実録番組出演で話題…芸人・フジタ「僕が父を許した本当の理由」

「自分の赤裸々な私生活を見せるのは恥ずかしかったですが、それ以上に僕の半生を知ってもらいたかった。誰にも知られないままでいることに、これ以上耐えられなかったんです。
これまでいくら文章や動画で伝えても『一方的な話だ』とか『実はお前がイヤな子供だったから捨てられたんだろ』とか言われてきたんです。今回、テレビですべてを晒(さら)すことで世間の方々に理解してもらえた。本当にうれしいです」

そう語るのは芸人のフジタ（45）。ゲームの世界では圧倒的な知名度を誇り、「ゲーム芸人」と称される。

先日放送されたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』（フジテレビ系）でそんなフジタの壮絶な半生が明らかにされ、大きな反響を呼んでいる。

フジタの人生が暗転したのは小１のとき。母が急逝したのだ。翌年、父が家を出ていき、同級生の母親Ａさんと同居を始めた。フジタは８歳にして一人で生活をすることになってしまった。

「毎週３万円の生活費をもらい、父とはほとんど会いませんでした。学校の父兄参観も、卒業式もたった一人。みんな晴れ着の中、僕だけがいつもの恰好。本当にきつかった。夜も一人。寂しいからファミコンをずっとやっていました。誰かに頼ろう、相談しよう、そんなことは思いつかなかったし、周囲の大人がアドバイスしてくれることもなかったです」

テレビでは語られなかったが、フジタは中学１年のころ、餓死しかけている。

「３万円の生活費が打ち切られたんです。代わりにＡさんが昼の弁当（中学に給食はなかった）と夕食を持ってきてくれることになった。でも僕はどうしても食べられなかった。どんなにお腹がすいても、ご飯が食べたくて仕方なくても、口に入れられなかった……。父に見つかると怒られるから食事は全部捨てて、食べたふりをしていました。
どんどん体調は悪くなり、げっそり痩せて、一日中だるくて動けなくなりました。１ヵ月くらいしてようやく周囲が僕の異変に気がつき、３万円の生活費の形に戻ったんです」

それから約30年。フジタを苦しめ続けた父はいま、80歳を過ぎ認知症の症状が進んでいる。フジタは日々、施設に入ることを拒む父の荒れはてた家を掃除し、介護をしている。今も父と交際しているＡさんに感情のしこりは残ってはいるものの、ぐっと堪(こら)えて話し合いをしている。

フジタはどうして父を許すことができたのか。

「２０２１年の正月に、父から『会いたい』と連絡があって、５年ぶりに会ったんです。そのとき初めて『これまで悪かったな、すまなかったな』って言ってくれたんです。たった一言なんですが、それで僕は救われた。許すことができた」

それから空白を埋めるようにフジタは父の家に通った。

「あるとき父の家の掃除をしていると、財布が出てきて、中に僕の小さいころの写真が挟んであったんです。小学校に入る前のすごく小さいころの写真。汚れていて、ボロボロだった。長い間財布に入れていたんでしょう。それを見て『父はどこかで僕のことを気にかけていたんだ。父も父なりに苦しんでいたんだ』ということが分かりました。
『ザ・ノンフィクション』出演を父が了承したのは、認知症が発症する前のことでした。これは父なりの贖罪なんだな、と僕は思っています」

37年ぶりに家族を持った男は、淡々とそう言ったあと、少しはにかむような笑顔を見せた。

フジタがレトロゲームの魅力を伝えるYouTubeチャンネル『ゲームダイバー』はコチラ