疲労、性欲減退、勃起不全の理由がわかった!男の「更年期障害」 | FRIDAYデジタル

疲労、性欲減退、勃起不全の理由がわかった!男の「更年期障害」

専門医にきく「治療の最前線」セルフチェックつき

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疲労、いらいら、そして朝立ちしなくなったら要注意。中年男が知らない「男性更年期障害」の恐ろしい事実
疲労、いらいら、そして朝立ちしなくなったら要注意。中年男が知らない「男性更年期障害」の恐ろしい事実

やる気が起きない、疲れやすい…更年期かも

「やる気が起きない、集中力がなくなった、疲れやすい…。そんな訴えの原因が『更年期』であることも多いんです。女性だけでなく男性にも、更年期障害がありますから」

こう言うのは、順天堂大学大学院医学研究科の准教授、松下一仁医師。松下医師が診察している「泌尿器科メンズヘルス外来」には、このような症状で心療内科を受診しても改善がなく、もしかして…と来院する患者さんも多いという。

女性なら、こういった症状があればまず更年期を疑うところだが、男性の場合、更年期に関する知識や情報が少なく、なかなか「結びつかない」のが現状だ。

「男性の更年期も、女性のそれが女性ホルモンの減少にともなって表れるのと同じような仕組みです。早い人では30代後半から、40代、50代になれば当然、男性ホルモンと呼ばれるテストステロンが急激に減ります。それによって、さまざまな不調が起きるんです。女性の更年期はおおむね閉経前後と時期がわかりやすいのに対して、男性は自覚しにくいことも、治療に結びつきにくい原因ですね。私の外来には、30代から70代後半の方まで、幅広く来られます」

テストステロンは、やる気や判断力、決断力にも影響するホルモン。早朝勃起、いわゆる「朝立ち」が弱くなったとか、大好きだった趣味にさえやる気が起こらなかったら、更年期を疑ってもいいのだという。けれども、精神的な不調があるということで、心療内科やメンタルクリニックを受診する人も多いとか。

「来院される方の3割は、すでに心療内科などに数ヶ月から数年単位でかかっていて、その後にこちらにいらっしゃるんです」

ホルモン補充療法で7~8割の人は症状が改善

テストステロンが減って更年期になるのなら、テストステロンの数値を測れば、更年期かそうでないかわかるはず。更年期とわかれば、効果的な治療が受けられる?

「ところが、そう簡単にいかないのです。テストステロンの量にはもともと個人差があって、一応の基準値は設けていますが、基準値より多くても不調を訴える方がいますし、逆に基準値より低くても元気に活動されている方もいるんです」

数値はあくまで参考程度。症状があるかないかが大事な判断材料になるのだとか。

「症状がある人には、テストステロンを投与します。ひと月に一度、3ヶ月ほど続けてみて、症状が改善されるかどうか診ます。それで改善されれば、テストステロンが不足していたために症状が出ていたということになるんです」

松下医師によると、ホルモンを補充することで7~8割の人の症状は改善されるとか。

「ただ、それまで心療内科やメンタルクリニックにかかっていた人は、更年期の可能性があるからといって、もう心療内科に行かなくていいということには絶対ならない。両輪でケアすることが大事です」

男性ホルモンが減る仕組み

女性は閉経にともない女性ホルモンが減るが、男性ホルモンはいつ、どうして減ってしまうのだろう。

「原因はいろいろあります。一つはストレス。更年期にあたる40~50代の方は、仕事で責任が増したり、親の介護、子育てなど悩みが増す時期でもあります。また、若いころに比べて体重が増加して、生活習慣病になる人も少なくない。糖尿病の人や、内臓脂肪の多い人は男性ホルモンの数値が低いんです。実際には、男性ホルモンが少ないから内臓脂肪がつきやすい、逆に内臓脂肪がついたから男性ホルモンが少なくなる…どちらも考えられます。そういった人は、まず生活習慣を変えなくてはいけません。バランスのよい食事をして、適度に運動をする。適正体重にもっていけば、男性ホルモンを補充する必要が少なくなります。生活を改善することは、更年期対策にもとても有効なんです」

早朝勃起がなくなったら更年期の疑い。受診を

男性が更年期障害かどうか判断するのに、重要な要素となるのが、早朝勃起の有無だ。

「疲れがたまる、意欲がわかないなどと来院された方によく話を聞いていくと、じつは早朝勃起がないというケースが多いですね」

朝立ちしなくなる、朝立ちが弱くなる…でも、「もう歳だから」とか「疲れているから」と放っておいてしまうことも。

「人に話しづらいことなので、放置しがちですが、危険です。男性の更年期は医学的にはLOH症候群と呼ばれます。日本語では『加齢男性性腺機能低下症候群』と訳されます。早朝勃起がなくなるということは、男性ホルモンが少なくなっているサイン。朝立ちが弱くなってきたら、男性ホルモンが少なくなってきたと疑い、受診のきっかけになればいいと思います」

放っておいたら、症状が進み、仕事を休まなければいけなくなったり、うつ症状が出るかもしれない。朝立ちしなくなったら、早めに対処したほうがよいのだ。

動脈硬化は陰茎から始まっている

松下先生は、豊富な臨床経験から「さらに心配な症状もある」と警告する。

「男性ホルモンが少なくて、早朝勃起がなくても、いざセックスをするときはできる、という人は、まだ大丈夫なんです。けれど、いざというとき役に立たなくなったら、動脈硬化始まりのサインです」

脳梗塞や心筋梗塞で入院している男性患者さんの多くが、それらの発症の「5~10年前からED(勃起不全)」になっていたのだと言う。

「脳梗塞などの原因となる動脈硬化の症状が、最初に出るのが陰茎なんです。動脈硬化は、血管の中にプラークと呼ばれるコブのようなものができることで起こります。それによって、血管が狭くなって血流が悪くなる。その症状は細い血管から出やすいんです。陰茎には細い血管が集中していて、そこに血液が集まって『勃起』するわけですから、最初に症状が出るのが陰茎なんです」

勃起しないだけでなく、5年後、10年後に命にかかわる病気になる…。ならば、早めに治療しておいたほうがよいのは当然のこと。バイアグラのような「一時しのぎ」に頼るのは「危険」なのだ。勃起しないことが動脈硬化のサインになるとは。男性ならではの健康サインは、考え方によってはラッキーなことかもしれない。

「疲れているだけ」などと放っておいたら、命にもかかわる「男性の更年期障害」。恥ずかしがらずに一度、チェックしておきたい。

【LOH症候群セルフチェックリスト】

(1)性欲が低下した

(2)元気がなくなってきたような気がする

(3)体力、もしくは持続力が低下した

(4)身長が低くなった

(5)毎日の楽しみが減ったように感じる

(6)もの悲しい気分だ。あるいは怒りっぽい

(7)勃起力が弱くなった

(8)最近になり、運動能力が低下したように感じる

(9)夕食後にうたた寝することがある

(10)最近、仕事がうまくいかない。仕事の能力が低下したように感じる

(1)と(7)の「両方が当てはまる」、または10項目中「3項目以上」に該当する場合には「男性更年期障害の疑いあり」です。迷わず受診を!

松下一仁医師は、順天堂医院泌尿器科でメンズヘルス外来を担当。「気になる症状があったら、ぜひ受診してください!」
松下一仁医師は、順天堂医院泌尿器科でメンズヘルス外来を担当。「気になる症状があったら、ぜひ受診してください!」

松下一仁医師2009年から3年間、アメリカ・Memorial Sloan-Ketteringがんセンターに研究員として留学。帰国後、聖路加国際病院泌尿器科に勤務。現在、順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科で「メンズヘルス外来」を担当。前立腺癌、膀胱癌のロボット内視鏡手術、前立腺肥大症内視鏡手術、腹圧性尿失禁に対する人工尿道括約筋植え込み術、メンズヘルス(男性医学)として、男性ホルモン低下に伴う更年期障害、EDを中心とした性機能障害を専門としている。

  • 取材・文中川いづみ

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