ポーランドにミサイル着弾で2人死亡!考えられる「4つの可能性」 | FRIDAYデジタル

ポーランドにミサイル着弾で2人死亡!考えられる「4つの可能性」

【速報】プーチンの「本質」と、世界戦争回避の方法〜軍事ジャーナリスト・黒井文太郎

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インドネシアで開催中のG20会議。ポーランドでの「ロシアのミサイル爆発疑い」を受けて、世界の指導者たちが緊急会議を行った。岸田文雄首相の姿も 写真:ロイター/アフロ
インドネシアで開催中のG20会議。ポーランドでの「ロシアのミサイル爆発疑い」を受けて、世界の指導者たちが緊急会議を行った。岸田文雄首相の姿も 写真:ロイター/アフロ

11月15日、ウクライナとの国境に近いポーランド東部の町・プシェボドフに2発のミサイルが着弾し、2名が死亡した。ポーランドにミサイルが飛来したのは初めてのことだ。

このミサイルの「正体」について、本稿執筆時点(日本時間16日12時)で、詳細は不明である。

「ロシアがNATOを攻撃?」の衝撃が走った

当初はロシアによる攻撃だとの受け止めが多く「ついにNATO加盟国のポーランドに戦火が飛び火したのか」と国際社会にも大きな緊張が走ったが、詳細がわかるにつれ、状況は複雑さを増した。現地から発信された画像から、発射されたミサイル残骸は、どうやらロシア製の防空システム「S-300」によるものの可能性が高いことが明らかになってきたのだ。

S-300はウクライナ軍も保有しており、ロシア軍によるミサイル攻撃に対する迎撃でしばしば使用している。したがって、今回、ロシア軍からウクライナ西部にミサイル攻撃があり、それを撃ち落とそうとしてウクライナ軍が発射した迎撃ミサイルが、誤作動してポーランド領に着弾した可能性も指摘できるのだ。

ただ、S-300はロシア軍ももちろん保有している。ロシア軍はウクライナ攻撃の過程で弾道ミサイルや巡航ミサイルをかなり消費しているため(ミサイルが足りなくなって)本来、防空作戦に使用するS-300のミサイルを対地攻撃にも使用している。射程的に微妙な距離だが、ベラルーシ南西部から発射すれば届かないこともない。

ミサイル4つの「可能性」

こうしたことから、ミサイルの正体がまだ不明なのだ。可能性としては、

①ロシア軍が故意にポーランド領内を攻撃 

②ロシア軍が誤射 

③ロシア軍ミサイルの迎撃に失敗したウクライナ軍対空ミサイルの流れ着弾 

④ロシア軍ミサイルとウクライナ軍対空ミサイルの両方が着弾(2発着弾のうち1発だけがS-300の可能性も)

など、いくつか考えられる。

これらについては、国境上空を常時監視しているレーダー情報を持ち、さらに着弾現場で残留物を調査しているポーランド当局が、いずれ調査結果を発表するだろう。ちなみに本稿執筆現在、ポーランド当局は慎重な姿勢を維持しており、まだどちらとも言及していない。

なお、当然ながらウクライナのゼレンスキー大統領はロシアによる攻撃だと断定しており、ロシア側は否定しているが、当事者たちの発表はあまり参考にならない。

もっとも、ポーランド領内に着弾したもの以外に、この日、ロシア軍は100発以上のミサイルでウクライナ各地の民間インフラ施設を一斉に攻撃した。ロシア軍は、11日に南部の州都ヘルソン市からの撤退を発表しており、屈辱的な「敗北」の最中にいるが、それを糊塗(こと)するように大規模なミサイル攻撃に出たかたちだ。

プーチンに停戦の意思はない

ロシアはヘルソン撤退にあたって停戦交渉をウクライナ側に呼びかけた形跡があるが、ロシアの方針を決めるのは「プーチン大統領ただひとり」だ。しばしば自分自身の言葉で方針を発表しているプ―チン大統領が明言しない以上、ロシア側が融和的姿勢に転じるなどという話に現実味はない。

今月14日にはトルコで米露の情報機関トップが会談するなど、核戦争回避のための米露の対話チャンネルは生きているが、プーチン大統領はウクライナに降伏を迫る強硬な姿勢を変えていない。プーチン大統領はこれまで「妥協しない指導者」像を自己演出して君臨し続けており、今後もそこから逸脱する徴候は一切ない。

今回、インドネシアでG20会合に出席していたラブロフ外相が日程途中で帰国の途に就いたまさに直後に、これらの大規模ミサイル攻撃は実施された。対話より力、というプ―チン政権の本質を象徴するような出来事といえる。

「世界戦争」を回避するために

ポーランドに着弾したのがどちらのミサイルだったとしても、ロシア軍が大規模なミサイル攻撃を今後も行うことは確実で、いずれ誤作動などでポーランドに飛来する可能性は常にある。

ロシアのこうした活動に対しては、ウクライナ支援国たちはさらに警戒を高めることが必要だ。今月8日には米国で中間選挙があり、バイデン大統領の外交政策に批判的な共和党のトランプ前大統領派が大幅に議席を増やすとウクライナ支援に悪影響が出る懸念があったが、なんとか民主党が踏みとどまったことは、国際社会にとって「朗報」といえる。

今回の事態を受けて、ポーランドは「16日のNATO会合で第4条を発動する可能性がきわめて高い」と発表した。これはロシア軍のミサイルだった可能性があるための措置だが、4条はあくまで協議に留まる。「全締約国に対する攻撃とみなす」「軍事力の使用を含む必要と認められる行動をとる」などの非常に強い措置を規定する第5条とは大きく違う。

とはいえ、NATOの結束を迅速に見せることは、ロシアへの圧力として非常に重要だ。プーチン政権は相手が弱気な姿を見せれば、必ずそれに乗じてくる。NATOはじめウクライナ支援国は、とにかく強気の姿勢を崩さず、ウクライナ支援を引き続き強化していくことが求められる。

11月16日、ウクライナとの国境に近いポーランド東部の村、プシェボドフでミサイルの爆発があった。死者2名。警察に封鎖された現地のようすが生々しい
11月16日、ウクライナとの国境に近いポーランド東部の村、プシェボドフでミサイルの爆発があった。死者2名。警察に封鎖された現地のようすが生々しい
  • 取材・文黒井文太郎写真ロイター/アフロ

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