1975年、埼玉県生まれ。日本女子大学文学部史学科卒。01年よりサッカーの取材を開始し、03年ワールドユース（現・U-20W杯）UAE大会取材をきっかけにライターに転身。サッカーW杯４大会、夏季オリンピック３大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住

了戒 美子

<figure id="attachment_277250" aria-describedby="caption-attachment-277250" style="width: 900px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5e7e6070"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/aflo_204559582.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-277250" class="wp-caption-text">ドイツに逆転勝利をおさめた瞬間。鎌田は三笘薫や遠藤航らと抱き合って喜びを爆発させた（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<p>この半年で一気に日本代表のエースに躍り出た鎌田大地。所属のフランクフルトではブンデスリーガ13試合出場７得点５アシスト、欧州CL6試合３得点と圧倒的な結果を残し、代表に繋げた。昨年までの「クラブでは活躍できるけれど代表ではどこか物足りない」といった印象はもはやない。フォワード起用からボランチ起用まであらゆる可能性のある鎌田を先発から外そうという声は聞こえてこない。</p>
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<p>そんな鎌田、無表情なまま淡々と、もしかしたら怒っているのかもと思えるくらいのトーンだが強気発言を繰り出すから面白い。例えばW杯メンバー入りに関してはこうだ。発表会見が行われたのは、当時鎌田が欧州CLスポルティング戦のために滞在していたポルトガルの朝５時だった。会見を見たかと聞かれ、こう答えている。</p>
<p><span class="strongInContent">「全然見てないっす。みんなからおめでとうって言われて気づいたぐらいです。入らないと思ってないんで」</span></p>
<p>たしかにここまでの活躍を見ればそうなのだが、それでも気になる選手は気になるはずだ。実際早朝から見ていた選手もいるのだ。だが鎌田はこうも言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「これもずっと言ってますけど、ワールドカップのシーズンですけど、ワールドカップのために全くプレーしてなくて。フランクフルトでやっていることの延長戦がワールドカップだと思ってて。今自分自身、コンディションもいいし、数字も残してきてある程度自信もある。それは、自分がチームでのプレーにフォーカスしたからこそ代表にうまく繋げられたということ、これが自分らしいやり方で、間違ってないかなっていうふうに思います」</span></p>
<p>こんな言い方をするから、時折鎌田の優先順位は代表にはなく、クラブで活躍すること欧州チャンピオンズリーグで上位に行くこと、ビッグクラブへの移籍に興味がある選手なのではと言われることもある。だが、決してそんなこともないのは代表でのプレーが証明している。</p>
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<p>また、ここ最近ドイツでは鎌田の移籍話が浮上している。鎌田とフランクフルトの契約は来年夏で終了する。そのため、来季以降クラブに残るためにも、もしくは移籍金を発生させた上で移籍するためにも早い時期の契約更新が必要だがそんな話は聞こえてこない。そのため自然と、この冬の移籍ウインドウで動くのではという報道が沸き起こる。一番最近報道された移籍先は、ドイツ国内のドルトムントだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「皆さんが思っている以上に僕は……うーーん」</span></p>
<p>鎌田は苦笑いしつつ話出し、一旦言葉を選び、続けた。</p>
<p><span class="strongInContent">「自分の行きたいクラブは選びたいと思っているし、大きなクラブとも話をしているんです。今年だけじゃなくて２年前くらいから常に話し続けているし。今言えるのは僕は今シーズンはここに残るということ。実際、この冬に色んな話もありますけど、１ミリも興味ないし。自分は今フランクフルトの選手で、今年は今の監督と今のチームメートとやるって決めているんで。今のところは残るっていうのは決定事項っていう感じですかね」</span></p>
<p>「みなさんが思っているより、大きなクラブと話している」などとはなかなか公言できないものである。つまりドルトムントより大きなクラブと話しているということ。無表情に無愛想なトーンのまま、意図してかせずかわからないが美味しいコメントを残して行くのだ。こんな大胆な発言を繰り広げられるのも、鎌田が特に今季出してきた結果があるから。聞く側もすんなり受け入れられる、説得力を持っている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="世界から見られ方を変えた"></div>
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<figure id="attachment_277251" aria-describedby="caption-attachment-277251" style="width: 600px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a15d9609"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/aflo_197927563.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-277251" class="wp-caption-text">所属のフランクフルトでも中心選手として堂々の風格（写真：アフロ）</figcaption></figure>
<p>一方、ピッチに目をやるとこれも「無表情なのに強気コメント」と共通して、ぷらぷらとしているようで貢献度の高い選手だ。</p>
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<p>カタールでは着用しないかもしれないが、日頃プレーするドイツでは多くの場合長袖のインナーをユニフォームの下に着込んでおり、そのインナーのサムホール（袖口近くにある親指を賭す穴）に親指を通しながらプレーする姿は、さながら女子の萌え袖のようである。そんな萌え袖状態でぷらぷらと相手のイヤなポジションをとりパスを出したり受けたりし、時には自らゴール前に入って行くし、ボランチ起用の増えた今季であれば、がしゃがしゃとぶつかり合うのではなく静かに相手のコースを消しピンチを早い段階に防いでいく。</p>
<p>以前は「スピードもなくフィジカルも弱い」と自ら評価していたこともあるが、最近の鎌田を見てそう言う人ももはやいないだろう。この夏から冬までのプレーについてはこう振り返っている。</p>
<p><span class="strongInContent">「まあ１つはポジションが一つ後ろに下がってもできるっていうのを証明できたと思うし、まあ、毎年得点の部分に、得点の部分にすごい苦労していた部分が、まあ、今年は数字もついてきたっていう所で。うん。まあよりこう、１つね、今までよりも良い選手になれたのかなって思います」</span></p>
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<p>W杯開幕前は、鎌田が普段プレーするドイツは優勝候補、一方日本は１次リーグ敗退でもだれも驚かないという立ち位置だった。鎌田は前半はトップ下で攻撃を組み立て、後半途中から次々選手が投入されると、１列下がってボランチとして攻守のバランスを整える役割も果たし、ドイツに2-1で逆転勝ちをおさめる歴史的勝利に大きく貢献した。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本の価値をこの大会で高めないとダメと思っています。優勝候補のチーム、いいチームに勝つことで、見られ方を一気に変えられる。ドイツに勝てたら見られ方は一気に変わる」</span></p>
<p>Ｗ杯が開幕する前、こう明かしていた鎌田はドイツやスペインといった優勝候補と対戦することはむしろ「日本の価値を高める」チャンスだと捉えていた。そう言えるのは、鎌田が今季、ドイツのリーグ戦でも、世界最高峰の欧州ＣＬでも出場試合数の半分にあたるゴールをあげている自信に他ならない。有言実行、ドイツに勝って本当に世界から「見られ方を変えた」日本代表は、鎌田の大胆発言に乗せられて、まだまだ高みを目指していく。</p>


了戒美子

ドイツに逆転勝利をおさめた瞬間。鎌田は三笘薫や遠藤航らと抱き合って喜びを爆発させた（写真：アフロ） この半年で一気に日本代表のエースに躍り出た鎌田大地。所属のフランクフルトではブンデスリーガ13試合出

「日本の価値を高めないとダメ」鎌田大地が大胆発言を連発するワケ

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