万引きGメンが明かす「コロナ禍の女性窃盗犯」驚愕の手口と動機

「離せ～！」と逮捕を恐れ暴れる70代、失恋のショックで犯行を繰り返す20代

2022年11月23日

中央の女性が窃盗犯。警察に捕まることを恐れカートを激しく動かし抵抗。横転した右下のカートからは、未精算の商品が散乱している

「離せ～！　違う～!!」

捕まえようとする保安員に対し、70代の女性がショッピングカートを激しく動かし抵抗する。駐車場に停（と）めた自分の車へ乗り込もうと、女性が慌てて押したカートは横転。ぎっしり詰まった未精算の商品が、地面にブチまけられた。騒ぎを目撃した人が110番通報。女性は、暴れた理由についてこう話したという。

「前に捕まった時、警察官に『次やったら逮捕するよ』と言われていたので、怖くなった。捕まりたくなかった」

これは関東圏のスーパーマーケットで起きた、万引き発覚現場の様子だ。

統計上、万引きの数は減少している。警察庁によると’11年に10万1340人だった検挙人数は、’21年には5万369人と半減。しかし、専門家の感覚ではむしろ激増しているという。23年にわたり全国の店舗で窃盗行為を取り締まってきた、万引きＧメンの伊東ゆう氏が語る。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で警備員や巡回する警察官の数が減ったため、検挙数が減少しているんです。表面化しない万引きが、多くなったように感じます。セルフレジの普及で、売り場から店員の姿が少なくなったことも要因でしょう。むしろ、コロナ前より被害額が大きくなっている店もあるんです」

薬局やスーパーで目立つのが、女性窃盗犯だ。以前は貧しさから食品などを盗むケースが多かったが、万引きの動機も多様化している。伊東氏が続ける。

「最近増えているのが、転売目的の犯行です。化粧品や日用品を盗んで、フリマアプリ『メルカリ』などで売るんです。換金のために、おまけ付きのチョコレート菓子を50個も万引きした姉妹もいました。外国人の犯行も多くなっている。ベトナム人窃盗団は、盗んだ食品などを自宅アパートで転売しているんです」

窃盗をするのは、客ばかりではない。

「従業員が、スーパーの商品を盗んでいるケースもありました。『自分が働いている店のモノ』ということで、罪悪感も薄かったのでしょう。退店する前に、夕飯の食材などを万引き。犯行に慣れると、盗む量もどんどん増えていったようです。不審に思った店長が私に『おかしいから捕まえてくれ』と依頼し、彼女の犯行が発覚しました」（伊東氏）

伊東氏によると手口も巧妙化。店の出入り口にある探知機にひっかからないように、特殊加工したバッグに盗んだ商品を入れる事例もあるという。なかには10代、20代の若い女性窃盗犯もいる。

「都内のスーパーで捕まえた、20代前半の女性の犯行動機は失恋でした。ショックから摂食障害となり、食べ物の窃盗を繰り返していたんです。10代の少女の大半は、家庭環境に問題があります。親の育児放棄などでお金に困り、学校に通えていない子も多い。貧しいことへのコンプレックスが強く、より良いモノを身につけ優越感に浸（ひた）りたいという理由で万引きを続ける子もいました」（伊東氏）

万引きを個々人のせいだけにはできない。社会全体で解決すべき問題なのだ。