少女二人をけしかけて逮捕…“決闘罪”って一体どんな犯罪? | FRIDAYデジタル

少女二人をけしかけて逮捕…“決闘罪”って一体どんな犯罪?

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日本の“決闘”といえば、巌流島での宮本武蔵と佐々木小次郎の戦いが有名だが…
日本の“決闘”といえば、巌流島での宮本武蔵と佐々木小次郎の戦いが有名だが…

「お前ら、むかつくんやったらタイマンしたらええやんけ」

路上でつかみ合いをしていた少女2人に男はこう言ったという。少女たちは男の言葉に従い、男が経営する店の中で5分間にわたって「タイマン」を張り、1人が顔面打撲や首の捻挫など10日間のケガを負った。

11月17日、大阪府警天満署は大阪・北新地にあるガールズバー経営者・上野瑛一容疑者(30)を逮捕・送検していたことを明らかにした。逮捕容疑は大阪市北区の路上で従業員(17)と元従業員(18)の女性2人に決闘を提案し、自身が経営する店舗内で殴り合いをさせた「決闘の疑い」だ。

「従業員の少女は元従業員の女性が無断で店を辞めたことに腹を立ててトラブルになったようです。決闘をした2人も決闘容疑で任意で事情を聴かれています。また、複数の関係者がこの決闘を見物していたこともわかっており、警察では捜査を進めています」(社会部記者)

パッと見るとよくありそうな傷害事件だが「決闘罪」というあまり耳慣れない言葉に引っかかった方も多いのではないだろうか。この「決闘罪」とはどういう罪なのだろうか。法曹関係者は次のように語る。

「決闘罪は明治22年12月30日に公布された『決闘罪ニ関スル件』で定められた法律で、決闘を挑んだ、または応じた者は6カ月以上2年以下の懲役、決闘を行ったものは2年以上5年以下の懲役となります。また、立会人や場所を提供した人も罰せられます。制定されたきっかけは、当時新聞記者だった犬養毅が書いた記事をめぐって起きた決闘申し込み事件。犬養は決闘に応じなかったのですが一部で決闘を賛美するような意見で盛り上がり、決闘を挑む事件が頻発したことが一因だといわれています」

19世紀末のヨーロッパでも決闘はすでに廃れてはいたものの風習として残っており、ドイツのように一定の要件を満たされれば合法だという国もあったが、この法律が制定されたおかげで日本に決闘の習慣が根付くことはなかったのだという。とはいえ、こんな時代がかった法律が現存していること自体驚きだ。実際にこれまでどれだけ適用されてきたのだろうか。

「昭和49年に決闘の風習はほとんどないということで1度廃止を前提に検討されたことがあるのですが、このときの改正刑法草案が成立しなかったため現在に至ります。昭和から平成にかけてはすっかり過去の遺物となっていたのですが、平成の初めあたりから少年らによる〝タイマン〟がこれに該当するということになりました。とはいえ、ここ数年は年間数人程度しか立件されていないので、この罪で逮捕されただけでニュースになるような感じです」(同前)

実際に決闘罪が適用されたのは次のようなケースだ。

・19年、荒川区の高校1年生男子が足立区の高1男子に、SNSで交際中の女子生徒のことを中傷されたことに腹を立て「タイマンしよう」と決闘。荒川河川敷で40分間にわたって殴り合い、お互い顔などに軽傷を負わせた。2人はそもそも面識がなくSNSで「どちらかギブアップするまで続ける」など取り決めていた。

・14年、福岡市中央区の舞鶴公園で福岡県内に住む中学生6人vs6人のグループが1対1ずつのタイマン勝負をしたとして福岡地検に書類送検。発端は地元の高校の体験入学のときのトラブルで、後に一方のグループの少年が相手グループの少年の1人をLINE上で発見し、「出てこい」「大濠公園でやろう」などと挑発。決闘の約束をしていた。決闘の当日、舞鶴公園には100人ほどのギャラリーが集まったという。

・08年、仙台市宮城野区の港で中学・高校の同級生からなる少年グループ40人が敵対する10人の少年グループを鉄パイプや木刀、メリケンサックなどでめった打ちにして6人を病院送りに。決闘や傷害の容疑で15人が逮捕された。事件の発端は被害者グループの少年が「うざい」と言われて腹を立て、ブログで決闘を申し込んだもの。宮城県で決闘罪が適用されたのは20年ぶりだった。

やはり少年事件が多く、SNSなどのやりとりが残っていることで「決闘」の決定的証拠となるケースが多いようだ。では普通にケンカになった場合や格闘技の試合などは決闘にはならないのだろうか。

「過去の判例では決闘とは『当事者間の合意により相互に身体または生命を害すべき暴行をもって闘争する行為』で、いきなり殴り合いのケンカになった場合などは合意がないと見なされて決闘にはなりません。また、総合格闘技やボクシングなどの興行やスポーツも『正当な業務行為』として決闘には当たりません。ただ、素人が真似事でやった場合は決闘に当たるおそれがあります」(前出・法曹関係者)

現実世界の「決闘」はマンガとは違い、全然格好の良いものではないことだけは確かなようだ。

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