元社員が語る イーロン・マスク「ツイッター社大改革」の代償 | FRIDAYデジタル

元社員が語る イーロン・マスク「ツイッター社大改革」の代償

不具合連発、差別的ツイートの増加、トランプ前大統領のアカウント復活、「利用者は日本が中心」発言の真意 解雇通告された社員が〝悪政〟を激白

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アカウントが復活したトランプ前大統領は「関心がない」と発言した。停止前は8800万人以上のフォロワーがいた
アカウントが復活したトランプ前大統領は「関心がない」と発言した。停止前は8800万人以上のフォロワーがいた

「11月12日、スマホを見ていると『Slack』や『Gmail』など社内で使うアプリのアカウントにアクセスする権限がなくなったと通知が来て、自分が解雇されたのだとすぐに気づきました。私は30人ほどのチームでエンジニアとして働いていましたが、私と同時にチーム長も解雇されたため、その部署全員の仕事がなくなり、いきなり機能不全に陥ってしまいました」

ツイッター社の米国本社で、契約社員として勤務していたメリッサ・イングルさん(48)は、突然クビを言い渡された。新CEOに就任したイーロン・マスク氏(51)が進める、世界規模の人員削減の煽りを受けたひとりだ。彼女は契約社員のため、再就職先が決まるまでの手当は一切ない。

マスク氏がツイッター社を〝支配〟してからおよそ1ヵ月、その影響が至るところから顕(あらわ)れはじめた。人種や性的指向に関する差別的な投稿が増加し、新規ツイートが更新されないなどの不具合も目立つようになった。また、マスク氏は凍結されていたトランプ前大統領のアカウントの再開についてアンケートを取り〝賛成〟が上回ったとして復活させた。

「まさに私たちのチームが、トランプのアカウント復活を食い止めていました。彼が流す間違った情報は暴動を招き、政府が転覆してしまう危険があったからです。ツイッターはグローバルな談話の空間ですが、何でもOKという倫理観がまかり通ってしまうと、なりすましのアカウントや中傷のツイートが増えます。ツイッター社に来る前まではマスク氏を尊敬していましたが、今では彼は独裁者のようです」(メリッサさん)

自分のパフォーマンスの何が問題だったのかわからないままクビになった社員は多い。11月26日夜にメールで突然解雇を言い渡された、米国本社所属の日本人社員エンジニアもこう言う。

「同僚とリモートでミーティングを入れていたのに、時間になっても来なかった。彼のアカウントを社内システムで検索すると無効になっていたので、『クビになったんだな』と察しました。その後、私の解雇理由として送られてきたメールには、『貴方の(エンジニアとしての)仕事は満足いくものではない』とあるだけ。他のエンジニアにも同じ内容が届いたとのことですが、何の査定基準もなく、誰も本気にしていません」

優秀でハードコア(熱烈)な社員だけを雇うというマスク式改革だが、元社員の話を聞くとそこに明確な基準はなく、一方でメリッサさんのチームのように、ツイッターの内容をコントロールする部署を重点的に潰(つぶ)したいという姿勢が透けて見える。

クビになった社員の一部は、不当解雇であるとして米国本社を集団訴訟する準備を進めているという。処遇に不満を持つ人々の動きが顕在化するのはこれからだ。

また、ツイッターの利用者数は米国に次いで日本が多い。マスク氏は「利用者は日本が中心」と言及して、日本に技術担当チームを発足させるとビジョンを明かした。氏のお眼鏡に適(かな)うハードワーカーが日本で見つからなければ、本社から〝精鋭〟を送り込んでくるだろう。海外支社の動向についても掌握したい、という考えなのかもしれない。

その一方で、新体制のツイッター社が抱える喫緊の課題が「広告主離れ」である。マスク氏のCEO就任以降、ファイザーやフォルクスワーゲンといった大企業が広告出稿を一時停止した。同社の売上高は広告収入が9割を占めている。マスク氏は月額8㌦で「認証マーク」を付与する新たな収入モデルを打ち出しているが、今の広告収入をカバーするには6400万人の有料ユーザーが必要になるという。いくら優秀な社員だけを雇い、長時間働かせたところで、解決できる問題なのか。

ITジャーナリストの西田宗千佳氏はこう言う。

「ツイッターの機能をコントロールする人間が減ると、大なり小なり不具合が出る可能性が増えていきます。こうしたことでユーザーの不満が増えて会員数が減ると、広告の出稿量も減っていく。そうしているうちに、サービスそのものの維持がままならなくなっていく、というのが同社にとっての長期的な〝最悪のシナリオ〟なのではないでしょうか。いずれにしても、マスク氏がツイッターをどうしたいかで、方向性はまるで変わってしまうと思います」

常人には理解できないマスク氏の大改革は、企業の存亡だけでなく世界の動向にも大きく関わってくる問題だ。

今年のハロウィンパーティーで「悪魔」の仮装をして現れたマスク氏。衣装のお値段はなんと約110万円とか
今年のハロウィンパーティーで「悪魔」の仮装をして現れたマスク氏。衣装のお値段はなんと約110万円とか

『FRIDAY』2022年12月16日号より

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