元JTB社員がやらかした「51人から24億円」巨額詐欺の手口

JTB関東の社員だった田村泰暢容疑者(49)が起こした近年稀に見る巨額詐欺事件。札束を見せて、社名を悪用したというその手口とは?

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’10年に得意先の社員旅行に添乗員として同行した田村容疑者(右端)。普段の仕事ぶりは真面目だったという

51人から総額24億円――。

近年稀に見る巨額詐欺事件の犯人が、8月8日、栃木県警に逮捕された。’10年頃から約6年にわたり詐欺に手を染め、多額のカネを詐取した田村泰暢(よしのぶ)容疑者(49)は、犯行当時、大手旅行会社JTBの完全子会社である「JTB関東」の社員だった。田村容疑者はJTBの別の子会社を経て、JTB関東に’06年の設立時から在籍。栃木県足利市や群馬県高崎市の支店に勤務していた。

1000万円近いカネを騙し取られた被害者の吉田正良さん(仮名)が、その手口を証言する。

「私が田村と知り合ったのは、’11年の8月でした。知人から、『JTBの社員でいろんな業界に顔の広い人がいるから、会ってみたら』と言われて。私は自営業をやっているので、仕事に繋がるかもと思って会いました。後でわかったことですが、紹介してくれたその知人もすでに田村の被害にあっていたみたいです」

東北出身の朴訥で真面目な人物。それが、田村容疑者の第一印象だった。だが、そんなイメージとは裏腹に、容疑者は初対面から詐欺を仕掛けてきたという。


「『JTBの外貨両替に申し込みませんか』と言ってきました。『JTBを通じて円をドルに替えると、手数料の4%がもらえるんです』と熱心にプレゼンしてきた。仮に1000万円申し込んだとすれば、3ヵ月に一度40万円をもらえて、希望すればいつでも元本も返してくれる、というものでした」

なぜ両替して手数料をもらえるのか疑問だったが、「預かったカネをJTBが運用する。JTBだからできるサービス」という容疑者の言葉を信用し、後日、吉田さんは100万円をわたしてしまった。

「カネは田村個人ではなく、JTBに預けた気持ちでいました。というのも、田村と会った後に検索したら、『外貨両替サービス』というビジネスを確かにJTBはやっていたんです。その後は、『ノルマが厳しい』などと田村に言われるたびにカネを払い、結局1000万円近いカネをわたしてしまいました」

狡猾にも田村容疑者は、実際にあるJTBのサービス名を出しただけでなく、会社が作成したパンフレットまで見せた上、社名入りの領収書まで手渡して被害者から信用を得ていたという。そして極めつけには、自分がいかに手堅く儲けているかを証明するため、5000万円以上はあろうかという大量の札束を見せることまであった(下写真)。

こうして50人以上から大金を荒稼ぎした容疑者だが、「手数料」の振り込みは次第に滞るようになり、’16年頃から連絡もつかなくなった。被害者のなかには、JTBに直接乗り込んで、「田村を出せ」と迫る者もあり、露見を怖れた容疑者は少しでも罪を軽くしようと思ったのか、’16年7月に足利署に自首。その直後、JTBも懲戒解雇された。被害者が多数にのぼったため捜査は慎重に行われ、このたびようやく逮捕となった。

被害者31人の代理人を務める塚越敏夫弁護士が言う。

「5500万円もの被害にあった方もおり、田村に対しては、民事でも損害賠償を求めて提訴しています。判決はすでに昨年4月28日に出ており、4億1400万円の支払い命令が下されていますが、田村はいまだ一銭たりとも払っていません。田村が社名入りの名刺や領収書を使用していたことから、JTBが詐欺行為を認識していなかったとは考えにくいし、知らなかったとしても違法行為を止めるべき責任はあった。我々は今後も、JTBの使用者責任を追及していきます」

24億円も騙し取っておきながら、カネが返せないのは驚きだが、田村容疑者はいったい何に使っていたのか。今回の事件に詳しい、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が語る。

「’13年7月に栃木県足利市内に277㎡の豪邸を購入し、4台のベンツとレクサスを乗り回していた。また、稼いだカネでカジノにも行っていました。マカオにも行っていたようですが、特に気に入っていたのは韓国。ソウルや釜山のカジノで一晩に1000万円以上を使い、総額では間違いなく数億円のカネを失っています。韓国へ渡航する際には、カジノ側がビジネスクラスの航空券やホテルのスイートルームを用意していたようですから、相当のVIPだったんでしょう」

’16年に自首して以降の2年間、自宅も差し押さえられた田村容疑者は、転居を重ね、バイトをしながら細々と生活をしてきたという。だが、警察はまだ多額のカネを隠し持っていると見て、いまも捜査を進めている。

田村容疑者が被害者に見せた札束。成績優秀者と記された会社の表彰状を見せて信用を得ることもあった

田村容疑者が被害者にわたした社名入りの領収書。但し書きは〈ギフト代金〉になっている

 

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