし始める。

奇抜な設定が目を引くが、それ以外にも『うちの師匠はしっぽがない』が人気を集める理由はいくつもある。最大の特徴は、その読後感だ。
まめだはタヌキなので、古典芸能特有の上下関係やルールに縛られない。いつでもどこでも自然体で、師匠である文狐には常にタメ口だし、用意された食事に文句をつけるなど遠慮がない。文狐もまめだのやりたいようにやらせているので、周囲から「イチャイチャしないで」と言われるほどの仲が良いのだ。昔ながらの規則や習わしを厳しく描いていないところが、独特のほんわかした読後感を生んでいる。
声優のキャスティングも、役柄にピッタリだ。高いハリのある声で元気いっぱいにまめだを演じるM.A.O(30)と、落ち着きのある声でクールな文狐を演じる山村響(34)が、ふたりのイチャイチャぶりを見事に表現。キャラクターとの親和性も高い。

最後の人気の秘密は、上方落語への造詣の深さ。まめだは修行しながら少しずつ、上方落語の世界や人間社会について学んでいく。だから本作で初めて上方落語に触れたという人や、落語は知っていたけれども上方落語は初めて知ったという人が、初心者のまめだの目線で上方落語の世界を少しずつ知っていくことができるのが、本作の特徴だ。原作漫画はもちろん、アニメでも最後に上方落語について説明するコーナーがあるので、見ているうちに自然と上方落語の楽しみ方がわかってくる。
興味を持ったら、ぜひ上方落語家の桂米紫さんのTwitter(@beishi_katsura)もチェックしてもらいたい。まめだの名前の元になった噺『まめだ』を演じる寄席の案内や、原作者のTNSKさんとの交流についてのツイートもあるので、また違った角度から作品を楽しむことができる。アニメも中盤に差し掛かり、ますます盛り上がりを見せるまめだと文狐の物語の行方が、これからも楽しみだ。
取材・文:中村美奈子