【完全保存版】がん免疫治療が受けられる病院〔最新リスト〕

監修・中村祐輔〔「がん研」プレシジョン医療研究センター長〕

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昨年、シカゴから凱旋帰国した中村祐輔医師。がん研有明病院で免疫療法の礎となるゲノム研究を進める

「免疫療法は日々進歩しています。ゲノムという人の遺伝子(DNA)解析が急速に進歩し、がん治療に活(い)かせるようになったのです。患者さん自身のがん細胞の遺伝子情報をがん診断や新しい免疫療法の治療に活用するという、これまで夢物語と考えられていたことが実際に行えるようになってきました。それが現実味を帯びたのは、何よりもシーケンス(遺伝子解析)にかかる時間やコストが飛躍的に進化を遂げたことが大きい。’01年から’18年までの17年間で、遺伝子解析にかかる時間は実に約50万分の1、価格は100万分の1になりました。十数年で3000億円かかっていたゲノム解析当初を振り返ると、この進化のスピードは驚異的で、想像をはるかに上回っています」

そう語るのは、がんの個別化医療に尽力するゲノム解析の第一人者で、「がん研究会」がんプレシジョン医療研究センター所長・中村祐輔医師(66)だ。

昨年、中村医師がシカゴから凱旋帰国したのを機に、筆者は8回にわたり最先端のゲノム医療現場を取材してきた。今回はその総集編と、がん免疫治療が受けられる病院の最新情報をお届けしよう。

がんの種類も、進行度合いも関係なし。増殖を続けるがん細胞が患者自身のリンパ球によって死滅する――。下①~③の写真は、その劇的な瞬間をカメラが捉えたものだ。写真①を見てほしい。白く色が抜けて丸く見えるのが、がん細胞。がん細胞よりも小ぶりな丸い組織がリンパ球だ。

このがん細胞に”ある働き”を持つリンパ球を加えると、瞬(またた)く間にがん細胞をぐるりと取り囲み、総攻撃が仕掛けられた。すると、がん細胞は次々に「パチン!」と弾けるように消えてしまったのだ。

「これは、がん細胞が死滅したことを意味しています。実は、がん組織の中にあるリンパ球には、『がん細胞を攻撃する』という性質を持ったものが存在している。ただし、そのリンパ球の数は患者さんごとに異なり、がんを攻撃するリンパ球がほとんどいないこともある。鍵になるのは、患者さんのがん細胞に、自身のリンパ球が”敵”とみなす目印があるかどうか。この目印は、がん細胞に起きる遺伝子の異常に関係しています。がんのゲノム解析が簡単にできるようになったことで、がん細胞にある目印を推測することが可能になった。新しい免疫療法は、この原理を活かしたオーダーメイドがんワクチンなのです」(前出・中村医師)

 

写真①〜③はリンパ球が、がん細胞を「敵」と認識して攻撃を仕掛けた瞬間。がん細胞はダメージを受け、消滅した

オーダーメイドがんワクチンとは、いわば一着一着、その人の体型や体質に合わせた服をあつらえるようにがん細胞の特徴(目印)をつかんでワクチンを作る治療法。専門的には、「ネオアンチゲン療法」と呼ばれる。中村医師は「多くのがん患者の中でも、とくに選択肢が無くなってしまった闘病中の患者さんができるだけ治療を受けられるように、今年度中には民間病院主導の治験を始めたい」と準備に奔走中だ。この新たな免疫療法を受けられるクリニックが東京・大阪・福岡にある(自由診療)。いずれも、細胞の培養施設を備え、投与後の効果判定まで行っている専門機関。免疫療法の研究・治療に30年以上取り組んできた実績があるのだ(下の一覧表参照)。

3枚目の写真は、福岡がん総合クリニック(福岡市)の院長・森崎隆医師(60)がオーダーメイドがんワクチン注射を患者に打つ瞬間を捉えたものだ。

「このワクチン治療は、1回ごとの治療はほんの一瞬で、治療費は各回15万円で済む。ただオーダーメイドですから、患者さんも我々も、時間をかけて準備を進める必要があります。まず、ワクチンを作るには、大前提として患者さん自身のフレッシュながん組織を遺伝子解析に出さなければいけません。そのため、患者さんが治療を希望されても、この適応条件が大きなハードルになってしまうことのほうがまだ圧倒的に多いのが現状です。通常、手術で摘出された腫瘍はホルマリン漬けにされて治療先で保存されています。そのため、ネオアンチゲン療法を行うための十分な遺伝子情報が得られません」(森崎医師)

つまり、そもそもがんの手術を受ける前に、このワクチンの存在を知っていることが重要になるのだ。がんの手術をした時点で新鮮ながん組織を確保すること、これこそがワクチン治療にとって必要不可欠となる。

「もうひとつ、成分採血といって、培養に必要な成分だけを患者さんの血液から抜き取る特殊な採血を行う必要もあります。1回当たり1~2時間かかるため、体重が40㎏を切っている人は、体力的に受けることが難しくなる。さらに、ワクチンができるまでに2ヵ月。そこから治療に3ヵ月。つまり、最低約半年という時間をみなければなりません。命のリミットを切られた患者さんには、こうした時間の問題もハードルとなっています。だからこそ、早い段階で新鮮ながん組織を用意できていれば、必要なときにワクチンを作ることができるようになるのです」(前出・森崎医師)

エコー(超音波)を見ながら患者の鼠径部のリンパ節にオーダーメイドがんワクチンを注射する森崎隆医師

実際にがんが縮小した

遺伝子解析に新鮮ながん組織が必要といっても、用意する量は小指の爪先程度。2~3㎜の組織切片で十分だ。そのため、手術の予定がない人でも、針生検で採れれば遺伝子解析を行うことができる。

福岡がん総合クリニックでは、昨年8月の取材時点で7名のがん患者が実際にワクチン治療を受けており(現在も治療は継続中)、「すでに抗がん剤が効かなくなったがんが縮小している、または新たながんが発生していない」(森崎医師)という驚くべき結果がほぼ全員に出始めているのだ。

この免疫療法は、がんの再発予防にも活用できる。東京・新宿のビオセラクリニック(谷川啓司院長・54)では、大腸がんが1年後に十二指腸の周囲の腹膜に再発し、手術で切除した患者が、再々発防止を目的にこのワクチンを受けている。

「この患者さんは再発がんを切除する際に、手術先の医療機関の協力でがん組織の一部を新鮮な状態で保存できた。だからこそ、遺伝子解析が可能になり、がんワクチンを作ることができました。現在はご本人の希望で、術後に行う抗がん剤と併用してがんワクチンを投与しています。この方は日本人に珍しいタイプの遺伝子型で、従来の免疫治療では使えるワクチンの種類が少なかった。ちょうど手術のタイミングでネオアンチゲン療法が使えるようになり、より強い効果を期待して切り替えました。副作用もなく、標準治療と組み合わせることで相乗効果も望めます」(谷川医師)

従来のがん治療は、「○○がんにはこのクスリ」というふうに、がんごとに対策が施されてきた。しかし、今後はがんの種類に関係なく患者の遺伝子解析を活かしたワクチンが作られることになるだろう。この治療法が保険適用となれば、経済的にも誰もが受けやすい身近なものになる。がんと闘う人々にとって、新たな希望の光となる日が待たれている。

遺伝子解析に必要ながん組織は2~3㎜あればOK。保存液の入った専用容器で検査機関へ送る
新鮮ながん細胞は遺伝子解析にかけられ、徹底的な品質・安全性の管理のもとでワクチンが作られていく

 

  • 取材・構成青木直美(医療ジャーナリスト)撮影濱﨑慎治(1枚目、4枚目) 浜村菜月(3枚目、5枚目)

Photo Gallary6

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