<figure id="attachment_276333" aria-describedby="caption-attachment-276333" style="width: 599px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="81950016"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/cd077157cd453125e2228ee7252dd0d5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-276333" class="wp-caption-text">ドイツ代表からのリクエストを受けて日本の分析を進める３人の日本人。右端が吉田健太さん（撮影：吉田さん提供）</figcaption></figure>
<p>初戦の対戦相手ドイツは、今大会でもトップクラスの強豪だ。19日時点で英国のベッティングサイトbetwayやドイツでメジャーなベッティングサイトtipicoでの優勝予想オッズは６位につけている。優勝候補とは言わないが、準々決勝行きは固い、という見られ方だ。</p>
<p>振り返ると直近２大会のドイツは、まさに天国と地獄を味わっている。2014年ブラジルW杯では1990年大会以来の優勝、続くロシアW杯では、１勝２敗で１次リーグ敗退、涙をのんだ。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3>W杯にむけて２年前に63人が選ばれた</h3>
<p>そんな日本の対戦相手ドイツは、分析専用部隊“チームケルン”を抱えていることはサッカーファンの間では知られた話だ。ドイツ代表とケルン体育大学により2006年にスタートした共同プロジェクトで、欧州選手権、W杯のそれぞれ２年前に結成し大会まで活動し解散する。カタールW杯に向けて準備を進めてきた今回のチームケルンは、テストを経て選ばれた63人のメンバーにより構成されており、なんと３人もの日本人が含まれている。その３人のうちの一人、吉田健太さんに話を聞いた。</p>
<p>1996年生まれの吉田さんは埼玉県立大学で体育の教員資格を取得。だが、子供の頃からプレーしてきたサッカーの指導者になる道を模索し、本場であるケルン体育大学に留学、現在は同大学院に在籍しつつドイツ３部のヴィクトリア・ケルンで分析官も務めている。</p>
<p>吉田さんによれば、今回の63人が６つの班にわけられる。各班には担当する５、６か国が割り当てられ、さらに各班の中でチーム分析、個人分析、セットプレー分析などが一人一人に割り振られる。</p>
<p>吉田さんの場合は選手の個人分析を割り当てられた。</p>
<p><span class="strongInContent">「今年の７月ごろから、ベルギーのデブルイネ、ヴィツェルらとポルトガルのカンセロらを分析しました。東京五輪の時は担当した選手がほとんど出場しないという消化不良感も味わいました」</span></p>
<p>ちなみに、吉田さん以外の日本人二人はなんと日本の分析担当になってしまったのだという。吉田さん自身も<span class="strongInContent">「日本を応援する気持ちはあるが、今回はドイツのために全力を尽くそうと」</span>と割り切っている。悔しいかな、世間は「ドイツ代表にとっては日本代表は勝って当たり前の相手」と見ている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>分析そのものに関しては、主にWyscoutというスカウトや分析担当者が使う専用サイトと映像からプレーを分析する。チームケルンで設けられた基準を元にドリブル、シュート、クロスなど一つ一つのプレーをデータ解析ではなく、あくまで吉田さんの主観でプレーを分析していく。あまり古い映像を分析することはなく、あくまでここ数ヶ月や数少ない代表戦を見て分析する。これは選手分析だけでなく監督分析でもそうで、仮に森保一監督が分析対象になったとしても、コーチ時代まで振り返ることはない。</p>
<p>また、チームケルンで求められるのはあくまでデータ解析でなく分析官の目線だ。最近では、選手たちはGPS計測器を着用して試合や練習を行っており、タッチ数や走行距離や遠藤航がドイツで年間１位になったことでよく知られるようになった「１対１の勝率」などの数字はトラッキングデータが出てくるため目測する必要はない。この手のデジタルでほぼ自動的に収集されるデータはチームケルンではなくドイツ代表の専門スタッフが解析する。</p>
<p>そのため、分析者に求められるのは単純なデータでは読み取れない部分だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「結構、分析者の主観です。こういうプレーが多いとか、効果的というのを伝えていきます」</span></p>
<p>チームケルンで決められた基準と照らし合わせつつ、ある種アナログな分析をまとめる。</p>
<p>こうして吉田さんらの分析結果は、解析された各データや映像などとともにまとめられ、スマートフォンなどで好きな時に見られるフォーマットに落とし込まれて完成する。ミーティングでその映像やデータ、分析官の所感が使われることもあれば、選手たちが自分でそれらを閲覧することもある。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本代表は勝てるのか……分析官の予想"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<figure id="attachment_276367" aria-describedby="caption-attachment-276367" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9fe16835"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/2022061408130.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-276367" class="wp-caption-text">吉田さんが日本のキーマンにあげた遠藤航（中央）。１人で２人をひきつける強さがある（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<h3>ドイツ代表は日本を「簡単に勝てる相手」とは思っていない</h3>
<p>分析官とはいえ、もともとはケルン体育大学、大学院の学生たち。運動のスペシャリストであっても、分析そのもののスペシャリストではない。そのため吉田さんをはじめ分析官になった者たちは、月に１度程度の講義と課題提出を15回（つまり15カ月続けて）ほど受けて、分析について学んだのちに実際の分析をはじめている。選ばれた優秀な学生にこうした特別な教育の機会を与えるのもチームケルンの特徴の一つ。実際チームケルンのメンバーになったことで吉田さんはヴィクトリア・ケルンという３部リーグのチームのトップチームで分析を担当する職を得ている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>ドイツで分析の仕事を得た吉田さんは、日本のW杯初戦となるドイツ戦をどう戦ったらいいと考えているのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本としては、ボールを持たれる時間は長くなると思うので、どこで、どのようにボールを奪いに行くか、プレッシングに関してチームとしてきちんと共通意識を持って戦うことが大事になってくると思う。</span></p>
<p><span class="strongInContent">ドイツは後ろからボールを繋いでビルドアップをしてくると思うので、時間帯や状況を考慮に入れながらなるべく前からプレスをかけ、高い位置で相手にプレッシャーをかけることができれば、間違いなく、ドイツにもミスも出てくる。ボールを奪った後は、早く攻めるのか、ボールポゼッションをするのかをクレバーに判断していければ、日本優位な試合展開も期待できると思います。</span></p>
<p><span class="strongInContent">特にドイツの右サイドは、怪我明けのクロースターマンや普段攻撃的なポジションをこなすホフマン、センターバックが本職のズーレらがプレーする可能性もあり、少し手薄な印象があるので、そこをうまく崩せれば、大きなチャンスにつながるかもしれません」</span></p>
<p>日本に勝機はあるのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「W杯は、いわば一発勝負の大会で、どこの国にとっても簡単な試合はありません。サッカーは０-０でスタートしますから、もちろん日本が勝てるチャンスは十分にあると思います。</span></p>
<p><span class="strongInContent">ただ、フリック監督や、GKノイアーのインタビューなどを聞いていても、日本に対してドイツ代表としては“簡単に勝てる相手“という印象は全く持っていないように感じます。前回大会、ロシア大会で悔しさも味わっているので、２試合目のスペイン戦にピークを持って行くという考え方は全くしていないと思います。</span></p>
<p><span class="strongInContent">僕ら分析チームも含め、ドイツは日本戦に向けてしっかりと準備をしているので、100%のドイツと戦わなければいけないということは覚悟しておいた方が良いかと思います（笑）」</span></p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<figure id="attachment_276368" aria-describedby="caption-attachment-276368" style="width: 2160px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c612e5bc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/aflo_196221223.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-276368" class="wp-caption-text">ドイツ・ブンデスリーガのブレーメンでプレーするフュルクルッグ。直前のドイツ代表の強化試合、オマーン戦でもゴールを決めた（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>
<p>日本とドイツのキーマンは誰になると考えているのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「ドイツのキーマンは、今回初選出されたフュルクルッグ です。ドイツの課題ともいえるセンターフォワードに、“The ストライカー”といった選手が出てきた印象です。今シーズン、ブンデスリーガでも10得点決めていますし、先日行われたオマーン戦でも点を取っていて、ゴールへの貪欲な姿勢とペナルティエリア内での怖さという点が日本にとって嫌な選手かなと思います」</span></p>
<p><span class="strongInContent">日本は沢山いますが、あえて一人あげるとすれば遠藤航選手ですかね。脳震盪の影響が心配ではありますが、ブンデスリーガでプレーしていることもあり、特にドイツ戦に限っては、多くの選手の特徴を理解しているので、それはアドバンテージになるかなと。</span><br>
<span class="strongInContent">そして、彼がドイツで評価されている『１対１の勝率』の部分はもちろんですが、個人的にはオフザボールの動きがとても優れていると思います。ディフェンス時は相手の嫌な位置に立ち、オフェンス時は味方にいてほしいところにポジションを取る。日本の前線には、個の技術に優れた選手が多くいるので、遠藤選手が彼らを最大限に生かすことで、日本の怖さが出てくるかなと思っています」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>冷静に言葉を選んだ吉田さんのような人材を63人抱える圧倒的なマンパワーで各国分析を行い、将来の分析官や指導者のプロを毎回のW杯や欧州選手権で育てる仕組み、これこそがチームケルン。ドイツ代表の強さの秘密の一つ、であることは間違いない。</p>


1975年、埼玉県生まれ。日本女子大学文学部史学科卒。01年よりサッカーの取材を開始し、03年ワールドユース（現・U-20W杯）UAE大会取材をきっかけにライターに転身。サッカーW杯４大会、夏季オリンピック３大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住

了戒美子

サッカー世界一を決めるカタールワールドカップが開幕した。日本の初戦の相手、ドイツ代表は２年前からケルン体育大学より63人の分析官を選び、3人いる日本人が「日本代表」を丸裸にするよう、命じられていた。

W杯日本代表の宿敵…ドイツが３人抱える「日本人分析官」の秘密

あなたへのオススメ

関連記事