ウクライナに突如出現! バンクシーからのメッセージを読み解く
子どもが投げ飛ばしている柔道家はプーチンか?
キーウ郊外、激戦地のボロディアンカで立て続けに発見された”新作”が話題に

ロシアの侵攻が始まった直後から、ウクライナの首都キーウ郊外の街、ボロディアンカは激しい戦火に見舞われていた。砲撃で9階建てのマンションが崩壊し、多くの住民が生き埋めになるなど、今回の侵攻でも屈指の激戦地だ。
1万3000人いた住民も、現在は数十名ほどとなった。街の大部分が廃墟と化し、復興も進んでいない。そんな折、イギリスを拠点に活動する正体不明の芸術家・バンクシーが、この街に作品を残したことをインスタグラムで発表した。
「実は、11月に入ってバンクシーによるものと思われるイラストが街中で散見されており、バンクシーがボロディアンカにいるのではないか、と噂になっていました。しかも、今回は作品を制作している最中のバンクシーらしき人物を見た人もいるのです。
作業服を着た4〜5人の男性が大きなバンでやってきて、スプレーと型紙を使って絵を描いていたと。その中で一番年長の40〜50代ほどの髭を生やした男性がバンクシーなのでは、と話題です」(全国紙記者)
バンクシーの作品は、世相を風刺したものが多い。突如現れた”新作”の意味するところを国際ジャーナリストの山田敏弘氏が読み解く。
「彼らがボロディアンカを選んだのは、理不尽なロシア軍侵攻による破壊と暴力を象徴する都市の一つだからでしょう。
子どもがプーチンとおぼしき柔道着姿の男を投げ飛ばしている作品、また新体操選手らしき少女がリボンを持って踊っている作品も見つかっています。強大なロシアに純粋な兵力では5分の1ほどのウクライナが屈しなかったこと、また大きなダメージを受けてなお立ち直っていく今のウクライナの姿を表しています」
山田氏によれば、公開されたタイミングが重要だったという。
「プーチン大統領が密かに和平を模索しているこの状況だからこそ、活きてくる作品です。まだ戦局が不透明だった時期であれば批判される可能性もあった。バンクシーも、この時と場所を狙って作品を発表したのだと思います」
バンクシーの来訪により、再び世界に注目された激戦地の惨状。それこそが、この戦争の理不尽さを忘れるなという我々へのメッセージなのかもしれない。

『FRIDAY』2022年12月2・9日合併号より
写真:朝日新聞社、アフロ