バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

島 右近

<figure id="attachment_274419" aria-describedby="caption-attachment-274419" style="width: 1178px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1f543e1c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/fbab3802578207d29aee86088c8c3c0d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274419" class="wp-caption-text">ドラマ『ファーストペンギン！』でゴールデン初主演を務める女優の奈緒</figcaption></figure>
現在放送中の水曜ドラマ『ファーストペンギン！』（日本テレビ系）。その中でパブリックイメージを覆して、ガッツ溢れる強くてカッコいい主人公の和佳（のどか）を演じる女優・奈緒の熱演ぶりに大きな注目が集まっている。
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このドラマは、奈緒演じるシングルマザーの岩崎和佳が縁もゆかりもない漁業の世界に飛び込み、漁船団『さんし船団丸』の社長・片岡洋（堤真一）と出会い古い常識や慣習を打ち破り、死にかけた浜を再生させる実話に基づいたサクセスストーリーだ。
これまで流れに身を任せゆったりと生きるタイプの役柄を演じることの多かった奈緒が、なぜ和佳を演じるのかと違和感を覚える視聴者もいたのではないか。しかし奈緒は、そんな心配を第１話のラストシーンで振り払ってみせる。
「漁師が消費者に直接、魚を販売する『お魚ボックス』のアイディアを思いついた和佳は、市役所・県庁・農林水産庁から許可を取りつけ実用化に向け突き進むも、漁協の顔色を伺い尻込みする片岡（堤）に『このままじゃ浜は死ぬ。なんとかしてくれって泣きついてきたのは、どこのどいつだよ』『あんたなんかクソ野郎ですらないわ。ただのクソだよ、クソ!』
と詰め寄れば、『このアマ、イカれちょんのと違うか?』と見下す鼻持ちならない漁協の組合長（梅沢富美男）に対しては『イカれてんのは、テメェだタコ!このままいけば、あんたは間違いなく、この浜を潰した無能な組合長として終わる。そんな計算できないのマジでタコだから!』と怒りをあらわにしてタンカを切った。この２分に及ぶ“ブチ切れ演技”には、ネット民からも称賛する声が殺到しました」（制作会社プロデューサー）
若手実力派俳優といわれる奈緒のGP帯連ドラ初主演となるこのドラマ。オファーを受けた際は、
「主人公・和佳の“何事もあきらめない、ヒーローみたいにタフなところ”にいつか自分がなりたいと思っていた姿が重なり、是非、和佳を演じてみたい」
とコメント。さらに『JIN-仁-』（TBS系）、朝ドラ『ごちそうさま』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』（共にNHK）、『義母と娘のブルース』（TBS系）などの脚本を手掛けたヒットメーカー森下佳子とのコラボにも
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「新しい化学反応が起きるような挑戦ができたらいいな」
と期待を膨らませている。
しかし和佳の姿には、“何事も諦めない”女優・奈緒の素顔が見え隠れする。
<div data-friday-nextpage-lead="奈緒を女優として駆り立てた”原動力”とは…"></div>
「生後７か月で父を亡くし母が懸命に働く姿を見て育った奈緒は、高校の頃に地元福岡でスカウトされ、モデルやテレビ番組のリポーターの仕事をして家計を助けます。やがてワークショップをきっかけに芝居の魅力に目覚め、朝ドラのオーディションにも挑戦。
『まれ』に続く『わろてんか』（共にNHK）では最終審査に残るなど爪痕を残しています。しかし高校卒業後、契約社員として働きながらマネージャーのような仕事も経験。『自分はこのまま演じる側ではなく、支える側になるのか』と悶々とする日々を送っています」（スポーツ紙記者）
そんな彼女に転機が訪れたのは20歳の時。反対する母親を説得して上京すると脚本家・野島伸司のアクターズスクールの門を叩き、学費が免除される特待生に選ばれた。
「すると頭角を現し、’18年上半期の朝ドラ『半分、青い。』のオーディションでは最終選考でヒロイン役を逃すも、ヒロインの親友役を射止め女優として大きなチャンスを掴みます」（前出・制作会社プロデューサー）
数々の映画やドラマで脇役を務めながら若手演技派女優と呼ばれるようになった奈緒は、’19年の話題作『あなたの番です』（日本テレビ系）でストーカーまがいの行動をとる怪演ぶりが評価され、ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞。
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さらに『ハルカの陶』で映画初主演。そして今年に入ると、川端康成の名作をドラマ化した『雪国-SNOW COUNTRY-』（NHK BSプレミアム）では文筆家・島村（高橋一生）と恋に落ちる芸者の駒子役で繊細な演技を見せ、ジャン=ポール・サルトルの話題作、舞台『恭しき娼婦』でも冤罪から逃れるために逃走する黒人青年フレッド（風間俊介）をかくまう娼婦リズィー役を熱演して新境地を切り開いている。
そんな奈緒が満を持してGP帯初主演作に選んだのが、この『ファーストペンギン！』なのだ。
「喜怒哀楽、特に“怒り”の演技が今作では注目されていますが、奈緒の魅力はそれだけではありません。奈緒演じる和佳の見せる“憂いを含む目の演技”こそが、このドラマの隠し味。
もし和佳役を奈緒が演じていなかったら、今作は単なる嘘みたいに痛快なサクセスストーリーで終わっていたかもしれません。しかし奈緒が演じることで、成功するかどうかもわからないギリギリのところで戦ってきた和佳という女性の存在にリアリティと深みを与えています」（制作会社ディレクター）
そんな彼女の憂いを含む寂しそうな目。その武器が存分に活かされた作品がある。それが『ファーストペンギン！』と時同じくして公開された映画『マイ・ブロークン・マリコ』である。
この映画は、漫画家・平庫ワカによる同名漫画が原作。みずから命を絶ったイカガワマリコ（奈緒）の魂を救うために、ブラック企業に勤める親友・シイノトモヨ（永野芽郁）がマリコの毒親から遺骨を強奪して旅に出るロードムービー。
この作品の原作を読み心が激しく動かされた奈緒は
「映画化するなら、これと同じ熱量と想いを正しく伝えないといけない」
と思いを定め、役作りに没頭する。
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「カッターを握りしめ『何かない日なんてないの』と呟くマリコ。また、シイノに『あんた、感覚ぶっ壊れてんじゃねぇの』と言われ『そうだよ。わたし、ぶっ壊れてるの』と答える時にマリコが見せる、理不尽に耐え続けて目の奥の光が消えてしまうような哀しさと危うさは、まさに奈緒にしか演じられないマリコ。試写室でこの作品を観て、顔をくしゃくしゃにして号泣したという奈緒。そんな彼女には、演じることへの執念すら感じます」（前出・制作会社ディレクター）
『ファーストペンギン！』も後半戦に突入。奈緒がGP帯初主演作品でどんな爪痕を残してくれるのか。最終回に向けて、期待は高まるばかりだ――。

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

島右近（放送作家・映像プロデューサー）

原 一平

現在放送中のドラマ『ファーストペンギン！』でゴールデン初主演となった女優・奈緒。そんな彼女が視聴者のハートをつかんで離さないワケとは…

奈緒が『ファーストペンギン！』で魅せる「憂いを含む目」の正体

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