三田のガウディ「借金1億円弱。資材の値上げで毎日吐きそうです」 | FRIDAYデジタル

三田のガウディ「借金1億円弱。資材の値上げで毎日吐きそうです」

東京・港区発 着工から17年 いまだ完成しないコンクリート造のビルが建築マニアの間で話題

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JR山手線・田町駅から徒歩10分、港区の一等地にあるビル『蟻鱒鳶(アリマストンビ)ル』。むき出しの鉄筋に不規則な形の窓、ギザギザとした装飾は、高級住宅街で異彩を放っている。

慶應義塾大学にほど近い坂の中腹にたたずむ『蟻鱒鳶ル』。現在は足場が組まれ、その外観を直接見ることは出来ない
慶應義塾大学にほど近い坂の中腹にたたずむ『蟻鱒鳶ル』。現在は足場が組まれ、その外観を直接見ることは出来ない

実はこの建物、着工したのは今から17年前なのだが、いまだ建設中。設計から施工まで一人で行っている岡啓輔氏(57)は、140年以上未完の教会、サグラダ・ファミリアの設計者になぞらえて”三田のガウディ”と呼ばれている。

岡氏は当初「3年で完成する」と見込んでいたが叶わず、’09年には大きな壁が立ち塞がった。建設地が大手不動産会社による再開発エリアに指定されたのだ。巷では、未完のまま解体との噂もある。ドリルの音が響き渡る『蟻鱒鳶ル』を訪ねると、コンクリートを練る機械と斜めに伸びた柱の間から”ガウディ”が現れた。

「この建物は地下1階、地上4階建ての鉄筋コンクリート造です。砂利やセメントなどを購入し、独自にコンクリートの配合を考えた結果、200年もつ建物になりました。コンクリート建築は、継ぎ目が美しい。一つの石を削り出したかのように部材が一体となるのが魅力です」

土地代含め約1億円もつぎ込んだというが、再開発によって、その計画は思わぬ方向へ進んでいるという。

「不動産屋と話し合い、基礎の深さまで掘り出し、建物を丸々10mほど移動することになりました。あと1年半ほどで完成させなければいけないそうです。

今、この建物は買い手を探している最中なんです。実は、借金が1億円ほどありまして……。資材の値上がりもあって毎日吐きそうです。妻や母にもお金を返さなければなりません。セルフビルドと言っておきながら、自分のお金で賄えていないことには忸怩(じくじ)たる思いです。気持ちを立て直し、最後までこの建築と向き合っていきます」

文字通り人生をかけた一大プロジェクトのゴールへ向けて、ガウディは今日も一人でコンクリートを練る。

施主で設計者の岡氏に最上階で話をきいた。今は友人の手も借りて最上階の床や天井を施工している最中だ
施主で設計者の岡氏に最上階で話をきいた。今は友人の手も借りて最上階の床や天井を施工している最中だ

『FRIDAY』2022年12月2・9日号より

  • PHOTO足立百合 岡 啓輔(外観写真)

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